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そもそも切り絵って何??
突然ですが、
皆さんは【切り絵】と聞いてどんなモノを思い浮かべるでしょうか。
お正月なんかに和装の芸人さんが小噺をしながらハサミで切って作るあれでしょうか。小さい頃に見た絵本のあれでしょうか。切り絵?切り紙?
日本に昔からあって馴染みがあるようで、でも実はよく知らない切り絵。
この記事では簡単に切り絵がどういうモノなのか、どんな魅力があるのかを僕なりに書いていこうと思います。
*僕自身独学で切り絵をやっているのでここに書くことはあくまで経験から得た個人的な見解です。気になる点があればコメントなどでご指摘いただけるととても助かります。
目次
・切り絵という技法
・切り絵?切り紙?
・切り絵の歴史
・切り絵の魅力
”切り絵”という技法
切り絵とはどんな技法でしょうか。
切り絵(きりえ)は、紙を切り抜いて、台紙に貼り込み、人・動物などを表したもの[1]。切り紙絵とも[1]。白黒に染め分けた下絵を黒い紙に固定し、不要な部分を切り抜いて絵を作り上げていく絵画の手法のひとつ。一般的な認知度の高い手法ではないが、白と黒のコントラストの妙や、刃物の切り口による独特の造形が味わい深く、愛好家が多い。
Wikipediaにはこう書かれています。なるほど、簡潔でわかりやすい。
技法としては概ねこんな感じです。説明する事がなくなりました。
とはいえ少しわかりにくいのでもうちょっとくだいて言うと、黒い紙(和紙・画用紙など)をキャンバスにしてカッターやハサミで切り取っていき、風景、人物、動物なんかを描くという技法です。
黒い紙じゃなくても白でもカラーの紙でもOK。カッターでもハサミでも小刀でもOK。題材も人物、風景、動物、乗り物、マンガ、キャラクター、文字、模様など何でも。
とにかく、
「紙を刃物で切って絵にした作品」
以上。
よりシンプルになりました。これさえ押さえていれば全て「切り絵」と言うことでいいと思います。
ただシンプルと言うことはその分だけ余白があり自由ということにもなります。ルールが少ない分、作風の違いはもちろんのこと、やり方・作り方にもそれぞれ違いがあったりします。作り手のアイデア次第でいろんな楽しみ方が広がるのもおもしろい所。
それと、切り絵の一つの楽しみ方として、一枚の紙で全て繋がって作られているというのもあります。厳密に決まりがあるわけではないのでパーツごとに分けて作るのももちろんアリなのですが、個人的には切り絵の一つの要素として”全て一枚で繋がる”という事を大切にしています。
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切り絵?切り紙?
これはよく聞かれる質問です。
結論から言うと、、、特に決まっていません。(たぶん)
【切り絵】【切り紙】【剪紙】【剪画】【切り画】などいろんな呼び方があり、それぞれに込められた意味があると思いますので、作り手がどんな意味を持たせてどう呼称するか、という事かなと。
自分の中では、カッターで切った作品を「切り絵」、ハサミで切った作品を「切り紙」と呼ぶのが区別できて良いのかなと思ってます。
切り絵の歴史
こちらもまずはWikipedia。
切り絵は、日本において古より神様の儀式に使われ、今でも飛騨高山などでは奈良時代以来と伝えられる伝統的な様式が残っている。その後、一般的には染物師が使う染の型紙として発達した。現在、京都友禅の「型友禅」の製作初期工程である「型彫り」の匠の技から生まれた切り絵作家として、京都伝統工芸者三代目蓮蔵(本名山川勝雪)がいる。中国ではお守りであり、上海で行われている伝統的切り紙(きりがみ)は、上海で内山書店を経営していた内山完造が日本から伝えたものである。中国から伝来した説もある。
ほうほう。なるほど、わからん。
あまり歴史らしい歴史はわかってないようですね。文末に「…説もある」となっているところからしても”明確になっていない感”が伝わってきます。
とにかく、日本では古くから神事に使われたり、染め物の型として切り絵の技術が受け継がれて来たんですね。そして中国から伝統的切り紙(剪紙と呼ばれる)が伝わったと。(中国での歴史は1500年…!)
なんとなく漠然と中国が発祥なのかなーという気がしていましたが、最近では【切り絵はインドの方からシルクロードを渡って伝えられた説】なんかもあります。(興味のある方はぜひ調べてみてくださいそして教えてください)
歴史の中でどういうルートを辿って切り絵が伝わってきたかはまだぼんやりとしてますが、実は日本や中国だけじゃなく世界中に【カッティングアート】(切り絵)という技法はあります。
・中国・ロシア
・ポーランド・デンマーク
・スイス・ドイツ・メキシコなど
(その他にもあるかもしれません)
国ごとに用途や作風も様々で、その国の歴史とも関係していたりしておもしろいです。ペーパーアート、カッティングアート、ペーパーカットアートなどと言われ、作家さんも様々です。各国の切り絵についてはそのうち別の記事で詳しく書ければと思ってます。
そして日本の切り絵もまたアートとして独自に進化し強い個性を放っています。
言うなれば「空手」のようなもので、元々は中国拳法から伝わってきた流れがありますが、すでに独自の発展を遂げ日本の象徴的な武道となっているように、切り絵もまた先人たちの創作によって日本特有のスタイルを確立しています。
絵本「モチモチの木」で知られる「滝平二郎」先生や、BARの風景を描き続けた「成田一徹」先生。
尊敬する切り絵画家「宮田雅之」先生は、中国で個展をされ「日本の切り絵はすごい!」(宮田先生の作品が凄すぎるからですが)と知らしめ、国内に「記念庁」が開設されるほど高く評価されています。(ホワイトハウスやバチカン美術館にも収蔵されているものすごい方)
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日本の切り絵の主な種類↓
・伊勢型紙や京都友禅の型染めとしての切り絵
・落語演芸など伝統芸としての切り絵
・神事に使われる切り絵
・アートとしての切り絵
日本の切り絵はこんな感じで大きく4つに分けられると思います。
僕自身の作風は上に挙げさせていただいた先生方同様、アートとしての切り絵の系譜になります。
そして、”アートとしての切り絵”にも様々なスタイルや魅せ方があり、現代になってさらに奥深い広がりを見せています。
切り絵の魅力
そんな切り絵という技法の魅力についてですが、いつも個展や講座の時に使っている文章がこちらです。
カッターで紙を切り、白と黒・光と影・陰と陽のコントラストによって表現する技法です。
主に黒い紙を使用し、一線一線人の手で切られた切り口や、細やかさ、一枚の紙から生み出される作品は大胆かつ繊細で独特な魅力があります。
僕は制作のテーマに、「表裏一体」という言葉を掲げています。
「表裏一体」とは”相反する2つのものがそれぞれ影響しあい、ひとつである”ということです。
切り絵は、白と黒のコントラストで表現する技法であり、切り抜いた部分・残す部分どちらともがバランスよく合わさり、一つの作品となります。
一般的な絵画のように額装して飾るのはもちろん、背景を空に透かしたり、光りを当てて影を作り出したりと様々な魅せ方があり、白と黒のどちらにも意味を見出すことができる他にはない表現方法だと考えています。
紙を切るということや立体的に飾ったりといろんな角度から魅力を見つけることができるかと思いますが、僕自身が思う切り絵の魅力とは白と黒や光と影にはじまる”表裏一体性”にこそ特に魅力を感じます。
とはいうものの、初めて切り絵を見た時は単純にかっこいい!という感情だけで興味を持ちました。白と黒、大胆でありながら繊細な表現に引き込まれたのを覚えています。このシンプルで直感的な始まりの感情がものづくりにとって最も大事なんじゃないかと思っていて、今もその気持ちを大切に制作をしています。
その後、活動の全体テーマを【表裏一体】として、後付けにはなりますが、切り絵を通して表現することの意味を見つけることができました。
”切り絵”を表現手段に活動をしていく中で、今の社会の雰囲気として
「目に見える面だけが全てでそれ以外の面が蔑ろにされている」という印象を感じています。
しかし、モノゴトは目に見える部分や綺麗に映る部分だけでなく、その裏にも様々な要素があるからこそ成り立つものだと思っています。
そういったある意味、”世の理”のようなものと、私の扱っている切り絵が持つ特性との共通点を感じるようになりました。
自分の活動や作品を通し、より多くの人に
「表と裏の両面が支え合っていることで、モノゴトが成り立っている」
ということを改めて意識してもらえたらと考えています。
”裏”=”負"というイメージが変わり、自分の周りや、社会の中のあらゆる事柄への目線が変わっていき、今まで不要と思っていたものにもスポットライトが当たり、新たな価値に繋がっていくきっかけになればと思っております。
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切り絵の魅力と言いつつ最後は自分のお気持ち的なものになってしまいました。
この記事を読んで少しでも多くの方に切り絵の面白さや魅力が伝わればいいなと思っています。
切り絵はどなたでもすぐに始められます。
初めての方向けの【切り絵の作り方】記事もありますので、興味のある方は覗いてみてください!
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