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鳥居みゆきが未診断でADHDを自称するのは許されるか?

日テレの「上田と女がDEEPに吠える夜」という番組でADHDが取り上げられ、ADHD当事者のゲストとして漫画家の沖田×華・元アナウンサーの小島慶子・芸人の鳥居みゆきが出演したそうですが、他の2名と違い、鳥居みゆきだけは診断を受けていないにも関わらずADHD当事者として発言していたそうです。
今回は「未診断の芸能人が発達障害(ASDやADHD)を自称する問題点」について考えてみます。


何が問題か

自己診断が間違っている可能性がある

ネットニュースによると、番組では
「確実に診断されたわけではない」
「診断されたら(ADHDの要素が)あるだろうなってもう分かっている」
「困っていることがあまりないので、診断しないという道を選んだだけ」
と言っていたそうです。

当たり前ですが鳥居みゆきは医師免許を持っていません

だから素人が自己診断して勝手に完結してるだけです。

困りごとがないのなら障害の程度としては小さい訳だからADHDグレーかもしれないし、むしろASDがメインだったり、別の病気を併発しているかもしれない。

それを判断するのは難しいし、専門家が診て検査をしないとわからないでしょう。

だから彼女はADHD当事者ですらない可能性があります。
それなのに当事者としてゲスト出演するのはおかしいでしょう。

ゲストがADHDを自称する以上、視聴者は「医者の診断を受けた人なんだな」と思って観る訳ですから、その前提をクリアしていないなら詐欺ですよね。

もし「芸能人が自己診断で発達障害を自称する」ことが許されるなら、しょっちゅう炎上している芸人が「自分は空気読めないんスよ、だからついやらかしちゃうんですよね~。医者には行ってないですけど自分は絶対ASDです」と自己ブランディングし、ASDの偏見をばら撒くことも可能になってしまいます。

私はそれを恐れています。

視聴者が発達障害を軽く考える可能性がある

もし鳥居の自己診断が間違っていた場合、「当事者」として発言の信頼性が揺らいできます。

鳥居は番組で「自分を信じていないので、2時間前行動。電話も苦手なので、台本を書く。こういう要件なら、こう言おうとか…」と特徴を挙げていたそうです。

これってADHDの特徴なのでしょうか?
ただの「苦手なこと」への対策を挙げているだけですよね。

時間に遅れがちだから早めに行動する。
電話が苦手だから言うことをシミュレーションする。

別に「普通」ですよね。

しかも鳥居は番組で
ADHDを免罪符にしてはいけない。自分で迷惑をかけない対策や努力が必要
なんて立派なことを言ったそうです。

すると、これを聞いた視聴者はこう思う可能性があります。

「なんだ、ADHDって大したことないんだな」

自分で対策や努力すれば何とかなる程度のものなんだ」

「じゃあ周りに迷惑をかけているADHDは努力してないってことだな

本当にそうでしょうか?
私はTwitterで発達垢を作って、いろんなASD・ADHD当事者の人のつぶやきを毎日見ていますが、そんなカジュアルな話ばかりではありません。

本当に困っていて、何とか工夫・努力して、それでも迷惑をかけてしまってどうしよう、と悩んでいる人をたくさんみかけます。

芸能人が変にカジュアルに発言することで、実際に困っている当事者を苦しめかねないということを想像して欲しいですね。

診断を受けない理由が「ビジネス」である

誤解しないで頂きたいのですが、私は「少しでも発達障害の可能性があるなら絶対に医者に行くべきだ!」と言っている訳ではありません。

自称するなと言っているのです。

さて、鳥居みゆきが医者の診断を受けないのは、番組では「困っていることがあまりないから」としていましたが、過去のネットの記事を見るとビジネスが理由であることがわかります。

――ご自身で、発達障害などについて診断を受けてみようとは思ったことはありますか?
鳥居:私が病院に行ったら何かしら診断がされることは分かってるんですけど、もし「こういう発達障害でした」と発表したら「鳥居って変だな」って言われなくなっちゃう。「発達障害だからイジるなよ!」となると思うから、私は診断はいらないです。自分の中で折り合いをつけて病院に行きたくないなら行かない、行きたいなら行くという風に考えられたらいいなと思います。

女子SPA!

“あえて診断を受けないのは、今は許容されない世界だから
お笑いの世界に入ってから、生きるにおいてマイナスだと思っていたことがプラスに転換できるというか…変を個性として捉えてもらえるようになったので、生きやすくなりました。でも、面白いって笑えたことも、今の時代だと笑っちゃダメだということもあるのかな? 例えば…私の場合だと、もし自ら受診して発達障害と診断を受けたら、もう誰もいじれなくなると思うんですよね。「変」を笑えなくなっちゃう。それもわかっているから診断は受けに行きません。それは自由でしょ?と思いますし。

STORYweb

──立ち入ったことをお聞きしますが、鳥居さんはこれまで発達障害と診断を受けたことはありますか?

ないですよ。だって、もしも発達障害と診断されたら、誰も私のことを不思議とか変な人って言わなくなるし、言えなくなるじゃないですか。診断を受けないのは私がそう選んだからで、今のままが楽なんです。

でも、病院に行ったら発達障害と診断されるんだろうな。世間に「鳥居は変わってる」と言われなくなったら受診します。

ジョブメドレー

私はこれらを読んだとき、「えっ、そんな理由?」と驚きました。

まとめると
・自分は芸風として「不思議」とか「変な人」というキャラクターでいる
・もし発達障害と診断されたら「変な人」といじれなくなる
・だから診断を受けない
だそうです。

要は「自分の芸風が潰されて仕事ができなくなるから」というビジネス的な理由です。

芸人の仕事の都合なんて知ったことではありませんが、もし発達障害と診断がついていじりにくくなるのであれば、その芸が時代にそぐわなくなったというだけじゃないでしょうか?

もともとデビューしたて頃のネタはギリギリを攻めた芸風だったし。

でも、別に「(ビジネスに支障が出るから)診断はいらない」「診断を受けない」のは何も問題ありません。

だったら自称するなという話です。

番組では「ファッションADHD」についても取り上げていたようですが、正直なところ鳥居みゆきこそ「ファッションADHD」に該当するでしょう。

お前や

「変なキャラ」は維持したいから診断は受けない、一方で発達障害を自称して発達障害関係の仕事はもらう。

確かに「今のままが楽」でしょうね。

「ADHDを免罪符にしてはいけない」とかカッコいいこと言う前に、芸人を免罪符にしてADHDを自称しないでください。

擁護派への反論

ここではネットで見かけた鳥居みゆき擁護派への反論を書いておきます。

番組では良いことを言っている

「番組では二次障害や本人の努力・工夫について語っているからためになる」そうですが、未診断でADHDを自称して良い理由にはなりません。

自分の苦手なことを理解して工夫しているから偉い

そうですね。
でも、未診断でADHDを自称して良い理由にはなりません。

発達障害関連の資格を持っているから自己診断は正しいはず

鳥居が持っているという「児童発達支援士」「発達障がいコミュニケーションサポーター」という資格について、少しググってみたところ、

・「人間力認定協会」という素晴らしい団体の民間資格
・児童発達支援士を受験するには試験料(税込4,070円)の他に受講料(税込37,400円)が必要
2資格の合格率は「90%」程度

ということがわかりました。
これらの資格の価値がどの程度かは…

たとえ公認心理士であっても診断行為はできません。
持っている資格が何であろうと、医者でなければ自己診断の信頼性はないです。
だから未診断で自称しないでください。

困ってないなら診断は受けなくていいのでは

もちろん診断を受ける・受けないは個人が困っているかによります。
そして診断を受けないなら自称しないでください

芸能人が発言することで発達障害について知ってもらえる

診断を受けた当事者ならOKです。
未診断のファッションADHDが当事者面するのは迷惑です。

まとめ

以下が今回の結論になります。
・自分の苦手なことを理解し、工夫・努力することは素晴らしい。
・持ってる資格は医師免許でないならどうでもいい。
・発達障害の診断を受ける・受けないは個人の自由。
 その理由が「特に困っていないから」でも「ビジネス上支障が出るから」でも構わない。
自己診断でADHDを自称し、当事者として発言するのは許されるべきではない。

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