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小さな望遠鏡(口径60mm屈折)で出来た事。

ほぼ1年前、2023年9月16日、小さな望遠鏡がうちに来てくれました。白い鏡筒は汚れ、鏡筒の内部まで埃が積もり、対物レンズはカビとヤケがあったジャンク扱いの小さな望遠鏡。( https://note.com/kiss_a_ten/n/n7ee56dab5c1b  )

ボクはまた星の光を集めることができるんだね。もうちょっと頑張ってみるよ。新品の頃とまではいかないけれど、ボクが宇宙を覗き見るお手伝いができるかもしれないよ?」そんな声が聞こえた気がして、この子に向けていろいろな部品を揃えたり清拭したり可動部分の整備を行いながら星の光を集めてもらいました。

パッと見た目には「古くて小さいし、コレって本当にちゃんと見えるの?
当時はそんな声がちらほらと聞こえてました。鏡筒バンドを新調し、アリガタプレートに取り付けた事で現代のいろいろな架台へ搭載可能になったり、ありがたいことに遠方の協力者からいただいたファインダー(新品)を取り付ける事も出来ました。更に、この子の性能を活かせるような倍率になるような接眼レンズを入手出来ました。(この子に似合うような、昭和時代に販売されていたちょっと古いけどちゃんと見える接眼レンズです。)

「わーい!お月さまの光だぁー。きれいだねー!あっ?!お月さまのすぐ近くに小さな星があるよ?おっ?隠されたぁー!!!」

狭いベランダ(幅75cm)で見る事ができた「おひつじ座δ星の掩蔽(2023.10.2)」をアッサリと見る事が出来ました。短い筒だと取り回しが楽なのよね。当夜の月齢は18.2、ちょうど満月過ぎの大きな月でしたが、口径が小さいからか眩しさ控えめでありながら、屈折望遠鏡ならではのコントラストでおひつじ座δ星(4.4等星)を見る事が出来たんです。

●知人の言葉。「6cmのくせに!…って呼んでいい?(良く見えすぎる!)」

これは、県内外の星好きの人たちが集まった場所で言っていただけた言葉です。当夜はシーイング(大気の揺らぎ)が凄く良くて、木星も土星も凄く良く見えていました。過剰倍率となる高倍率(192倍)を使っても木星の像は破綻するどころか、木星本体の縞が濃く見え、縞のうねうねがハッキリと分かりました。二重星を見ても「エアリーディスクとジフラクションリング(干渉環)が教科書的な見え方で綺麗に分離してるね。これは綺麗な像だね。」周りの知人たちは筒の大きさや見た目などで判断せず、実際に見えた星で見え味の感想を言ってくれる稀有な人たちばかりです。先述の「6cmのくせに!って呼んでいい?」という言葉はこの子にとっての最大の賛辞でした。

●「ほんとに6cmでも見えるんだ…。初めて見た…。凄い。」

難物と言われる二重星。きっと6cmだと見えないって思いこまれている二重星。その伴星を複数の人たちが認識いただいた事もあります。「なんだか見届け人というか証人というか、見えた事を承認しなきゃよね。」こんな言葉も受け取りました。

「ボクは小さいから、たくさんの星の光を集める事はできないけど、光が少ないから見える星もあるんだね。ボクもびっくりしたよ。ボクの限界がどこにあるのかを探るように星へ向けてくれているんだね。」

近接二重星は、伴星が干渉環の上に乗っかって環の上で横に伸びていたりするのって実に6cmらしい見え方。
月面は、普通は眩しいんだけど、倍率を上げると程良い明るさで眩しくなくていつまでも眺めていられる。
ベランダで星を見ると、小さい(短い)から壁が邪魔になりにくい。
大きな望遠鏡だとはみ出してしまうような天体(大型散開星団)は、低い倍率(15倍)で視野にすっぽりと収まって綺麗に見せてくれる。

古くても、小さくても、倍率が低くても、その子に合った対象を選べれば出来る事は多くある。見る対象(天体)を選ぶのは使う人。そして、見もしないで限界を決めつけちゃいけないって教えてくれました。

これが「小さな望遠鏡(60mm屈折)が教えてくれた事。」なのです。


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