光る夏(7/12,13)
7/12(金)
恋人に会うため広島へ向かう。
自分の中には「新幹線ではサンドイッチを食べる」という暗黙のルールがある。ただ、東京駅構内にある売店ではサンドイッチを取り扱ってなく断念。
渋々おにぎりを2つ買って新幹線に飛び乗った。いつもの事ながら、自由席車両までが遠すぎる。自由席と指定席との格差を1番感じる場面だけれど、乗ってしまえば関係ない。
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小説を読んだりラジオを聴きながら過ごしていると、気づけばもう岡山まで来ていた。4ヶ月ぶりの地元でかなり感慨深くなったが、今回の目的地はここではない。引き続き、乗車。
ちなみに柴崎友香の『春の庭』を読んだ。2014年辺りの芥川賞受賞作らしい。情景描写がこれでもかというくらい細かいのに、ずっと掴みどころがないような作品だった。こんなにも純文学めいた小説を久しぶりに読めて嬉しい。
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22:00。広島駅に到着。
恋人に「着いたぜ!」とLINEすると、恋人からは「すごいすごい〜」との返信があった。気持ちが昂りすぎて2人とも勢いでしか会話が出来なくなっている。この瞬間が今回のデートのピークなのではないかと錯覚するほど楽しい時間だった。
改札を出ると、そこには本当に恋人がいた。本当に来るんだ、こんな瞬間。
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カープファンが駅に多すぎることや恋人の同期の恋バナなど久しぶりに会うにしてはあまりに普通の会話をしながら、恋人が予約してくれた居酒屋へ向かった。なんてことない有名チェーンだったけれど、2人とも初めてだったからワクワクした。
席に座って、乾杯をする。ここでようやく恋人に会えたという実感が湧いてきた。会えなかった日々をよく生きてきたねという気持ちを込めて、本当の意味で「お疲れ様」と言った。
お酒を片手に刺身や唐揚げやユッケを食べた。めちゃくちゃ華金だ。近距離恋愛の人達は毎週これをやっていると思うとさすがに羨ましすぎる。
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恋人の家の近くのコンビニでプリンを買い、恋人の家に初めて入った。ビデオ通話でよく目にしていた家具やぬいぐるみが今目の前にある。仕事の都合上、恋人の家に遊びに来ることはないと思っていたから素直に嬉しかった。
もう深夜2時になっていたけれど、2人で東海オンエアを見ながらさっき買ったプリンを食べた。動画内容は東海オンエアがホラーゲームをプレイするという緩いもので、それに対して恋人はずっと怖がっていた。普段見ない姿で新鮮だった。
7/13(土)
9:00。起床。
昨日夜更かしした割には早く起きられて嬉しい。
恋人が職場で貰った東京ばな奈を2人で分け合って食べた。東京から会いに来て東京土産を食べている、絶対に変だ。あと普通に俺もお土産を買ってくるべきだった。昨日は早く会いたい気持ち一心で広島行きの新幹線しか見えてなかった。
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11:00。家を出て、「LUCKY BAKERY」というパン屋さんへ。この店は綺麗な公園に併設されていて雰囲気がすごくいい。
恋人とパン屋さんで朝ごはんを食べる。これ以上の豊かさを俺は知らない。1人だと2種類が限界のパンも恋人と分ければ4種類食べることが出来た。
クロワッサンとクッキーを混ぜたような「クロッキー」というパンがすごく美味しかった。中にはラズベリーも入っていた。なんとなくメロンパン的な美味しさもあった。
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11:30。「金曜ロードショーとジブリ展」のために広島県立美術館へ。
美術館へ向かう道中すら楽しい。広島の道は広く、さらには路面電車が走っている。恋人の住む街がこんなにも素敵で良かった。(途中、セブンイレブンに売られているゴンチャのペットボトル飲料を探すという通称“ゴンチャレ”に挑戦するも、見つからず。)
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「金曜ロードショーとジブリ展」では各映画ごとのラフ画が飾られていた。ジブリ好きの恋人はそのラフ画を見ただけで「これはいいシーンですよ、、」とオタクみを爆発させていて良かった。恋人はよく『耳をすませば』の話をしていて、その都度「面白そうだな〜」と思っているのだけど未だに観れてないからそろそろ観たいと思う。
展示ブースをぬけた先にあったグッズコーナーは東京かと思うほど混んでいた。普段はどんな待ち列でも平気なタイプなのだけど、この時ばかりは進まなすぎて「訳分からん!」と恋人に不平不満を言ってしまった、かなりダサい。
俺はポニョのポストカードを、恋人は耳をすませばのポストカードを買って帰った。
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15:00。明日と明後日がどうやら雨のようだから、急遽宮島へ行くことにした。普通のデートなら「ジブリ展の日」と「宮島の日」を分けるべきかもしれないが、宮島は晴れている方が楽しいからこれでいい。このプランを提案しただけで恋人にすごい褒めて貰えた。ハチャメチャなスケジュールでも許してくれる恋人の懐の広さこそが素敵だなと思う。
路面電車で宮島口へ向かう。片道1時間。途中、電車で行く方が圧倒的に早かったと気づいた瞬間もあったが、それは帰りに取っておくことにした。
宮島口に着き、宮島行きのフェリーに乗船。去年の8月に一度友達と来ていたアドバンテージを活かし、厳島神社が見えやすい場所取りをした。
実際、そこに立っているとよく見える瞬間が訪れ、今回のデートのために買っていた写ルンですのフィルム数をこれでもかというくらい消費した。
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宮島に着く。1番メジャーな観光コースを歩き、最初に「GEBURA」というドリンク専門店の瀬戸内レモンソーダを飲んだ。恋人が言うにはどのドリンクでも200円でおかわり出来るらしい。恋人は久しく宮島に来てないはずなのになぜ知っているのか聞いてみると、マツコがなにかの番組で言っていたらしい。マツコは万物に対して言及している。
他にも焼き牡蠣や揚げもみじ饅頭を食べた。恋人は焼き牡蠣の美味しさに狂い、俺は揚げもみじの美味しさに狂った。揚げもみじ屋の奥にはなぜか食べ終わったあとの串を奉納できる神社があった。
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いわゆる観光コースを抜け、ロープウェイへと続く旅館街まで歩いた。特にめぼしい店がある訳でもないが、散歩が楽しくてここまで来てしまった。ロープウェイの営業時間が終わっているからか、人はかなり閑散としていた。
途中、ロープウェイ入口までへの方向を指し示す案内板があり、そこには「ゆっくり歩いて10分、ときどき走ると7分」と書かれていて可愛かった。その看板の前で「ときどき走るポーズ」を取る恋人を写ルンですで撮った。なんとなく、この写真の現像が1番楽しみだ。
厳島神社の境内を拝観したり、恋人が顔はめパネルをしているところを撮ったりして宮島を後にした。恋人は自分から率先して顔ハメパネルに顔をはめるタイプだ。
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18:30。恋人の最寄りまで戻り、夕食のために餃子屋へ。
「25日から一時閉店致します」との張り紙が入口にあり、たまたまながらこのタイミングで行けてよかったなと思う。
赤いテーブルの中華料理というだけでテンションが上がる。餃子の見た目もぷくぷくしていて可愛い。そういえば池袋で一緒に食べた餃子も変わってたな。(1つの大きさが肉まんくらいある)
満腹の状態で店を後にして恋人の家へ帰る。つくづく、これを毎週したいと思う。
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20:00。1回恋人の家へ帰って、近くのアイス屋へ。夜の道を2人で歩くこの感じ、すごく懐かしい。半年前までは夜に恋人といっぱい散歩していたし、俺はこの時間がかなり好きだった。
恋人からもらったピスタチオのアイスが美味しかった。1日通して、色んなものを分け合っている。
最後にお店のロゴが印刷されたシールを貰った。アンニュイな表情の猫が描かれているシールでかなり可愛い。すぐスマホ裏に挟んだ。
スマホ裏のシール事情で言えば、恋人のスマホ裏は俺と遊んだ時にゲットしたシールでパンパンになっている。これからももっとシールを入れてもらって、恋人のスマホの薄さをどんどん台無しにしていきたい。
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22:00。スーパーに寄って、明日の朝食とお酒とお菓子を買った。明日の朝食は恋人の名案により「フランスパンで作るフレンチトースト」に決定。恋人は ゼロからこういう楽しいことを生み出すのが上手い。
23:00。家でお菓子パーティー。恋人とこういうダラダラする時間を過ごすとき、僕らの別荘と東海オンエアがちょうど良すぎる。
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今日これをするために俺はここまで生きてきた。明日もまだ恋人と過ごすことが出来る。
このまま夏をもっともっと光らせていきたい。