一枚越しの官能
フォーガルのタイツやパンティーホースに脚を通す毎に、私は官能という言葉を思い出す。まるで自分以外の柔らかな皮膚が吸い付くかのように、私の脚を包み込む。カシミヤのタイツはもちろん、30デニールのオペークまでもが例外無く、私を夢見心地にしてくれる。
素足の季節を終えると、私はまず足元から秋支度を始める。毎年少しずつこつこつと買い集めたレッグウェアを整理し、その年はどんなファッションを愉しもうか思いを巡らせる。レッグウェアを買うようになってから、私は購入する洋服の数がぐっと減った。そんなに欲しなくなったのだ。どうやら似たような服ばかりを買ってしまいがちな私の場合、自分にとって定番色のニットや一見違いが分からないスカートを買い増すよりも、品の良いテキスタイルやユニークな網タイツを投入する方が、ずっとコーディネートに減り張りを与え、愉しむことが出来るらしい。
もちろん私が愛するレッグウェアはフォーガルばかりでは無い。ウォルフォードの品の良いエキセントリックさは、ここぞという時に存在感を発揮してくれるし、エミリオ・カバリーニのチャーミングさも抜群のスパイスになる。そりゃあ毎日フォーガルやウォルフォードで過ごせれば良いけれど、残念ながらそういう訳にもいかない。そんな時に好ましいのがアメリカン・アパレル。安価な割に洗練されているので、気に入ったものはまとめて買うようにしている。
だけど、フォーガルやウォルフォードは流石に素晴らしい作りだから、驚くほど駄目にならない。タイツに至っては大切に履いていれば軽く数年はへたらないので、思い切って買ってしまえば、結果安い買い物だと思えるかもしれない。
ちなみに私はプレゼントにフォーガルを頂くと、飛び跳ねる程喜んでしまう。黒い無地のものは日々大切に愛おしんで履くし、自分ではなかなか買わないようなレースのものもタイミングを見計らって、ジュエリーを纏うように身に付ける。
この悦びはなかなかの強度だと気付いて以来、私も女友達にフォーガルをプレゼントすることが増えた。自分ではなかなか気軽に買えないからこそ貰うと嬉しいものを大切なお友達に差し上げる、女としての愉しみの一つに、なかなかおすすめです。
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