
【こんな映画でした】909.[恋愛日記]
2022年12月 1日 (木曜) [恋愛日記](1977年 L'HOMME QUI AIMAIT LES FEMMES THE MAN WHO LOVED WOMEN フランス 118分)
フランソワ・トリュフォー監督作品。原題のフランス語の意味は、英訳そのものと同じようだ。「女性を愛した男」ということ。たしかにそうだった。たくさんの女性が出てくる。墓地でのベルトランの埋葬シーンに現れた女性は20数人いたようだ。
女性なしでは一日も生きていけない。しかし、結婚した固定した人間関係は持てない。女性が好きだと言っても、それは顔ではなく、「脚」なのである。スカートの下から見える女性の脚、そしてハイヒール。この映画の中で、そのようなシーンが相当数ある。
このようなベルトランの人間観・女性観は、映画で見る限り、彼の母親の影響のようだ。夫がいながらではあるが、彼女は男性を取っ替え引っ替えしていたようだ。その記録としてのメモや写真があった。彼も同様のことをしている。引き出しの中にはいっぱいの写真。手帳には女性の電話番号が。
彼の最期は、やはり街中で女性を漁りながらの交通事故であった。彼らしい最期である。もっとも即死ではなく、入院。しかし追い打ちをかけるように、そのベッド上で看護婦の、やはり脚に見とれて思わずベッドから起き上がろうとして輸血用の器具が外れ、死んでしまうことに。
そして葬儀であるが、弔問客は女性のみであった。棺の上に土をそれぞれがかけていくシーンでは、カメラは下から女性の脚を映しだしていくものだった。なおこれがオープニングシーンで、ラストシーンは脚ではなく彼女たちの上半身を順に映していくものだった。
ラストのテロップの流れるシーンでも、まだしつこく女性の膝から下の脚の行き来を映し、重ねて彼の著書の背表紙を何冊も並べたものとを映しだしていた。その最後の最後は、まるでドミノ倒しのように立てられていた本が、左から右へとバタバタと倒れていく。
このベルトランを演じたのはシャルル・デネ(撮影当時51歳)、1957年の[死刑台のエレベーター]・[Z](1969)・[流れ者](1970)に出ていたようだ。女性からしたら何とも言えない魅力があるのだろう。見事なキャスティングだ。