『絶望の林業』私なりのポイント エネルギー編
関東の梅雨入りはまだ先、と聞いていたのに、すでに雨が多くて、ひんやりさを感じるこの頃ですが、体調よくお過ごしですか?
『絶望の林業』の内容は、多くの方、できれば日本人には全員に知っておいてもらいたい、くらいに思います。
だからポイントだけでもお伝えしよう、と思い、生活者にとって身近なテーマがいい、決めたものの、今度は、圧倒される気持ちに、手を止められていました。
前回書いた、貧乏に困窮していると、貧乏がどういうことか、説明できなくなる。
事情を知るとは、まさに、こういうこと? 何も言えなくなる感じ、を体験中でした。
ですが、こういう気の重いことこそ、先延ばしにしてはいけない。
ということで、今回は、エネルギーをテーマに、なるべくポイントだけ、書いてみようと思います。
今、ロシアとウクライナの戦争で、世界中がエネルギー政策を見直さなくてはならなくなり、対応に必死になっています。それは、当然ではあります。
日本では、「だから原発しかないって言ってきただろう!」という声が強くなっているのを感じます。
ですが、そうなのでしょうか?
たくさんある説明を端折り、原理原則的なことだけ、お伝えしましょう。
私は大学で「エネルギー工学」の概論的な科目を履修した時、目からウロコのことを先生に教えて頂きました。
とりあえず、3つ挙げますね。
①原発の二酸化炭素の排出量は少なくない。
「二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーである」といえるとすれば、発電前後の処理にかかっているエネルギー、排出二酸化炭素を計算に入れていないからだ、と。
あと、ウランの精錬に必要なエネルギーは、エネルギー食いで知られるアルミの精錬を上回る。だから、クリーンとはいえない。
②電気は上等なエネルギー
電気は、エネルギーの中でも、仕事のできる上等のエネルギーである(家電製品を見ればわかりますね)。
なので、原発で発電した電気を、家庭でまた調理や暖房などで、熱に変換して利用する、というのは、非常にもったいない効率の悪いやり方である。
③送電ロス
原発のある地域は、利用量の多い都市部から遠く、送電線を使って電気を遠距離送ると、送電ロスというのが、かなり生じます。
あとは、比較する際に、原発が有利なように統計グラフは作られているので、それを鵜呑みにしてはいけない、とも。
担当の先生は、勇気ある行為といってよいと思いますが、重要なことをいくつも教えてくださいました。
ここで、話を「絶望したくなる林業」に戻します。
少し前から、山では木が育っているので、「未利用材」を使わなくては、と言って、バイオマス燃料が注目されています。
ですが、国内の木材を使うはずだった「バイオマス発電」の工場は、臨海地域にある。
なぜかというと、原料が海外からくるからです。
そして、結局、発電の主たる燃料は、「国産材」でなく、エネルギーを使って海外から船で運んできた「輸入材」になってしまったようです。
材料の輸入ばかりでなく、日本国内での材の選び方にも、かなり問題があることを『絶望の林業』は指摘しています。
詳細は省きますが、質による材の選別には労力がかかるので、建築材などに使えるはずの優良材もひとまとめにして、バイオマス発電の燃料にしてしまっている。
どうでしょう? 長年、手をかけて育ててきた使える材を、いきなり燃やして灰にしてしまうのです‥‥
最近の日本では、どの産業にもよくある現象だと感じますが、「なんのために」始めたことなのか、やっているうちに見失って迷走する、の一例ではないでしょうか?
今になってありがたく思いますが、ここに書いたことが腑に落ちるのは、エネルギー工学の先生と、かつて関わった木材のリサイクルの仕事のおかげです。
なんとなくやったことが、後で何かしら役に立つこともある? その時には、わからないのですが。
写真の本は、もう少しやわらかいタイトルにしたかったのですが、力不足でこのようなハードめのタイトルに。
よろしければ、お手に取って眺めてみてください。中身は、写真や図表が多くて難しくないと思います。
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