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木を守りたいとき、どう考える?

最近では、再開発があちこちで
行われています。

ある程度の歴史のある敷地には、
だいたい大きな木が生活しています。

ニュースを見ていると、あるケースでは、
そこにあった木を、立派な太い木も含めて、
どれもみな切ってしまい、
更地状態から計画が進められていました。

そして。やはりというのか、そのケースは
その周辺の地域に暮らす住民さんと
トラブルが生じているようです。

また別のケースでは、
どの木も守りたいために、
全部の木に対して、
強い剪定をし
根も切りつめて移植することで、
木を切らずにすませる、
という方法をとったケースもあります。

さて、これらの方法について、
どう思われますか?

他にどのような?と思ったら、
別の方法を考えてみましょう。

あるときから、
できるだけ移植しないで
木を保存できれは
それがベスト、
と考えるようになりました。

それは、ある枝ぶりのとても美しい
立派なソメイヨシノを
移植によって保存した
その後を見たからです。

その木は、移植後、25年くらい、
最終的に移植された場所で
暮らし続けています。
きちんとした生活空間を整えてもらって
大切にされています。

で、春になると、
毎年のように、
きれいな花を見せてくれます。

会いに行って、今年も無事に
そこで暮らしている姿を見せてもらうと、
心底ホッとする木のひとつです。

そういう意味では、切らずに保存できて
本当によかった、と思います。

ですが、この木にとって、
今の生活が本当に幸せか?というと、
そう思ってくれているかどうか、
自信がありません。

というのも、とても美しい形だったから
是非移植しよう、となったその姿は、
移植によって失われてしまい、
それなりに元気に暮らしていますが、
幹のあちこちが、かなり腐ってしまって、
ちょっと痛々しい姿、
になってしまったので。

この木の姿を思うと、
もちろん切るよりもいいけれど、
移植しないで、
その場で、負担をかけることなく
残せたら、
その方がもっといい、
と考えるようになりました。

樹木を保存するって、
長丁場の仕事です。
だって人間よりも、
寿命がずっと長いんだもの。

短命だ、と言われて
最近、別の品種に
植え替えられることの多い、
ソメイヨシノ。

短命だと言われても、
長いものは143年(2024年時点)も
生きているのです。
これくらいの樹齢のソメイヨシノは
他にも何本かいる、と言われています。

しかも、遺伝的に同じ「クローン」
ということならば、
可能性としては
どの木もそれくらい生きられる、
ということ。

そう思うと、残すときにも
どのように?というのは
とても重要になってきます。

移植はしたものの、
その後は無関心になってしまったり、
いろいろな原因で、
不調になってしまったら、
あっさりあきらめられて、
植え替えられることもあったりします。

今の時代、危険木と判断されたら
人のそばで生き残るのは、かなり困難。

そう思うと、保存を検討する段階で、
木の事情や言い分にも
耳を傾けたくなります。

どうすれば、本当の意味で、
長期的に、その木を
大切にすることができるのか?と。

ということで、
たどり着いたのが
できるだけ「現地保存」です。

保存を考えるときは、
動かさずにすませられないか、
まず考えます。
そして、設計される方に、
そんな設計・デザインをお願いします。

そして、木を保存する際には、
どちらかというと、質を重視します。

もちろん、お金や時空間、
人手に制約がなければ、
質も数量も、でいきたいところ。
ですが、そのようなケースは、
ほとんどありません。

だったら、保存しようとする木は、
できるだけ健康で、
長生きできる状態で残したい、
と願って仕事をしています。

正解のない課題ではありますが、
木の苦手なことは、できるだけ避けたい、
と思うと、
案外、選べる選択肢は、
しぼられてきます。

この課題も、なんでそうなる?を
きちんと説明しようとすると、
長くなりそう…

この記事は、ふと、これを書くように、
と木に言われた感じで、
ここまで書きました。

たぶん、この次をどのように書くか、も
向こうからやって来るのでしょうね。

ご参考までの補足を。
移植作業には、いろいろな工法があって、
木に与える影響は、
工法によって、かなり異なります。

林試移植法(A)という
丁寧な根回しをして、新たな根を出し、
枝の剪定も最少量にする、
という工法であれば、
移植木とわからないくらいの形で
移植することも、技術的には可能です。

が、どの方法であっても、
移動するためには、木の苦手な根を切る、
という行為が避けられません…
それが悩みの種、ですね。
切られるよりはいい、
と言えば、それまでなのですが…





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樹木も人も笑顔に、樹木医mimi  ( 三戸 久美子 )
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