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【こんな映画でした】881.[卒業]

2023年 6月26日 (月曜) [卒業](1967年 THE GRADUATE アメリカ 107分)

 マイク・ニコルズ監督作品。2回目。半世紀ぶりに観ることとなった。ブルーレイディスクで。オープニングシーンからして、まったく覚えていなかった。封切りされてから、一度は観ているはずだが、記録がない。その後VHSを購入していたが、ついに観なかった。

 オープニングシーンのベンジャミンが飛行機から出てくるシーンで、早くもあの有名なメロディーラインが流れ出す。ブルーレイディスクのせいで、音質も良い。「スカボロフェア」とか「ミセス・ロビンソン」とかも、音楽を聴いているだけでも良い。

 予告に使われていた有名なシーンもさることながら、カットバックなど撮り方にも唸らされた。上手いものだ。なるほどアカデミー賞の監督賞ということにもなるのだろう。

 ラストシーンは、バスに乗り込んだ二人の表情。男はホッとして楽観的に見える。女はこの先の不安を少し過ぎらせているようにも見える。ま、しかし教会からの脱出劇は見事なものだ。

 俳優を見ていくと、ダスティン・ホフマンが撮影当時29歳で、やはり役柄の21歳にはちょっと見えにくい。エレイン役のキャサリン・ロスも撮影当時27歳で、役柄の二十歳前の大学生には見えない。アメリカ映画はこういうところをあまり気にしないのかもしれない。実年齢の役者にやらせるのは難しいのかもしれない。

 そしてミセス・ロビンソン役のアン・バンクロフトである。撮影当時36歳。役柄では大学生の娘の母親であるから、40歳代とおもって観ていたが、実年齢でも可能だろう。老けて見えたが、そういうメーキャップだったのかもしれない。

 さて問題は、このミセス・ロビンソンがどうしてベンを誘ったのか? そしてベンは彼女との「情事」を単に「握手」のようなもの、とその夫に表現・釈明したのか?

 おおざっぱに言えば、ミセス・ロビンソンは車(フォードだとベンが聞きだしていた)の中でのセックスでエレインを妊娠したようだ。そしておそらく不如意な結婚をしたのではないか。娘の成長を見るにつけ、夫との関係が冷えきっていってたのであろう。その性的な欲求不満が原因とも、一つ考えられる。

 対してベンの方は、子どもの頃から知っているミセス・ロビンソンに対して性的な感情を持っていたとは考えられない。ではその数カ月に及ぶ密会は、儀礼的な「握手」程度のものだったのだろうか。まだ21歳の性的に盛んな時代に、手近なところでそれを発散させようとしていたのかもしれない。その頃のベンは大学を卒業はしたものの、虚無的な無為の日々を送っていたわけである。その時間つぶしにはもってこいだったのかもしれない。とまれ性欲と愛情との違いが理解できていたのであろう。

 そしてやがてエレインが登場する。ミセス・ロビンソンは本能的にベンがエレインを好きになると直感し、彼女とつきあうなと厳命する。しかしベンの両親の勧めでデート。やはり二人は愛し合うようになっていく。

 ここからミセス・ロビンソンの逆襲が始まる。まず彼女はベンによって酔った状態でレイプされたと娘エレイン(と夫にも?)に告げる。彼女はショックを受けて大学のあるバークレーに戻る。つまりベンは引き離されるわけだ。

 このあとはベンがエレインを追いかけてバークレーに行き、ストーカーのようにつきまとうことに。エレインにはもうフィアンセがおり、まもなく結婚することに。ただエレインはベンに思いを残したままのようであることが分かる。

 そしていよいよその結婚式のシーン。玄関の鍵は閉められており、彼は二階へ上がる。そしてガラス越しに絶望的な叫び声をあげる。気がついて振り向くエレイン。ベンの方へ走り出す。玄関前でエレインはミセス・ロビンソンに平手打ちを食らい、父親とフィアンセは怒りの表情を見せる。

 十字架を振りまわして撃退して、二人は玄関から飛び出す。開かないように十字架をドアに掛けて。走って、行き過ぎようとするバスを止め、乗り込む。いちばん後ろの席に腰掛けホッとした様子で......と。

 この先がどうなるかは分からない。ともかく大事なのは、好きでもない人と結婚するのは良くないということ。その逆で、何があっても好きな人とは結ばれるように努力すべきだということだろう。

 やはり上手い作り方であり、青春ものの名作としてこれからも残っていくことだろう。音楽も抜群であるので。

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