
紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)顛末記。(ってほどの事でも無い話)
2024年年初、「紫金山・アトラス彗星が明るくなるらしいよ?」と期待されていました。私はと言うと「うーん、期待しすぎると明るくならなかった時にショックだから、明るくなってもそうでなくても見られるチャンスがあれば見るし見られなかった時に嘆かないという平常運転でいこうかな。」と決めていました。
8月、「どうも明るくなるペースがガクっと落ちて、これはひょっとするとISON彗星の二の舞になるのか?」などの心配の声もありました。実際には、その後に明るさを盛り返し(?)、9月下旬には南半球で長い尾を見せてくれた様子がSNSに流れていました。
で、見られるチャンスは訪れたのか?と言われると…はい、ありましたよ。紫金山・アトラス彗星と対面できたのは2024年9月27日の未明です。
私は南阿蘇の田園地帯にいました。東の空に高い山が無く風も穏やかな場所でした。そして午前5時。彗星が地平線の上に昇ってきた時間帯に、7倍の双眼鏡(口径32mm)で一生懸命に探しました。なかなか見えない(探せていない)んです。「あぁ、もう少しで薄明が始まるのにまだ見つけられてないのヤバいなぁ…。」と思いながら、双眼鏡から眼を離さずにずっと覗き続けていました。
「ん?いるじゃん。そこにいるじゃん!つい数秒前にも見ていた場所なのに…いきなり現れたっすか?」って感じで尾がスゥーっと伸びた彗星と対面することができました。さっきまで見えていなかったのはきっと低空に薄雲なんかがあったんじゃないかなぁ。双眼鏡の視野にいる彗星は中心部がキラリと明るくて、そこからフワァ~っと天女の羽衣のような尾が伸びていました。いやぁ、こりゃ立派な彗星だわ。
その後、仕事前の朝5時に起床して東の空を確認するような観望スタイルに変更。頑張って早起きはしましたが、9月30日も10月1日も見えず。その後は彗星の高度も低い中に天候にも恵まれず、次のチャンスを伺っていました。
紫金山・アトラス彗星は近日点を過ぎ、舞台は西空へと移ろいました。私は10月15日より一週間ほど外へ出られなくなる状況の予定が入っており、自分の中でのラストチャンスは2024年10月13日としていました。「晴れると良いなぁ。見に行こうと思っている場所には大勢の人が来ていたとの情報もあり、晴れそうなら早めに準備をして出撃しよう」と考えていました。現地に到着したのは午後2時。周りからは「早すぎるやろっ!?」と言われましたが、他の友人らが到着した時の場所確保と、自分の機材設置についてもしっかりした準備ができそうと思っての事。なにより、設置後の時間を確保することで、景色を眺めながらドリップした珈琲をいただけるのは心のデトックスでございます。そして時刻は移ろい、日は沈み、少しずつ西の空が暗くなっていきます。自宅に双眼鏡を忘れてしまい、6倍(口径30mm)のファインダーで彗星を探せども見つけられません。突然、隣の友人が「7倍50mmのファインダーで見えとる!」と声を上げます。「どれどれ見せて?どの辺りにいるの?」と覗かせてもらって場所を確認。自分の6倍(口径30mm)ファインダーを覗くと「あ。。。見えた。ちゃんと視野に導入している状態なのにさっきまで見えてなかった。またこいつは突然現れるんだよねぇ。」なんて呟く始末です。(笑)
この時の画像が前回の記事( https://note.com/kiss_a_ten/n/nc0f950a2858f )となっております。ちなみに、今回のTOP画像は夕方の現地の様子となっております(画像は友人らの姿であり、私の機材は写っていません。(笑))。辺りがくらくなると彗星は肉眼でも見えるようになりました。尾の長さも10°ほど伸びているのが目で見てわかります。そして彗星の核が水平線に沈んだ後も「この下に彗星がいるよ?」という雰囲気で水平線から伸びた尾が何となくわかる状態でした。いやあ、良いもの見られたっす。前回の記事のTOP画像はスマートフォンのカメラで撮影されたものです。昔なら考えられないですし、まさかスマートフォンで撮影できるなんて思いもしませんでした。そんな彗星になっていました。
そして迎えた10月15日。私はこの時点から一週間ほど、お外へ出る事ができない時期がやってまいりました。「もし晴れ間があれば…室内からの窓越しからでも見えないだろうか?チャンスがあれば…準備だけはしておこう。」そう思った私は小さめの双眼鏡を準備しておりました。周囲が明るくても視野のバックグラウンドはキチンと締って見える事、重量が軽い事、それでも若干の口径が確保されている事。準備した双眼鏡は「9倍(口径35mm)で525gの双眼鏡」でした。とはいうものの、彗星を見つけられそうな天候になかなか恵まれず「雲の切れ間があるから見てみよう」という日に恵まれたのは2024年10月18日の事でした。室内からの光が窓ガラスに反射しているのに…窓の外の明るい街灯りにも負けず…雲の襲来を縫ってふわっ…とした彗星の姿を捉えることができたのは双眼鏡のお陰だとおもいました。当初は「見られる機会があったら見てみようかな。」と気持ちを軽くして臨んだ紫金山・アトラス彗星ですが、この時期になると「見られるんだったら見ておかなきゃだね。そのために双眼鏡も準備しているんだし。」と、見たい気持ちが強くなっている事にも気づきました。「あぁ、見られて良かった。また見られたよ。」そう思いました。
今回の「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)顛末記」、本日現在、最後に見たのは2024年11月3日です。ネット上での噂では、もうずいぶんと暗くなっているけど十分に暗い場所であれば双眼鏡や望遠鏡でもまだ見られる、もちろん空の状態によりますが。なんて言われていた時期です。この日、私は熊本県の阿蘇外輪山にいました。台風11号崩れの温帯低気圧が通り過ぎた後、さらに現地の標高も700mほどだったので空の透明度は抜群。秋の天の川も綺麗で、アンドロメダ座の大銀河M31も肉眼で楽に認識できるような空に恵まれました。小さな屈折望遠鏡で紫金山・アトラス彗星の方へ向けると、6倍(口径30mm)のファインダーであっさりと見つかります。望遠鏡の倍率は54倍。彗星の核はまだ明るく、接眼レンズ視野のの外まで彗星の尾が伸びていました。「まだしっかりと”彗星らしい”姿で頑張ってるなぁ。」と思いつつ、次に見られる機会はかなり少なくなるだろうと考え、彗星が沈んで見えなくなるまで望遠鏡を向け続けていました。
これから紫金山・アトラス彗星は地球からどんどん遠ざかり、私が生きている間に二度と戻ってくることはありません。一般的に、彗星が周期彗星で二度三度見られたとしても、同じような姿で見られる事はありません。彗星との出会いは一期一会です。
今回の「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)顛末記」は、たまたま私がこの世に存在している時に地球へ近づいた一期一会の彗星としてnoteに記載してみました。
長文となりましたが、彗星の立派な写真などはありません。文字として何とか記録にいたしましたことご理解いただければと思います。