アーモンドの月の形

ぼくらは見たよね、南十字星。フィリピンあたりの海の上。そんな気がするだけかもしれないアーモンドの月の形。ごまかしているわけじゃない、星のことは記憶がマヌケになっているけど、船の旅できみに出会ったことは忘れようがない。あれさ、わざとコケたんだよって今更の告白は何? わざとであっても惹きつけられた瞬間は閃光だった。きみは色白の肌を惜しげもなくビギニに見せつけ、急にお腹が痛いと帰省した。訪ねて行ったぼくにレポートを手伝わせ、頭いいねと褒める唇のずる賢さはいまだに不遜を発揮しているだろうか。

良くも悪くもぼくらは砂漠のように人見知りすぎた。メールじゃ破れないプレゼントも人肌には敵わないのに、惜しげもなく遠ざける悪趣味だった。ずっと他人行儀でいることの安定は軽く、消えてなくなる雪泡みたい。ぼくは一足先にネクタイを締め、きみは海から上がろうともしない。なんだよ、ぼくらはいっときも既知数でなかったのか。でもぼくはこんなに自由で、きみもそんなにお気楽だから、そんなこんなでぼくらはいつも笑っているから、月が隠れてもびくともしないよ。

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