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【こんな映画でした】862.[真夜中の虹]

2023年11月 8日(水曜) [真夜中の虹](1988年 ARIEL フィンランド 73分)

 アキ・カウリスマキ監督作品。アマゾンプライムで。トゥロ・パヤラ(撮影当時32歳)が失業した坑夫、結婚することになる女性をスサンナ・ハーヴィスト。脱獄の仲間をマッティ・ペロンパー。彼は[レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ](1989年)ではマネージャー役であった。

 ともかくフィンランドは貧しい。労働者が貧しい。そして失業しても職がない。もう絶望的なほど陰鬱な社会である。いまの北欧三国の福祉国家というイメージはない。

 オープニングシーンは、鉱山の閉山シーン。労働者たちが解雇されて、散り散りになっていく。主人公はもう一人の男性とカフェで最後の別れをしている。彼はその乗っていた車をやる、と言ってチラッとピストルを見せ、トイレに消える。しばしの静寂(おそらく最後の躊躇であろう)の後、銃声。トイレに見に行く。やはり、自殺している。その遺体は撮さない。

 概してこの監督の描写では、その結果の映像を見せない。[マッチ工場の少女]でも被害者を映し出さない(だから、死んだのかどうか不明)。分かりきったことは描写しないということだろう。だから映画の尺も比較的短いのだ。

 この車に乗って、彼は南を目指す。しかし仕事はない。銀行から下ろした金は、二人組の泥棒に途中で盗まれる。と、どこまでも不運の連鎖である。そこに現れるのが子持ちの離婚した女性。彼女がきっかけとなって幸せの兆しが見えかけるのだが、.…そうは簡単にいかない。

 職探しの途中で見つけた泥棒の一人を追いかけ、殴り倒したところで、警官に逆に捕まり、懲役刑に(約二年)。このあたりはアメリカ映画でもそうだが、理不尽そのものである。きちんとした捜査などせずに捕まえられてしまう。監督による批判でもあろう。国家というのは、そういうものなのだ。

 彼女と結婚したいとの思いから脱獄を図ることになる。同室の38歳の殺人で服役している男ミッカネン(これがマッティ・ペロンパー)とともに脱獄。偽造パスポートを入手するために、金作りとして銀行を襲う。ここも銀行に入るシーン、インターバル、そして出てくる。というだけで表現している。

 案の定、偽造パスポートがらみでミッカネンが刺されることに。結局、母子二人との三人で原題の「アリエル号」に乗船しようとするところで映画は終わる。その先は分からない。なおここでも子役(男の子)が良い感じであった。犬は出てこなかったか。

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