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遠雷、そして嵐の予感「オーバーフェンス」について

遠雷が聴こえ、嵐の予感がする映画でした。函館の短い夏、職業訓練校に通う男と水商売の女、もう若くはなく可能性も希望も擦り減った2人が出会う話です。

オダギリジョーと蒼井優の表情たるや

「こっちへ来て」と綱を引いてみせる女のパントマイムが男の乾いた心に雨を落とし、鳥の求愛を真似る女の横顔が凪だった男の感情を波立てるのが見えるようです。

もう、ホントにたまらない表情で、この表情だけのために何度でも観たいと思えます。あらためて、映画の大きな魅力はやっぱり役者さんだなぁと実感するのでした。

原作の遠雷が聴こえる

原作は没後に再評価と映画化が進んだ佐藤泰志の短編小説。出会いは日常生活のなかで起こり、問題を抱える彼らの”心”は簡単には結びつきません。劇的な直上の雷というよりは遠雷、そしてこれから来る嵐の予感にザワザワするのです。

そんなクレッシェンドな原作の魅力を忠実に映画化した山下敦弘監督に拍手喝采です。 印象的で深い余韻のあるラストに向かう本作、是非どうぞ。

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