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『カラー版 昆虫学者、奇跡の図鑑を作る』(丸山宗利先生) の抜き書き
ひたすらもりもり、
自分に与えられた仕事(だけ)を
すればよいのでしょうが、
ついつい、脱線してしまいます。
その1つが、NHKラジオの「子ども科学電話相談」。
あまりにうまい説明に、
心から尊敬する先生が何人もおられますが、
それでもなお、新発見!という先生に、
この番組を聴いていると、出会えます。
丸山先生は、
そんな比較的新しく知った昆虫の先生。
で、子どもたちへの説明が
あまりにもうまいので、
しばらくのあいだ、
丸山先生のお仕事にはまり、
本を図書館で借りたり、
学習図鑑を買い換えたりしました。
これからご紹介する本も、すばらしいので、
抜き書きをここに残しておこうと思います。
できれば、ご自分で手に取って、
全体を読んで頂きたいですけど。
特に。「おわりに」は、是非読んで頂きたいです。
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P170~
文章に関しては、もう長らく、「毎日小学生新聞」という新聞で連載を続けており、子供にわかりやすく語り掛けるような口調で書くようにしている。この連載は最初はとても苦労し、今でも少し悩みながら書いているが、この経験は子供向けの文章を書くのに大いに役立ち、GETでもLIVE新版でもそれが生かせたと思っている。
(中略)子供向けの文章のほうが、目的にもよるが、ずっと難しいことが多い。難しい言葉を遠回しにならないように簡単に言い換える必要があるし、文章の展開もわかりやすくする必要がある。また、大人よりも、子供は本物を求めている。「子供だまし」などという言葉はうそで、大人よりも子供の方が簡単にごまかしやうそを見抜く。(中略)何より誠実に表現に向き合う必要があるのだ。
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P183~
子供向けの文章というのは本当に難しい。(中略)「正確さも大切だが、細かい例外にこだわりすぎるより、本質的な部分を簡潔に説明することが重要」。ある物事に詳しい人が文章を書くと、どうしても例外を思い浮かべ、短い文章に書ききれなかったり、「など」を多用したりして、冗長な含みのある表現にしてしまいがちである。しかしそれは読者である子供には不親切であり、専門家の臆病なプライドと自己満足の発露にすぎない。
私はNHKの「子ども科学電話相談」というラジオ番組にも出ているが、いつも回答には迷い、専門家たる自分との戦いがある。子供への説明においては、いかに簡潔に要点をのべるかということが大切だ。
「細かい例外にこだわるな」というのは、そのような経験の中で培った子供向けの文章の重要なコツだと思っているが、意外にこれを心得ている専門家というのは少ない。教育や普及啓蒙において、物事を長くても正確に説明することこそ、「誠実」だという見方もあるだろう。しかし、短く端折ってでも,伝えるべきことをしっかりと伝えることも誠実さである。両立できればよいが、それは容易でないことが多い。これは常に問い続けなければならない課題だと思う。
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P223~
私はいつも本を書く時、必ずその本を贈る誰かを具体的に想像するようにしている。とにかく昆虫が好きでたまらない小学生低学年の男の子、昆虫が好きなのに周りにからかわれてしまう高学年の女の子、あるいは子供のころに虫を好きだったけれど、そのことはすっかり忘れていて、たまたま書店で私の本を手に取る大人の人。具体的な相手を想像すると、本の方向性が定まりやすい。
実際に買ってくれる読者をしぼろうとは思わないが、どんな本であっても、著者が誰に向けたのかがはっきりした本は、少なくとも1本の筋が通った本になると信じているからである。ちなみに本書に関しては、30~50代で、LIVE新版を実際に見て驚いてくれた人や、昆虫図鑑という言葉に何かなつかしさを感じ、たまたま手に取ってくれた人を思い浮かべた。
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P225~
制作にはたくさんの人がかかわるが、少なくとも私が作業する際に思い浮かべる相手は決まった。そのような(大学医病院の小児科の病棟で治療を受けている)子供たちの喜ぶ顔を目指したい。そうすれば、きっと最高のものができるに違いない。昆虫を初めて見る人の多くが感動するようなものにもなるだろう。
この時、私は鬼になった。良い図鑑を作るためには何でもしようと。
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最近、しばしば思うのですが、
働き方改革は、
運用のしかたに注意が必要そう、
ということです。
先日のあしかがフラワーパークの
フジの手入れも、
丸山先生のお仕事もそうですが、
人を感動させる仕事をされる方の
働き方も想像してみたいです。
できるだけ少なく働き、報酬は多く
というような、
最近の効率よい働きかたでは
なさそうですね。
やりたくない人、やれない人に
無理強いしないのは
よいことだと思います。
が、同時に
やりたい、やれるのに、
半ば強制的な均質化で、
仕事を取り上げられる感じの人への
配慮も必要な気がします。
私個人的には、
若いときに、自分の限界に挑戦しておき、
ここまでは大丈夫、
ここから先はやってはまずい
というのを、
自分でつかんでおく方がよいのでは?
ということです。
これからたぶん、社会のしくみとして、
管理が厳しくなって行く方向性なので
チャレンジも簡単ではないかもです。
が、それでも、
あきらめずにトライできたら、
と思います。
まずはご自分のために。
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