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婦人的服飾手引

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乙女視点の服飾百科
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なりたい自分に近付く術、遠退く罠

自分が見られたい姿を装うことが必ずしも正解ではないと知ったのは、つい最近のこと。 これまでの私は、透明感が欲しければ紫色のコントロールカラーを駆使し、イノセントに見せたいと思えば白い襟付きのワンピースを纏う、「いわゆるガーリー」に傾倒しては、その枠の中にきちんと収まるように生きていた。それが私にとって最善なのだと信じて疑わずに、気持ちよく過ごしていた。 だけれど、歳を経れば経るほど、どうも「ガーリー」がほんの少しズレて「メルヘン」に仕上がってしまう気がする。そんな違和感を感じ

お気に入りの服にひと手間を

これまで、なかなか大変だわ、と思ってきたことの一つに洋服探しがある。 背が低い。そもそも総てのパーツが小さい。更に躰が薄っぺらい。標準体型から大きく外れた私の体型に合う洋服を探し出すのは簡単なことではなかった。 上半身は三号で下半身は五号。 そんな体型に合う既製服なんてなかなか存在しない。 仮にあったとしても、まるで子供服のようなものばかりで、「今っぽいデザイン」のものはそうない。サイズがぴったり合うものを見つけ出したからといって、なかなかお洒落にはなれないことを身にしみて

美しいスタンダード

真っ白な無地のシャツを買い換えるペース、 革靴をピカピカに磨くためのテクニック、 靴から少しだけ覗く靴下へのこだわり。 それなりに歳を経った今、周りのおしゃれな人を観察していると、彼らはいつだってパーフェクトに手入れが行き届いている。 メイクよりもスキンケア、ヘアスタイルよりもヘアケア。 もちろんシャツやパンツはいつだって四肢にフィットした丈に整えられているし、驚いたことに綿素材に入っているやわらかなシワは計算づくだったりもする。 何ひとつとしてちぐはぐさを感じさせない仕上

ワードローブに直感と客観

季節の始まりは決まってわくわくする。それは大人になっても変わらないこと。 それゆえワードローブに何かしら愉しい変化を加えたくなるのは至極自然なことだと思う。私の場合、往々にして春は決まって明るい色のトップスだとか、さらりと羽織れるアウターだとか、そんな気持ちまで一気に軽やかになるものが欲しくなる。 そして、今か今かと春が出番を待ち構えているまさに今、私が気になっているものは、メタルフレームの眼鏡に明るいブラウンのペンシルアイライナー、そして、カジュアルになり過ぎないミニスカ

新しい季節には新しい洋服を

もうすぐ冬がやって来る。今年の冬は、うんと素敵な季節にしたい。 そんなことを考えていた矢先、私が得たのは「それならば新しい洋服を買うこと」という助言だった。 毎年冬が訪れると、まるで制服を着るかのように毎日腕を通すのはジョンスメドレーのプレーンなタートルニット。そこに合わせるのはカルヴェンのネイビーか臙脂色、或いはグレーのウールスカートと、フォーガルのソックスやタイツ。最後に幾つかの中から靴を選んで、十年着られると言い聞かせて買ったコートを羽織ったら私の身支度は完成。 それは

誰もが使える美しくなるための魔法

「もしも私が整形するとしたら、どこをどうすれば良いですか?」 とある美容整形外科の院長に取材をした後、世間話のついでに興味半分でそんな質問をしたことがある。すると、彼はこう答えた。 「正直言ってしまうと、君は整形をする必要はない。そりゃあ、このパーツをこうすることで美的に整うだとかそういうのはあるし、もっと綺麗になりたいのなら幾らでもやりようはあるけれど、君は自分の良さを引き立てるメイクや髪型を理解しているし、自然な表情や雰囲気を自分のものにしている。結局、そういうのが何

私だけのプレイリスト

iPhoneのミュージックアプリを開けば、そこには私だけの宝物がある。「それ」は、うんと昔ならカセットテープだった。そして時代が進むごとにいつしかMDやCDに姿を変え、今やプレイリストという形になった。 誰かが私のことを考えながら選んでくれたり、自分のお気に入りだったり。「あの不便さが愛おしかった」と思うことは無くも無いけれど、カセットにしろプレイリストにしろ、他とは違う特別な曲が特別な思い出と共に収まることに違いない。 先日資生堂から新ブランドが発表、発売された。その名

チャームポイントに匂わすアイデンティティー

「華奢って云うのは身体が細いとかじゃなくて、首と二の腕が細いことだと思う」 男はある時そう言った。首と二の腕が細くないと幾ら細くても華奢だと思わない、と念を押すように繰り返しながら。 首すじ、うなじ、横顔のシルエット。幸い私は自分の身体の中でも首元は割と好きなパーツで、骨一つ分長いせいで捻挫をしたことがあればストレートネックのリスクもあるけれど、自分にとってのチャームポイントだと思っている。だからこそ、その言葉が妙に嬉しかった。 最近髪をばっさり切った。顎よりももっと短

一枚越しの官能

フォーガルのタイツやパンティーホースに脚を通す毎に、私は官能という言葉を思い出す。まるで自分以外の柔らかな皮膚が吸い付くかのように、私の脚を包み込む。カシミヤのタイツはもちろん、30デニールのオペークまでもが例外無く、私を夢見心地にしてくれる。 素足の季節を終えると、私はまず足元から秋支度を始める。毎年少しずつこつこつと買い集めたレッグウェアを整理し、その年はどんなファッションを愉しもうか思いを巡らせる。レッグウェアを買うようになってから、私は購入する洋服の数がぐっと減った

「おしゃれ」より「ダサくない」が難しい

誤解を恐れずに言うと、「おしゃれ」になるということはそれほど難しいことではないと思う。 最も手っ取り早いであろう手順を述べればこうだ。書店に行き、自分がおしゃれだと思ったファッション雑誌を買い、自分が一番気に入ったコーディネートをそのまま真似をすれば良い。それをある程度続ければ、人からはおしゃれな人だと評価され、そのジャンルで突出しているブランドに関してもそれなりに詳しくなるはず。 然しながら、そんな風に手に入れた「おしゃれ」は往々にして何処か薄っぺらかったりもする。私は

わたしのためのストローハット

帽子はかぶり慣れるまでが問題だ。どんなにコーディネートとぴったり合わせても、その日の装いを帽子主体で考えたって、家を出る直前に気恥ずかしくなって頭から外してしまえば、それでおしまい。 帽子というアイテムは、アイウエアとよく似ていると思う。顔の一部を隠すことで見えている箇所を一層魅力的に見せてくれるという点や、スタイルを少しばかりドラマティックに仕立て上げてくれるという点に於いて。 しかしながらそれらはきっと、気恥ずかしさという弱点とも表裏一体で、気取っている、とか、ナルシ

運命の赤い口紅

赤いルージュを塗っていると、時々言われる。「私も赤い口紅に憧れるけれど、勇気がなくて」と。その言葉を聞く度に私はいつもこう答える。 「大丈夫、運命の赤い口紅に出会えたならば、その不安もきっと杞憂に終わるよ」 今昔問わず映画に出てくる麗しい女優たちは皆はっとするほど美しく赤いルージュを塗りこなしている。雑誌のインタビューを読めば、スタイリッシュなモデルが普段のメイクについてアイライナーと赤いルージュをさっと塗るだけだと答える。恐らく、いい女の象徴は今までもこれからも、きっと

私の丈、あなたの丈

洋服を買う時に誰もが気にすること。それはきっと自分にとって好みのデザインかどうか、或いは自分にとって親い色であるかどうかということだろう。 だけれど洋服を着こなすにあたって、もう一歩踏み込みたいならば、見に纏うものの「丈」について注意深く観察してみたい。 私は、誰しもが「黄金の丈」を持っていると思う。それはまるで、腕を通した瞬間に顔色をぱっと明るく見せてくれるパーソナルカラーのように、その人の持つ空気を一番素敵に見せてくれるもの。丈というものは、3センチ間違えば途端に幼く

あなたのルブタンは美しいですか

言わずもがな、クリスチャン・ルブタンの靴はとても美しい。 正面から見ると黄金比率の美女の顔のように寸分狂わず整っているし、横から見た時のヒールのラインは近代的な高層ビルや空気が澄み切った森の針葉樹を思わせる。後ろ姿だって裏切らない。決して手に入らないファム・ファタールを追うような気持ちを掻き立てられるのに、いやらしい媚は微塵も無い。 足を入れても抜群に良い。全体重を委ねた瞬間、足首の周りの細い筋肉たちが一気に引き締まるのを感じ、甲はなだらかな丘の様に盛り上がる。これ以上素