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【こんな映画でした】901.[エビータ]

2022年11月14日 (月曜) [エビータ](1996年 EVITA アメリカ 135分)

 アラン・パーカー監督作品。この監督による全14作品中、10作目となる(あとは手に入りにくい)。こんな映画だったのか、と。一つは女性政治家が主人公であること。もう一つは全編、セリフは歌われているということ。かの[シェルブールの雨傘]のように。

 主人公エバ・ペロンをマドンナ(撮影当時38歳)、狂言回しのチェをアントニオ・バンデラス(撮影当時36歳)。現実の政治をそのまま描くとしんどいことになるが、それを歌に乗せて、つまりミュージカル仕立てでというところが良い。

 彼女は理想主義者だったのか、はたして現実主義者だったのか。以下は108分頃からのエバ・ペロンと狂言回しのチェとの掛け合いで歌われる内容である。

 私は古い世界を変えたわよ....私は貧しい人たちに奇跡を味わってもらいたいの。悪というものはいつの時代にも存在する。政治システムがどうであろうとも。正直な手段で目標を達する確率はとても低い。罪を認めて勝つ方が、栄光の敗北よりずっとマシ....
 教えて、誰が喜ぶかしら? 私が世界の難題と取り組む? 戦争? 汚染? 解決は不可能。たとえ私が100歳まで生きてもね。
 悪というものはいつの時代にも存在する。政治システムがどうであろうとも。それが不満なら、政情不安の国へどうぞ。怒りの改革を志すがいい。でもこの国ではお断りよ。

 何でも捧げるは、あと100年生きられたら。でも私の肉体は朽ちてゆく。日一日、少しずつ。ああ、創造主よ、なぜです? 鋼鉄のように強い意志を持っていて、それを包む肉体が崩れてゆく。それは致命的な欠陥、そうでしょう?

(ラストシーン、死の床で)私の選んだ道、私が選んだ生き方....燃え尽きる生き方もその一つ。時間を選ぶ道もあったかもしれない....私は生きた、光に導かれて。

 ブレヒトの『ガリレイの生涯』でガリレオは、弟子アンドレアの「英雄のいない国は不幸だ」というのに対し、「英雄を必要とする国が不幸なのだ」と答えたそうである(孫引)が、まさしくその通りであろう。独裁政治や寡頭政治のように、英雄的な人間がやった方が上手くいくという考え方もあるだろう。

 しかし実際は迂遠なようで、みんなでやっていくのが良いのだ。効率は非常に悪いだろうが。ただそのやり方を簡単に「民主主義」という言葉では表現したくない。いまやその「民主主義」は.…。

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