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西村彗星(C/2023 P1)と10分セッティング

2023年8月13日、西村栄男(にしむらひでお)さんが発見した新彗星を見る事が出来ました。発見時の光度は10.4等だったとの事。


2023年9月3日未明。新月期から半月が経って満月を過ぎ、当夜の月齢は17.1となってて夜空は明るい。西村彗星は薄明開始1時間半前の時点で東の空から上ってくる。高度が10度に到達する時刻は4時20分頃。そして薄明開始となる5時00分の時点でも高度は18度との予報でした。
空全面にはウロコ雲があるものの、雲と雲の間にはなんとか星が見えている。

「ウロコ雲とウロコ雲の間の晴れ間を探すしかないな。それにしても東の空は雲だらけ。果たして見つかるのか?いや、雲と雲の間に星が見えていれば、きっと探せる…はず。」

今回、選択した機材は口径82mm(25倍)のフィールドスコープ。手動での導入とは言え、方位と高度の目盛を付帯した架台に搭載しているので的外れな場所へ向けることはない…(はず)。

カメラ三脚をセット。
架台を載せて、水準器で水平を合わせる。
見えている星を導入し、方位目盛をアジャスト。

この3つの作業でフィールドスコープのセッティングが完了します。
それにしても時間が無い。そして雲が取れない。方位と高度の目盛りを使って西村彗星がいるであろう方向へ向けるも雲が張っているので視野の中には星が見えない。時折、ちらりと何かの星が見えては消える。予め、スマートフォンアプリの星空アプリ「stellarium PLUS」で西村彗星を表示させておく。フィールドスコープの視野の中にチラリと星が見える度に特徴的な星の並びが無いか探し、西村彗星がいると思われる視野を一致させておく。

4時43分、視野に星が見えた。同時に、「西村彗星!見えたぁ!」

思っていたよりも中央集光がある。淡い星雲のようなイメージではなく、球状星団のようなイメージだ。周囲の星とアプリの星図とも一致しているので西村彗星で間違いない。じっくり見ようと思っていたら…雲に阻まれた。ウロコ雲とウロコ雲の間にある晴れ間だから見えるのも1~2分か。時刻は5時に近くなっている。でも、晴れ間が来ない。フィールドスコープの接眼レンズを覗きっぱなしであるにもかかわらず晴れ間が来ない。5時00分を過ぎた。薄明が始まったのか、接眼レンズの視野と視野環の明るさの差が明瞭になっていく。「終わったか。でも何とか見たぞ。よく頑張った。」
そう思ってフィールドスコープから眼を離して東の空をふんわりと眺めていた。「ん?フィールドスコープの向いている方向って晴れ間の挟間に入ってるんじゃね?」

5時04分、「見えてる!さっきよりも明るいぞ!周りの星も多くなってる」

必死に視野の星々と西村彗星の位置関係を覚えようとする。西村彗星の上方向にフワッとした何かがあるようにも見える。尾とは言えない、でも何かあるって感じ。

そして視野は雲に阻まれた。
蒼くなっていく東の空を眺める。金星が綺麗。
「せっかく来たとやっけん、そりゃ見とかんばやろ。」

エッジの効いた三日月状のシャープな金星がフィールドスコープの視野に飛び込んでくる。金星の輝きで手が切れそうなエッジの鋭さが印象的。内合直後の金星はデカいんよね。25倍でも形がハッキリと分かる。
5時15分。空は既に明るくなっており、そろそろと撤収する。

西村彗星は、翌日の9月4日についても4時45分から5時00までの僅かな時間が勝負Timeと感じた。もしも明日朝に晴れていたら「もう一度見たい」とも思った。仕事へ出勤する前の時間帯。勝負は15分。しっかりと準備をしておこう。

2023年9月4日4時40分、目覚まし時計が鳴る。すんなりと起床。玄関へ行き、予め準備(脚の長さも伸ばしていた)していたカメラ三脚を玄関ドア前の東の空が見える場所へセット。フィールドスコープ架台を搭載し水準器で水平を取る。北極星で方位目盛をアジャスト。この時点でフィールドスコープのセッティングが完了。さっそく西村彗星の方向へ向ける。「現在時刻の西村彗星は、方位70度、高度15度」

「西村さん、おはようございます。」と呟いた午前4時53分。

市内の光害地であってもしっかりとした西村彗星(5等級後半から6等級?)の姿を眺めることができたのは設置前夜の事前準備と組立手順のシミュレーションを行っていた事が大きいと思った。勝負Timeは15分に対し、出勤前の睡眠は極力削りたくない。セッティング時短も勝負のうちよね。セッティングの目標時間は10分としてみたが案外ちゃんと出来たと思われます。

必要最小限の倍率(25倍)
電力を極力使わない。(手動導入)
設置に時間を掛けない。(水準器+1スターアライメント)

こんなシンプルな機材でも、まだまだ色々と楽しめるものですね。

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