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お茶の水女子大学附属中学校の公開研究会に参加してきました! ~日本の帰国子女教育の最前線~
こんにちは!
10月28日、お茶の水女子大学附属中学校(お茶中)で開催された公開研究会に参加してきたので、今日はそのことについて書こうと思います。
この日のテーマはズバリ「帰国生教育」です。
帰国子女はどんな課題や悩みを抱えがちなのか。どうやったらそこを乗り越えていけるのか?という話し合いが行われました。
🍵お茶中ってどんなところ?
東京都文京区にある、男女共学の国立中学校です。
お茶の水女子大のキャンパス内に、幼稚園~高校が併設されています。
お茶中の帰国子女教育の歴史は古く、45年前から生徒の受け入れと、帰国生のためのカリキュラム研究・開発が行われてきました。
ちなみに今年度の定員は1学年につき15名で、現在9名が在籍しています。
お茶中は蓄積した知見を5年ごとに公開していて、今回の研究会はその第9回目となります。
公開研究会ってなに?
ざっくり言うと、各地から先生たちが集まって、授業を研究する会のことです。当日のスケジュールはこんな感じでした。
①8:50〜10:50 公開授業 ×2コマ
→1〜3年生の全教科の公開授業。授業参観の先生版のようなイメージ。
②11:10〜11:40 自主研究ラウンドテーブル
→3年生の生徒がこれまで取り組んできた「自主研究」を振り返り、下級生に伝える時間。
見学に来た先生も生徒の輪の中に加わって、質問したり感想を聞いたりできる。
③12:30〜13:30 授業の振り返り
→公開授業を授業者、参観者と助言者の先生で振り返る時間。
④14:00〜16:00 グローバル教育交流会・全体会
パネリスト、参加者でグローバル教育、帰国生指導などについて交流する時間。
ちなみに私は、
①…1,2年生の国語の授業
「浮世絵の魅力を伝えていこう!」(帰国生混合クラス)
「学年キャラクターに名前を付けよう!」(帰国生のみクラス)
②…探究テーマ:
「若者も興味をもつ新聞を作りたい」
「最強のマスクを作る」
③…国語の分科会
④…全体会
に参加しました。
帰国生が抱える3つの課題
研究会ではたくさんのことを学んだのですが、この記事では3つに絞って書こうと思います。
①日本の勉強についていくのが大変
まず、海外と日本とでは勉強の内容と方法が大きく異なるのだそうです。
元帰国生の方は、特に漢字を覚えるのが大変だとおっしゃっていました。
歴史や地理も、日本のものを一から覚え直す必要があります。
数学ならどの国でも同じ…と思われがちですが、たとえば「2/3」は日本語では「さんぶんのに(分母から考える)」なのに対して、英語では「two-thirds(分子から考える)」という違いがあったりします。
「どう読むか」は「どういう順番で頭に思い浮かべるか」と直結するので、素早い計算が必要な時にはとても混乱するわけですね。
生活言語は友達や家族との会話から学べるのに対して、学習言語は学校でしか学べないので、習得のハードルが高いのだと思います。
②文化や常識、環境の違いによるストレス
・満員電車や、混んでいる場所がつらい
・夏の暑さや湿度に体がついていかない
・自然が少ない(前住んでいた国の公園は広くて、ウサギやリスがたくさんいた)
・学校のルールが多すぎる。ルールの意味も分からない
というお話も伺いました。
①の学習ストレスに加えて、体やメンタルにも負担がかかりやすいようです。
③アイデンティティを巡る葛藤
今回の研究会で中心になったのがこのテーマでした。
・帰国生は自分のことを「どこの国の人」だと思うのか?(自己基盤をどうやって作るのか)
・教師はその葛藤をどう理解・サポートすればいいのか?
・学校がどういうカリキュラムを作れば、その葛藤を乗り越えられるのか?
・一般生と帰国生とが、お互いに良い影響を与え合えるカリキュラムをどうやって作るか?
ということが話し合われました。
たとえばアメリカからの帰国生なら、アメリカでは「あなたはアメリカ人じゃないよね」と言われるのに、日本に来たら「お前発音変だな」みたいに言われてしまったりすることがあるんですね。
思春期のこの経験は、アイデンティティ…つまり自己基盤に大きな葛藤を生みます。
これについては専門的な話になるので、別記事で書こうと思います!
まとめ
帰国子女というと、今まで私の中では「英語(外国語)がペラペラだし頭もいい」というイメージがありました。
けれど実際はそれほど外国語が堪能ではない子もいるし、勉強はむしろ大変だし、それ以上に常識の違いやアイデンティティの揺れで大きなストレスを抱えているということを知りました。
次にイベントやボランティアで帰国生と話す時にはそこに注目しながら、効果的なサポートができないか挑戦してみようと思いました!
追記:11/1、記事を追加しました
帰国生や、思春期の生徒一般のアイデンティティ形成に関する記事を追加しました。