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「枠」が破られる時にこそ

セラピーを行う上で「枠」はとても大切なものとなります。

枠とは、枠組み、ルール、取り決めのことです。

様々な枠がありますが、まず浮かぶのは、時間の枠です。

これは、開始時間と終わりの時間を守るということです。

9時~9時50分の予約ならば、9時に始めて50分には終わります。

一般には案外知られていないと思いますが、時間の枠は、心を扱う専門的なカウンセリング、セラピーにとっては優先順位が一番高い「枠」と言っても過言ではないと思います。

しかし、時には、セラピー時間が1分オーバーしたり、2,3分遅刻するなど、枠が破られる動きが出てきます。

たまたまの場合もありますが、遅刻が繰り返されるとか、時間オーバーが頻繁にあるといったことが起きてくることもあります。

また、時間を完全に失念したりすることも起きえます。

このとき、枠が破られる動きになったことについて、あれこれ思いを巡らせて、クライエントとカウンセラーが「実際に」話し合うことがセラピーの本質的な部分の一つとなります。

実際に体験してみると、これはなかなかしんどいです。

枠は守るものとわかっちゃいるけど、枠を守れない心模様が、カウンセリング場面で実際に展開されているからです。

わかっちゃいるけど出来ない。

これってとても嫌だし苦しいし、不快だし恥ずかしいし、怖いし・・・と心にとっては目を背けたい部分です。

でも、この気持ちは、カウンセリングを受けるに至った動機に深く関係する部分でもあることが多く、向き合う必要がありそうです。

枠が破られる動きが起きているとき、クライエントさんはカウンセリングを辞めたくなったりすることもあります。

カウンセラーのことやご自身を責めたくなったりすることもあります。

正直に言えば、カウンセラーも、枠が破られたことを見逃してしまうこともあります。(それくらい微妙で巧妙な形で破られたりします)

(いかに見逃さなくなるか、見逃してもすぐに気づけるか、その確率をあげるため日々訓練を続けています。)

枠が破られたとき、

「待てよ?こここそが大事なんじゃないか?」

と気づき、踏みとどまれると良いのではないかと考えます。

私自身、クライエントとして、カウンセラーとして、どちらの立場でも枠が破られる苦しさを体験しており、痛みを実感してきています。

ただ、私は、そもそもカウンセラーになる学びの中で、枠についての知識を得たからこそ、クライエントとしてセラピーをやめずに踏みとどまれた部分もあるように思っています。

何が言いたいかと言うと、枠は時に破られて、それを話し合うのがセラピーだと事前に知っているということが、クライエントにとって、道しるべ、旅の地図になるのではないかということです。

地図のない旅はあまりに危険ですし、非現実的です。

枠が破られるということには、カウンセラーの問題にしてみたり、お金の問題、予定の問題など、何か理由をつけて向き合うことを止めてしまうことがいとも簡単にできるようなくらい、切実で強力な心の痛みをクライエントの心に引き起こす威力がある」と言えます。

ですので、セラピーを受けられる一般の方も、知識として持っておいていただけるといいのではないかと考えました。

特に現在の日本では、高頻度でも週1回のセラピーがほとんどだと思います。セラピー以外の時間が圧倒的に長いわけです。

その時間の過ごし方の中にも、セラピーを受けている意識を溶けこませる必要があると思います。

毎日セラピーとか、週に複数日セラピーができれば、セラピー内で、枠が破られたことを直接話題にし取り扱いやすいですが、週1回以下の頻度だと、クライエントの日頃の生活意識がセラピーと連動している必要があるように思います。

そうでないと、せっかく苦しくなって、話し合う意味が出てきたときに、セラピーを辞めてしまうというもったいない展開になりやすくなると思います。

ピアノの自主練習を日々していないと、週1回のレッスンが有効にならない。というイメージに重なるかもしれません。

自主練習が苦しくなる時こそ、成長のときです。そのときに、その渦中にある方に、この情報をお伝えしたいのです。

セラピーって、色々な枠があるが、それが破られるような何かが起きて、辛くなるもの。

でも辛い実感が伴わないことも多い。何らかの最もらしい理由でセラピーの価値や意味を過小評価しやすくなる。

お金が高いしなあ
もう良くなったから
カウンセラーがちょっと合わないなあ
セラピーって意味ないよね
忙しいからなあ

理由づけのバリエーションは十人十色です。

これはもう当たり前だし、この段階になってこそ、いよいよ本番、ここが勘所くらいに思っておく。

セラピーは辞めてもいいんじゃないかなあと考えてセラピーから遠ざかる時こそ、そのことを考えて、言葉にして、話し合ってみる。言葉にしてみるということを忘れないようにしたいところです。

その結果得られた理解や洞察、心境の変化などが、セラピーの成果の一つであり、こころの大切な財産になります。

枠とは、守らなければならない縛りでもありますが、同時に、心を入れておける器、安心の器でもあります。

そういった安心感が芽生えていくきっかけを生むためにも、枠について意識しておくことは大切だと感じます。

今回は時間の枠だけでしたが、料金支払いの枠、など様々なことを枠という視点で見てみると発見があると思います。

「守る前提なのに、人と人の関係するところ、必ず、枠が破られる危機が生じるもの。だから、言葉にする。話し合う。」と頭の片隅において過ごすことは、心を大切にすることそのものなのだと思います。


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