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二人展《空はシトリン》|影山多栄子|穏やかな肯定

 本記事では、『春と修羅』の世界を縦横無尽に読み解きながらも、詩にとらわれすぎることなく、作家独自の視点が優しくきらめく4作品を紹介する。

 どうやら丁寧に育まれた作品のひとつひとつから、また新しい物語が生まれているようだ。ちょっとだけ、覗いてみてみよう。

 詩の世界からこの世に降り立ったのは、気高きナチラナトラのひいさま。二本のとがった耳と優美な羽根をもち、ふわりくるりと不思議へ誘う。

 しゅっと真っ直ぐに伸びた脚もうるわしい。うっとりと浸っているうちに、夢の中に招かれて、一緒に踊っているのを見たのは幻か。現と幻のはざまを漂いながら、優雅に踊るひいさまから、しばらく目が離せそうにない。

 抱きしめたくなるような、いつまでも見守っていたくなるようなかわいらしさ。二つの詩から生まれたのは、キノコの形の小さな林のつぶがみさんと、雪が広がるお椀のなかにちょこんと座るつぶがみさん。

 うれしいときだけじゃない。かなしいときにも何も言わずに寄りそってくれるつぶがみさん。今日の日もきっとそばにいて。

 頭巾に黒い尾をまとい、彼らがついにやってきた!
 近づいても?それとも近づかない方が?
 そんな身勝手な逡巡を心の中で見透かしてほしい。

 影山多栄子の作品には優しさや不思議さとともに、穏やかな肯定の力が働いている。気が付いたらそばにいてくれるような安心感。ぎゅっとしたくなる愛おしさ。詩を読む時のように、心が癒されていくのを感じる。

会場風景写真|霧とリボン

影山多栄子|人形作家 →Blog
山吉由利子(球体関節人形)、宮崎優人(市松人形)に人形制作を学ぶ。石粉粘土と布を中心に様々な素材を使い、ひとりひとり違うお話を感じさせるような可愛らしさと不思議さを持った人形作りを心がけています。[個展]2003年 「うきわ」ギャラリー古桑庵、2004年 「まくら」ギャラリーNonc Platz。以後数年おきに個展を開催。ほか企画展、グループ展など多数。2007年創作人形専門誌「Doll Forum Japan 49号」表紙掲載。2018年 作品集「遠くをみている」発行。

熊谷めぐみ|ヴィクトリア朝文学研究者 →Blog
子供の頃『名探偵コナン』からシャーロック・ホームズにたどり着き、大学でチャールズ・ディケンズの『互いの友』と運命の出会い。ヴィクトリア朝文学を中心としたイギリス文学の面白さに魅了される。会社員を経て大学院へ進み、現在はディケンズを研究する傍ら、その魅力を伝えるべく布教活動に励む。モーヴ街5番地、チャールズ・ディケンズ&ヴィクトリア朝文化研究室「サティス荘」の管理人の一人。
Twitter|@lond_me



作家名|影山多栄子
作品名|ナチラナトラのひいさま

顔のみ石粉粘土・アクリル絵具・布・ポリエステル綿・ガラスベレット・ビーズほか
作品サイズ|身長20.5cm/座高14.5cm(耳を含む)
制作年|2022年(新作)
*オンラインショップに別ショットの画像を掲載しています

作家名|影山多栄子
作品名|ちひさな林

肩まで石粉粘土・アクリル絵具・布・ポリエステル綿・ステンレスボール・ビーズほか/敷物付属
作品サイズ|高さ6.5cm/敷物直径7cm
制作年|2022年(新作)
*オンラインショップに別ショットの画像を掲載しています

作家名|影山多栄子
作品名|あめゆき

肩まで石粉粘土・アクリル絵具・布・ポリエステル綿・ステンレスボール・ビーズほか/敷物付属
作品サイズ|高さ7cm/敷物直径11cm
制作年|2022年(新作)
*オンラインショップに別ショットの画像を掲載しています

作家名|影山多栄子
作品名|Ho! Ho! Ho!(緑・紫)

布・布えのぐ・ポリエステル綿・ガラスペレット・ビーズほか
作品サイズ|高さ16cm
制作年|2022年(新作)
*オンラインショップに別ショットの画像を掲載しています

【左】緑/【右】紫
【左】緑/【右】紫


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