風水は命がけ、生きるか死ぬか、国家機密だった
①死と隣り合わせ
コロナの世界全体の感染者数が、
5億3000万人となり、
感染による死者数が630万人に
なりましたね。
いま世界中で、コロナが拡大、多くの人が
生死と隣り合わせになっています。
現代の我々は、死ぬこととは縁遠かった
わけですが、古来は、死とは常に隣り合わせ、
日常茶飯事でした。
古代の中国を、見てみましょう。
②古代中国の風水師
当時の風水師は、皇帝にのみ、仕えていました。
そして、皇帝の墓の場所、首都の場所、
戦いの場所などの国を左右する重要事項の決定に、
大きな影響力を持っていました。
さらに首都の決定または 墓の設営、皇帝の
長男誕生の場所も、
風水師によって決められていました。
また、その後、秘密を守るために関わった
風水師を殺した、ともされています。
自分以外の新しい皇帝を、生み出させない
ためでもあります。
つまり、風水師でさえ、死とは隣り合わせ。
だからこそ、その当時の風水は
「一子相伝(いっしそうでん)」、つまり
一人の子にだけ、しかも長男のみに
受け継がれていた、と言います。
エジプトでは、王の次に権力を持つ神官が、
中国の風水師のようなもので、
死とは隣り合わせでした。
王の交代や、ピラミットの建設でも、
秘密を守るために関わった神官を殺した
ことがあったようです。
そう考えると、どこの国でも、同じことを
考えているものですね。
つまり、生死は隣り合わせ、明日の命も
分からなかったのです。
現代に生きる我々は、ほんと幸せです。
③風水の確立は戦国時代
そもそも風水は、古代中国において紀元前
400年頃には、すでに確立していました。
その時代は、戦国時代です。
戦いに敗れた側の中に、もし生き残ったもの
がいれば、成人して自分の命を狙いかねない、
という不安が常にありました。
そのため、敵は「一族郎党皆殺し」だったのです。
たとえ乳飲み子でも、容赦がありませんでした。
こうなると、何が何でも勝たなくては
いけませんでした。
そこで、風水が用いられます。
現代のように、気楽ではなかったのです。
日本は、「平和ポケ」と言われて、久しいですが、
最近、コロナでやっと、危機意識が芽生えています。
しかし戦国時代は、毎日が危機だったのです。
生まれたことのありがたさ、生きてることの大切さ、
生かされていることの大切さ、
我々は、もっともっと、感謝しないと
いけませんねえ。
④日本の風水、国家機密
さて、日本の風水は、どうだったのでしょう。
いまから1300年以上前、古代日本において、
官職の1つとして確立されたのが、
「陰陽師(おんみょうじ)」、風水のルーツです。
風水と同じ、陰陽五行の思想に基づいた
「陰陽道」によって占いや
地相などを行っていました。
また宮中(きゅうちゅう)において建築を行う
際の吉日選定や、土地・方角などの
吉凶を占うことで、遷都(せんと)
の際などに、重要な役割を果たしました。
たとえば、長岡京から平安京への遷都です。
遷都はまさに、風水そのものです。
そして後には、占術(せんじゅつ)・呪術
(じゅじゅつ)・祭祀(さいし)全般を、
陰陽師がつかさどるようになります。
9世紀初頭の平安時代初期まで、陰陽道は
「国家機密」として管理されていました。
古代中国と一緒ですね。
⑤陰陽師と陰陽道
また、政治運営や人事決定から天皇の譲位
に至るまで、多大な影響を及ぼしました。
後に10世紀に入って、賀茂氏と安倍氏の
2家による、独占世襲が見られるようになります。
そして映画にもなった、有名な
「安倍 晴明(あべの せいめい)」の登場です。
中世以降は、主に各地において民間で
個人的に、占術・呪術・祭祀を行う者も出てきます。
現代において陰陽師は、民間で私的祈祷や
占術を行う、神職(しんしょく)の一種として
定義付けられています。
しかし、元々は風水のルーツ、日本の
陰陽道は中国と同様、
国家機密として管理されていました。
つまり、最重要事項だった、そのことを、
忘れてはいけませんね。
⑥最も有名な陰陽師と神社
さて、今から1000年以上前、平安時代の
最も有名な陰陽師の一人が、安倍 晴明です。
平安貴族たちの信頼を、一心に受けた
大陰陽師で、その事跡(じしょう)は神秘化されて
数多くの伝説的逸話を生んでいます。
85歳で亡くなられた後、「稲荷大神」の
生まれ変わりであるということで、
当時の天皇の指示によって、晴明神社を
創建されました。
安倍晴明を祀る神社は、京都の屋敷跡に
建てられたという「晴明神社」や、
生誕地の大阪市阿倍野区に建てられた
とされる「安倍晴明神社」など、
全国各地に存在しています。
私も、何度も参拝しています。
⑦命を守る星型マーク
その晴明神社の神紋(しんもん)は、晴明桔梗
(せいめいきっきょう)ともいわれる、五芒星。
つまり、星型マークです。
安倍晴明が創った独特のもので、陰陽道に
用いられる祈祷呪符(きとうじゅふ)の一つです。
天地五行(木・火・土・金・水)を象徴した、
宇宙万物の除災清浄(じょさいせいじょう)を表します。
厄除・開運を願い、
身に付ける風習が各地にあります。
西欧諸国にもこれが広まり、ギリシャでは
ペンタグランマと称され、
各国の軍隊にはこの星を「弾丸除け」
と信じ使用したそうです。
日本の陸軍将校の帽子の天部(てんぶ)にも、
この紋が縫い込まれていました。
ものすごい、影響力ですね。
どちらにしても、命がけだったのです。
そして現在、われわれは違う意味の脅威、
コロナと戦っています。
中南米とアフリカでは、世界平均を超える
スピードで感染が拡大しています。
改めて、祖先のことを考えてみましょう。
様々な危機を乗り越えてきた、膨大な数の
ご先祖様がいたからこそ、今の我々は存在します。
我々も必ず、試練を乗り越えられます。
子孫のためにも、今を感謝しつつ、
しっかり健康を維持し、
生き延びていかないといけません。
建築家・風水師 江口 希之