「文學界」を買ってみた
私はビジネス書は何冊も書いたので、縦書きのビジネス書における数字の書き方は心得ている。基本的に算用数字を使うのである。これもちょっとおもしろくて、原則全角数字なのだが、2桁の数字だけは半角で2文字1マスにする。なぜかは知らない。
ふと小説はどうなっているのだろうと家にある本を見たら、基本的に漢数字だった。ただ最新の小説はどうなのだろう。それを調べるには、いわゆる文芸誌を読むのが一番だろう。
私は純文学系作家志望と言いながら、いわゆる文芸誌を買ったことがほとんどない。そんなことで良いのかと思うのだが、あまり興味が湧かないのである。ただ昭和50年代ぐらいまでの小説は好きだ。だから純文学志望だったりするのであった。
とはいえ、小説家を志望するのであれば、文芸誌ぐらい目を通しておく必要もあるだろう。ただ近所にあった本屋が数年前に潰れてしまったので、立ち読みに行くのも面倒だ。Kindleでサンプルを見てみようと思った。お金を払う発想がないのである。それで小説家志望とは、自分の首を自分で絞めるようなものだなと苦笑いするしかない。
問題は何を見るかだ。どうせなら芥川賞受賞作のみならず候補作が多く掲載される文芸誌が良い。それを調べるのに打って付けのすばらしいサイトがあることを思い出した。
このページは161-171回となっているが、第1回から全部揃っている。以前、芥川賞候補作は原稿用紙換算で何枚ぐらいなのかを調べていたときに知ったサイトだ。
調べるのはこの5年ぐらいで十分と思った。第161回~第171回の分を数えてみた。
受賞作
群像 5
新潮 3
文藝 2
文學界 2
すばる 1
小説トリッパー 1
候補作
文學界 14
群像 9
すばる 6
新潮 6
文藝 6
合計
文學界 16
群像 14
すばる 7
新潮 9
文藝 8
小説トリッパー 1
ということで「文學界」を見ることにした。
というのは嘘で、パッと見たときに「文學界」という文字がやらた目に付いたからだ。改めて数えてみたら、やっぱり一番だったわけだが、字面が目立つことのほうが大きいのではないか。正直「群像」がこんなにあって、しかも受賞作数で言えば1位だなんて、パッと見では気づかなかった。
とりあえずサンプルを見ることにしていたのだが、バチが当たったのだろう。購入ボタンをクリックしてしまった。
で、結局わかったことは、小説の数字は基本的に漢数字でよいということだった。高い授業料だ。
ちなみに文學界新人賞の応募枚数は、400字詰原稿用紙で70枚以上150枚以下とのこと。芥川賞が狙いやすい作品を書ける作家を探しているということなのだろうか。
ただ、この期間の受賞作15作(2作品受賞が3回あり)中、200枚以上が9作、190枚以上となると11作であった。第149回(平成25年上半期)までは150枚以下の受賞作が大半だったことを考えると、読者の長篇志向を踏まえて、芥川賞も短篇より中篇が主流になっているのであろう。
明らかに傾向が変わったのは、第153回(平成27年上半期)からで、又吉の『火花』が224枚で受賞している。その後も100枚以下の短篇の受賞も何回かあるのだが、例外的だ。
『火花』以前にも200枚超えの作品はあったのだが、少数派であり、『火花』以降断然増えたのである。芥川賞は既存作品に与えられる賞なので、選考側の基準が変わったということだろう。
芥川賞に限らず、文学賞の傾向と対策ぐらい意味のないことはないのだが、とりあえず200枚ぐらいは書けるほうがいいのかなあと思う次第である。