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子ども時代に学んでおきたかったことは?

先日、観光地として人気のお山に登り、
木の見方、もっと詳しく言うと、
「木の形の意味の読み取り方」、
のレクチャーをさせてもらいました。

最近、木に関わる事故が増えているので、
以前よりも、木の形の見方を知りたい、
教えてほしい、というご要望を
頂くことが多くなりました。

で、自分にとっては、
とてもなじみ深い、ものの見方、
についてお伝えしています。

で、気づきます。
自分は、30年近くも、
当然のように使ってきた知識ですが、
気づいてみれば、社会的には、
少しも共有できていない感じ。

確かに、私が学んでいた堀先生が
絵入りのわかりやすい本を
たくさん発行されています。

それらの本の多くは、講談社という
伝統ある大手の出版社から出ているので、
必要性を感じた人は、手に取り、
読んで感動した、というお話をよく聞きます。

ですが。
問題は、必要性を感じた人が、
というところです。

たぶん、ふつうに暮らす日本人が、
木について、知識をもっておく方がよい、
と自分で感じる機会は、
ほとんどないでしょう。

夏の木陰や、パワースポットめぐり、
春のお花見、秋の紅葉狩り、
巨木めぐり、
神社やお寺への観光参りなどなど、
他にも、温暖化の緩和、二酸化炭素の固定、
生物多様性など、あげるとキリがありません。

木には、いろいろとお世話に
なっているのですが
それがふつうというのか、
当たり前というのか。

ですが、木から、
恩恵を受けるにあたっては、
注意事項もある、と思っています。

ここでは、簡単に書きますが、
木は、もともと、折れるし倒れる存在です。
そのように、作られています。

木は、やさしくて、かしこい存在なので、
できるだけ、人に被害を与えないよう
避けながら、
折れたり倒れたりしてくれることが
多いように見えます。

まるで意思を持って
そうしてくれているかのように。

それは、たくさん起きている倒木事故
というのをニュースで見ていて感じることです。

他にも、大きなケヤキが立ち並ぶ屋敷林の
ご主人にも聞いたことがあります。
「ケヤキは、人の上には、枝を落とさない」と。

確かに、これだけ木に近い位置で
多くの人間が活動していても、
木が折れたり倒れたりした結果、
悲惨な事故になるケースは、
割合としては少なめです。

折れたり倒れたりした木と、
電車や車などの衝突事故は
時々、起きます。

が、人が大けがをする、亡くなる、
という例は、報道を見る限り、
日本ではほとんどない、
といってよいと思います。

それでも、
ときどき、木がよけ損ねることもあって、
人や大切にしているものの
上に落下してきます。

だから、木の形を読んで、
避けられる危険の場合は、
人間が避ける、
というのが大切だと感じています。

悲しいかな、人間は、
自然界のルールを
変えることはできません。

ただ、そのなかで、
自然界のルールを理解し、
その知恵を活かして、
かしこく選択し行動することは
できるはず。

今、あちこちで、
伝える機会を頂いている
「木の形を読む」という技法は
そのために大いに役立てられると思います。

聞くところによると、
自然の中での活動をサポートしている現場は、
木の安全点検に必要な知識を
ほとんど得る機会のない状態で
日々、手探りで点検されているようです。

たぶん、これは、どこも、そうだと思います。

2020年7月の統計では、森林率約68%で、
「森の国」と自他ともに認める日本で暮らし、
木のそばで過ごすことも少なくないならば、
木に関する、最低限の知識は、
みんながもっていても
損はないと思います。

一緒に学ぶ大学生に、
「こういう知識は、
子どもの頃に習っておきたかった」
と言われることがあります。

確かにそうですよね。
できれば、義務教育のレベルで
一通り、やっておきたいです。

木がどんな生きもので、
共存していくためには
どのような配慮が必要か。

人間同士のコミュニケーション術については、
情報が広く共有されるようになりました。

木と、少しでも危険を避けつつ
よい関係を築きたいと願うなら、
「樹木バージョンのコミュニケーション術」
があってもよいと思うのですが、
いかがでしょうか。


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樹木も人も笑顔に、樹木医mimi  ( 三戸 久美子 )
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