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2つのせっけんケース
次男と二人で風呂に入っているときのこと。
私は身体を洗おうと思い、せっけんケースのふたを開けた。
うちの風呂にはプラスチックのせっけんケースが2つとボディソープのボトルがひとつ置いてある。
子どもたちはボディソープを使っているようだが、私はせっけん派だ。
一時期せっけんが切れているときにボディソープを使っていたこともあったが、どうもあの洗い流したときの、ぬるぬる感がいつまでもとれないのが苦手で、逆を言えば、食器洗いと同じく、あの洗い流したあとのキュキュっと感が好きでせっけん派なのである。
2つあるせっけんケースのひとつは昔ながらのオーソドックスな固形の白いやつで私はそれを愛用している。
もうひとつはオレンジ色の薬用なんやらとか言うやつで、これは次男の足専用なのだ。
代謝が良いせいなのか次男の足はいつもしっとりしている。
皮膚も柔らかく温かい。
それだけなら良いのだが、その環境ではやはり雑菌が繁殖するのだろう。
とても臭くなるのだ。
姉からさんざん文句を言われて、自分でも気になるのか、次男は毎回風呂に入る度にこの薬用なんやらせっけんでゴシゴシと丁寧に足を洗うことが日課になっている。
とても不憫に思うのだが、この足臭いのは、実は親譲りで、私も若い頃はとんでもなく足が臭くなることがあっていろいろと苦労した。
年齢のせいで代謝が落ちているからなのか、最近はずいぶんマシになっていて、そこまで気を使わなくても「臭い」と文句を言われることもなくなった。
昔はブーツが好きで、いくつも買って持っていたが、脱ぐことは絶対にないだろうという時しか履けなかったし、脱がないつもりでいたのに脱がなければならない状況になって青ざめたことも何度かあり、ブーツや革靴の類いはほとんど履かなくなった。
スノーボードで極寒の地、手が冷たい足が冷たいと皆が言うてる時に、スノーボードブーツを脱いだ私の足からはもうもうと湯気が上がっていた。
そんな血筋なのだから少々足が臭いのは致し方ないのだろう。
まぁ足臭い自慢はこれくらいにして、せっけんの話だ。
せっけんケースのふたを開けると白いせっけんに一本、髪の毛がついていた。
この、せっけんについた髪の毛ってのがけっこう厄介で、なかなかとれない。
お湯で流そうとしても、指でつまもうとしても、どうもうまくとれない。
しかし、私は知っている。いとも簡単にこの毛をとる方法を。
湯船に浸かっている次男に
「なあなあ、これ、せっけんに髪の毛くっついてるやん、これってとれにくいやろ!?」
聞いているのかいないのか、次男はポカンとしている。
「これなぁ、簡単にとる方法あるんやで、」
「これはなぁ、こうしてお尻で軽~く擦ると」
言いながら私はせっけんで軽く自分の尻を撫でた。
「ほーら!簡単にとれたやろ!」
「?」
誇らしげな顔をしていたであろう私と、なんとも反応の薄い次男。
なんで?なんでそんなに反応薄いん?
私がこの方法を知ったときには飛び上がらんばかりの驚きと歓喜であったのになんだこの次男の反応は?
【タイムリミットの為、明日へ続く】