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【こんな映画でした】990.[TAR/ター]
2023年12月15日(金曜) [TAR/ター](2022年 TAR アメリカ 158分)
トッド・フィールド監督作品。女性指揮者リディア・ターをケイト・ブランシェット(撮影当時52歳)。栄光と転落、それも悪意による失墜。ただラストシーンは、フィリピンのどこかで立ち直るべく指揮台に立っているシーンである。何と、モンスターハンターのコンサートである。
観ていて疲れる映画である。それは人間の悪意の凄まじさをひしひしと感じるからだ。それぞれが栄誉・名声を求めて、その獲得のためには何でもやる、といった内容だからだ。現代的なのは動画を隠し撮りし、編集して悪意の塊としたものをネットにあげる。事実はどうでもよく、そのネット上の捏造されたものだけで人々は判断することに。恐ろしい社会になっていることを改めて知る。
よほどガードを固めておかないと、悪意の前には普通の無防備な人間は簡単に餌食になってしまう。ここでは一応名をなした指揮者であるが、それでも陰謀の前には屈することになる。誰がいったい味方をしてくれるのか。彼女の場合、助手のフランチェスカに裏切られ(副指揮者に抜擢されなかったためであろう)、パートナーにも裏切られ、というわけである。
絶望しかないところだが、彼女はそこから立ち上がっていくことになるようだ。しかし、もとの地位に復帰することはまず不可能であろう。それでも音楽に、芸術に奉仕するために彼女は生きていくのだろう。
言うまでもないが、ケイト・ブランシェットがマーラーの交響曲第五番を指揮するシーンは凄い。見事だ。練習風景ではあるが。というか遂に、ターには本番が訪れなかったわけである。