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官能私小説 雪色の美少女(7)


は じ め に

ここに執筆するのは、今までの創作内容と一線を画しています。そうかといって、「暴露本」や「告白本」のような体験本とも違います。
 くわえて、想像力や過去の官能作品からのイメージをなぞって書いていた内容とも、まったく別物ということです。個人的には、創作内容は他者に伝達したいメッセージがあり、何かしらの形で織り込むことだと思っています。
 今回やろうとしているのは、記憶の断片をトレースして、まとめ上げていく作業のような内容です。そのため、途中で走り書きのような形でとん挫する可能性もありますし、無事に何かしらの形としてまとまったからといって、メッセージ性があるかどうかは、読者に委ねる形になります。
 その点をご了承いただいた上で、ご覧くだされば幸いです。

雪色の美少女(7)

スターライトのママの話がすべて真実ではないとしても、毎日のように肌を重ねていた少女がこの世と一線を介する存在としたら……。
エアコンが十分効いているはずの部屋のベッドは、いやに冷たく感じられた。何をしても消え去る気配のない寒さというのは、残念ながら存在する。

その日の夜、彼女はいつも通りやってきた。わたしは舞が何をしようとも頓着しない性格だったので、ベッドに潜り込んだ。可愛らしい顔を少しかしげて、部屋に入ると、隣のベッドに腰を下ろす。

最初に会った頃より、わたし自身、強烈な疲労感を感じないようになっていた。舞の表情を見ると、生霊だろうが雪女だろうが、どっちでもいい気になってしまうのだ。そう、初対面のときから気の置けない相手という位置づけになっていた。

ただ、彼女の方はいささかいつもより緊張しているように見えた。
(どうして、俺じゃなくてお前が緊張するんだよ!?)
そわそわする幽霊など、見たことも聞いたこともない。幽霊説で洗脳しようとするママにわたしは少々腹を立てた。

「ねえ、電気を消してくれないかしら?」

 久しぶりに舞の声を聞いた。ふわふわと柔らかく耳の奥をくすぐるような音圧は心地よい。普段、最小限の灯りをいくつかつけていたが、それを消してしまうと真っ暗闇になってしまう。
 黙って相手にしないでいると、

「今日は満月みたいなのよ。ねえ、お願い……」
「うん、わかったよ……」

 その日は珍しく雪が降りやんでいた。綺麗な月の光が十階の部屋の隅々まで照らしてくれる。周囲に高層建物はない。彼女がカーテンを開けると、ベッドからでも月が見えた。

 舞はいつものように服を脱ぎはじめる。ブラジャーは珍しくフリルがあしらわれたもので、ショーツもお洒落で可愛らしいデザインを穿いていた。その姿になるまでの仕草や身体のうねりは、いつもより生々しく映る。

(雪の色の少女か……)

 服を脱ぐときの繊維の摩擦音、ちらっとこちらを見る彼女の柔らかな眼差し、無防備すぎるバストとヒップの肌の露出、部屋を満たす彼女しか持ちえない甘い匂い、すべてがわたしの心の奥をトントンとノックする。

 わたしがそれでも彼女に一線を超えた関係を求めないのは、現実であれ、幻想であれ、相応の代償を支払うときがあるような気がしたからだ。根拠はどこにもない。ひとりの人間としての勘だった。

 眠りにつくべく、目を閉じる。もし、彼女が自分のような三下男を求めるときはどうしようかな、などと馬鹿馬鹿しい妄想に耽っていると、聞き慣れない音が耳朶をうつ。

 まさかな、と思いつつ薄目を開けた。

 舞は悪戯っぽい微笑みでこちらに視線を送りつつ、背中を向けてブラジャーのバックホックを外した。これまでの少女の姿ではなく、明らかに大人のオンナらしい官能が漂っている。

 予想外の展開に、わたしは少なからず動揺して、トレーナーのチャックを上げたり下げたりしはじめた。彼女はしばらくブラジャーを両腕で掻き抱いたまま、こちらの様子をうかがっている。無邪気な瞳で小首を傾げる姿が彼女の愛らしさを数千倍に引き上げた。

 辛抱強く深い呼吸を静かに繰り返して、心臓の高鳴りを抑える。
 この地方の言い伝えでは、雪女を抱いた男は魂を抜かれて氷漬けにされるという。裏を返せば、それぐらい魅力的な少女なのだろう。
 段々、舞が美女のイメージと重なっていくようで、妙な気持ちになった。

 彼女は微笑を浮かべて、両腕を離した。静かにブラジャーがベッドに落ちた。

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宇佐見翔
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