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うなれ若人!


「最近いいことあった?」
私が友達によくする質問だ。

「いいこと」を聞いて、
人の「幸せ」を分けてもらおうとするのだが、
仲の良い子には、この質問は結構怒られたりもする。

「フワッとした、一番困る質問しないでよ!」
…間違いない。

そんな日頃の自分を反省して、
私の最近あった「いいこと」を書いて行きたいと思う。


「踏みつけられたチラシ」と「頑張れ若人」



《踏みつけられたチラシ》

ある日、図書館に行こうと電車に乗ると
床に、質屋のチラシが落ちていた。
きらびやかな金属の写真が載っている、真っ赤なチラシ。
邪魔そうだな、と思いつつも、
すぐに拾うことはせず、空いている席に座った。


座った後も、
拾った方がいいかな、変に見られるかな…
今拾ったら、先8駅くらいずっとチラシを持っていることになるぞ…
と決心がつかず、目線だけはずっとチラシに釘付けだった。

次の駅で、大勢の人が乗ってきた。
その大勢の人も、落ちているチラシに気が付きつつ、
拾う気もないようで、
明らかに足で避けていたり、言えないフリをしたり。
その場だけ不自然にスペースができていた。


電車は、5駅、6駅…と順調に進んで行き、
次の8駅目でとうとう私の降りる駅になった。

よし、次降りるとき、誰も踏んでいなかったら、
拾って捨てよう。

そう決心した私は、電車が止まるのを待ってから、
チラシを拾い、スマートに電車から降りるため、立ち上がろうとした。


と、その時。
私が立ち上がるよりも早く、
私の対角に座っていた、チェスターコートを着た『女子就活生』
が立ち上がり、さりげなくそのチラシを拾って行った。


この時の私の心の和らぎが、伝わるだろうか。
その女子就活生の行動で、
今までくたびれたチラシと同じような気持ちになっていた私が、
一気に暖かい気持ちになった。


その後、私も電車を降りたが、
見ず知らずの「チラシの女子就活生」から、
ついニヤけてしまうような、暖かさをもらった。


彼女の内定に幸あれ!!!!!



《頑張れ若人》

先日、帰宅しようと駅から自宅までの道を歩いていると、
規定の速度よりもかなり遅いのでは、と思うような
車が後ろから、走ってきた。


少し早歩きをすれば並走できそうな
その「ノロノロ自動車」に、何かトラブルでもあったのかと、
つい足を止めて、行先を見守ってしまった。

ノロノロノロノロ…

ノロノロノロノロ…
それにしても、遅すぎないか。
つい、近くの速度標識を探した。


目の前を、その自動車が通り過ぎた。
運転席を覗き込むと、
私と同い年か、少し若いぐらいの男の子が
両手でハンドルを握りしめ、真剣な顔で前方を睨みつけていた。
助手席には、母親ぐらいの年齢の女性が少し退屈そうに座っていた。


ほう、と思い通り過ぎた車を眺めていると、
車の後方に、「若葉マーク」が貼ってあるのを見つけた。


そうか!
きっと彼は、自動車免許を取り立てで、
公道を運転する練習をしていたのだ!!!
隣に母親を乗せて、さらに緊張していたのかもしれない。


かく言う私は、去年の3月に免許をとってから、
公道では一度も運転していない。
免許取り立てで、公道を運転するだなんて、偉いなあ…


免許をとったら、一番に母親を乗せる約束だったのだろうか。
母親が「乗せてよ!」と言ったのだろうか
それとも、練習したいときに、ちょうど母親が買い物に行く途中だったのだろうか


…想像が無限大に広がってしまい、
タンポポの綿毛のように幸せな気持ちが、胸の中に溢れた。


頑張れ!少年!!!
頑張れ若人!!!!!!!

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