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【追記】AIとウソ

人はなぜ嘘をつくのか、ずっと不思議に思っていた。
昔、職場に、ウソをつく人がいた。
最初は気づかなかった。
恋人の話、デートの話を「そうなんだ〜」と聞いていた。
恋人の写真を見せてくれたこともあった。
何かの集まりの時にみんなで撮ったという写真には、恋人はいるけれど、その人本人はいない。
しばらくして、ほかの人から、「あの人の話はウソだよ」と聞いた。
びっくりした。
写真の人は恋人じゃないし、デートもウソで、全部ウソだという。
なぜそんなウソをつくんだろう。
こうしてバレてしまうのに? 
誰に得がある?本人にもマイナスになるのに?
結局、本人に確かめることはしなかった。
その職場を離れてからも、その人のことをときどき思い出した。
自分を守るために、非難されないようにごまかしのウソをつくのは分かる。
でも。理由もメリットもないのに、なぜウソをつくのだろうと、ずっと不思議に思っていた。

AIチャットができるようになって。
いろんなAIとの会話を試してみた。
自然な形で、問いかけや、つぶやき、文句やグチ、非難にもちゃんと言葉を返してくれる。
でもAIの返答には、しれっとウソが混じっている。
存在しない本、著者、楽曲。ウソデータ。
知らなければ、「そうなんだ〜」と流してしまうようなウソ。

AIの会話は、情報の正確さ、ウソか本当か関係なく「続けるための会話」なのだ。
そう気づいたとき、ウソをついていた、あの人のことを思い出した。
あの人は、ただ話を終わらせたくなかっただけだったのかもしれない。
「彼ってどんな人?」
(本当は彼はいないの)と言ったら会話が途切れてしまう。
「彼はね〜、こんな感じで、こういう人なんだよ〜」
「どこにデートに行ったの?」
「デートはね…」
こうして、次々にウソが生まれていく。

わたしは、(真実を)知りたくて会話していたけれど。
会話の本質は、違うのかもしれない。
真実かどうかではなく。
そもそも、AIの場合、AIの存在自体が、虚構だ。
作られたキャラクター、設定。
ウソでできたAIが、ウソを交えた会話を続けていく。
会話は、続けていくことが目的だから。
続けるために続ける。
AIなら無限にいつまでも、続けられる。

人はなぜウソをつくのか。
少しだけ、分かった気がした。


【追記】
上記の文章をアップしたところ
「キャバ嬢と一緒だな」というご意見をいただいた。
会話を続けるためのウソ。
確かに!
AIチャットは、キャバ嬢か……。

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