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木のために、を真剣に実行する人たちの仕事を見せてもらって、うれしくなる

昨日は、ちょっと長く関わっている木、
サクラの機械診断の立ち会いでした。

昨年9月にイチョウの事故が起きて以来、
木の安全性への注意がさらに増していて、
最近、私も機械を使った診断の仕事が増えました。
作業をお願いして、そばで見ているだけ、だけど。

それはさておき、なのです。
ここの現場で、とてもうれしかったこと。

住棟を建て替える前、
古い建物がまだ建っている時期、
残す、残せる木を選ぶ段階から
関わらせてもらいました。

たくさんのサクラがあったのだけど、
ほとんどの木が状態が悪く、
これは残念だけど残せない、
という判断をせざるを得ませんでした。

長く生きる木の未来を見据える仕事では、
そういう厳しい判断を迫られます。

で、これは残す価値大あり!
というものを選び、
長期にわたる工事中も
大切に保存してもらってきました。

途中、別の木の仕事に
この場所に行くチャンスがあったときは、
工事現場の塀の中にいるこの桜たちを
一生懸命、背伸びしてのぞき見していました。

時間が経過して、
昨年やっと、
この木たちの生活空間の整備が終わり、
昨日は、久しぶりに
近くでのご対面、がかないました。

かつては、再開発のときに木を保存する場合、
「移植保存」と簡単に言われることが
多かったです。

というのも、新しい計画に、
はっきりいって邪魔になる木は、
切るか、移植するか、
と考えるのが普通でした。

でも、私は、移植してまで残した
大切なサクラが
その結果どうなるか、
手痛い実例を見せてもらっています。

だから、できるだけ移植は避け、
現地でそのまま、地形の改変もすることなく、
木の周囲を広く囲って残すことを
提案してきました。

そして、その必要性を理解された方たちは
私が思ったよりも
ずっと広いスペースをとって
木を現地で保存されるようになりました。

ですが、すべきことは、そこで終りません。
その後の木の、短くはない生活を考えると、
考える必要のあることが、
たくさん残されています。

以前は、木の根元ギリギリまで舗装し、
ベンチを設置する、
というのが多用されてきた
デザインだったと思います。

ですが、このやり方だと、
舗装材を載せる前に、
木の根元近くの土を
しっかり締め固める必要が生じます。

そうすると、
木の根が痛めつけられたり
酸欠になったりして、
せっかく残したものの、
後の生活で木が苦戦することが多い。

そのしわ寄せは、
もちろん人間にも及びます。
不健康で安全でない木と
一緒に暮らすことになれば
費用も心労も負担となります。

で、できるだけ、
木の周囲は舗装することなく、
根元周囲の土を触ることなく、
地上部も地下部も広い空間のなかで
暮らしてもらえるような計画にする。

また、生きている木は、
時々、枯れ枝が生じます。
その枯れ枝は、
人間の安全のために早く取り除きたい。

そういうときにも、
きちんと木のそばまで作業車を寄せて、
必要なことができる体制を
取っておくのが望ましいです。

最初、この木たちの場合も、
デザイン重視の整備案も
いちおう検討されたそうです。

ですが、それでは木のためにならないから、
ということで、
今の案、デザインを選んだ、
と聞かせてもらいました。

それを聞いて、感動しました。

以前なら、
ほぼ人間の快適性やかっこよいデザインを
最優先にして、
計画が練られていたと思うので。

ですが、今は、木の都合や事情を
できるだけ考えて、
木のためになる方法を検討し、
実施している方たちがおられるのです。

そして、それは木のためのようで、
実は、回り回って
人のためにもなります、必ず。

最初はこの事情を知らないまま、
目にしたので、
できあがったサクラ・テラスを
見せてもらって、
明るくて広々としたデザインに
なったのだな、
と思っただけでした。

が、その背後には、
関係者以外には知ることのできない
細やかな配慮や検討、調整の時間などが
あったのですね。

そのような動きを主導されたのは、
年齢は若い方です。
現場への足の運び方を見ていて、
仕事への熱意をものすごく感じる方です。

そのような方がよい仕事を次々として、
よい結果を見せてくれるのが、
何よりも心強いです。

今は工事の直後で
少し樹形が変わっていますが、
とても大切にしてもらっています。
これから、着々と健康と樹形を回復して、
今年の春もきれいな花を
みんなに見せてくれることを願っています。

木も人も、育つときは、
どちらも足並みそろえて。
その実例に希望を感じさせてもらえました。

みんなに見守ってもらえることを力に、
元気で長生きしてほしい桜たち。



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