ケーキ買って帰ろ

駅前通りはクリスマスの装いで

陽が落ちて帰る足をしばし緩める

さいわい片手がぽっかり空いている

明日はゆっくりできるから

ケーキでも買って帰ろう

思った矢先呼び止められる

いつもの元気な乾物屋のご主人

ここで明日のおかずを調達しては

両手ふさがってしまうから

ケーキは持てない

あの箱には完璧な片手を要求される


この町に来てからずっとある定食屋

一度も入ったことがないけれど

緊急事態中も開いていた

看板を出して息長く商うのは

おいしいという信頼の証だろう

今度きっと食べに来よう


ここのケーキ屋も古い

古いがオーナーは二代目

ドイツにパティシエ修行したという

本人に聞いたことはないのに

噂が独り歩きしている

古い店は小さな歴史が町と共にある

結局3つも買ってしまうのは

ケーキ屋の陰謀

どれも魅力的すぎるのと

コンビニのように1つだけ買うのが

恥ずかしいのだ

駅前通りが浮足立っているから

クリスマスまで

こんな感じで乗っかってみる

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