木が不調になったとき、避けたいこと
昨日は、若い方と、
ちょっとしたランチミーティング的な
時間をすごしました。
場所は、立派なシンボルツリーの立つ中庭の
とてもすてきなテラス席。
心地よく整えられた空間に加え、
お天気も、日差しがあって、風がない、
最高の時空間で、楽しい時間を過ごせました。
最近では、このようなテラス席が
増えてきたのは
うれしい、ありがたいことですね。
その場所を選んだのは、
シンボルツリーを教材として
話をするためでもありました。
さて、ここで質問です。
もし、自分の大切にしている木が
なぜか調子が悪くなったとしたら?
そこで、人間がやりがちなこと、
というのを前に書かせてもらいました。
見えない存在の代表選手は、根(土台)|樹木も人も笑顔に、樹木医mimi ( 三戸 久美子 )
実は、その3つに加えなければいけない
ことがあります。
ここにあげた3つは、
庭木の所有者がやろうと思えば
自分でもやれること。
ですが、今日書くことは、
基本的に、職人さんや業者さんが
取り組む作業で、
少し大がかりになります。
「自分の家の木が、
元気なくなったらどうします?」
と聞いたときに、返ってくる答え、
(風通し改善のために、とにかく)切る、
肥料をやる、水をやる。
さて、それ以外に、
せっかくやってもらっても
木が困るであろうことは
なんだと思われますか?
結論を先に書いてしまいます。
すでに元気がなくなった木に対し、
根元まわりの土を耕す、
新しい土や資材を入れる、
土を入れ替える、
根を切る、というやりかたで、
樹勢回復(健康状態を回復させること)
をした場合、
長期的にうまくいく可能性はかなり低い、
と思っておく方がよいです。
しばしば聞いてきた話は、こうです。
根元まわりを掘るやりかた
(多くは肥料も入れる)で改良した。
すると、次の年はよくなった、
ように見えた。
でも、その次の年、
また悪くなってしまって困っている…
そして、目の前の木は、
かなり不調、
場合によっては、瀕死、
に見えることもあります…
科学技術は万能ではありません。
が、過去の研究、経験の蓄積は
どっさりあるので
失敗を防ぐために使えます、
使いたいです。
従来通りのやり方で
とにかくやってみる、その前に。
幸いに、と言っていいか迷いますが、
うまくいかなかった例を
たくさん見せてもらってきました。
だから、それはまずい、
というのが
やる前にわかります。
とにかくやってもらって
木が困ることは、
今、やっとのことで維持している
少なくて貴重な根を
傷めること、切られること。
以前、文献で、樹勢回復、
そのための土壌改良法の変遷
(時代ごとの技術の変化)
というのを調べたことがあります。
おどろいたのは、明治25年発行の
『土壌改良』というタイトルの本は
古い文字も混じっていて、
少し読みにくいですが、
今でも読めて、内容は納得いくものです。
そういう先人が蓄積してきた知識、
試行錯誤で得た残念な結果。
そして、自分が
目の前の不調な樹木に聞きつつ
ここ数年取り組んできたやり方と
それに対する木の反応。
それを見ていて、
今、最善と感じるサポート法は、
木のまわりの土を掘ることなく、
小さな縦穴だけをあけていくやり方。
目指すのは、
今ある根をできるだけ傷めることなく、
土壌の物理性だけを改善することです。
物理性改善、というのは、
具体的に言うと、
土の中に、縦方向に、
深い層まで連続する小さなスキマを
たくさんつくってあげる。
そうすることで、
根がしっかり呼吸しつつ、
養分や水分を吸収しつつ、
深い層まで伸びていける。
そんな環境を作り出すこと。
そうすることで、
乾燥に強い体質になれます。
そのやり方だと、木の根ばかりでなく、
土壌中で暮らす
微生物や動物たちにも
酸素が十分使えるようにしてあげられます。
そして、木の根ばかりでなく、
土壌全体の生物多様性が豊かになり、
イキイキした活性化された環境に変わります。
長くなってしまいましたが、
最近つくづく思うこと。
人も木も、健康を回復(維持)し、
長生きする方法は、意外とシンプルです。
その生物のもつ身体のしくみ、
生活のしかたの基本を理解して、
まずは、しっかりエネルギーを
稼げるようにしてあげること。
せめて、木の邪魔はしないこと。
そうすれば、後のことはついてきます。
木を見て学ぶと、
自分も健康体に近づける気がします、
心身ともに。