哀捨て iN THE DARK 003/映像脚本+詞(コトバ)
○と或る体育館のステージ
ギターを抱えた育がいる。
育「たしかに、僕は音楽が大好きで、熱中し過ぎていたかもしれないけど、
他の男にコクられたからって…」
○暗闇の中に
紫の服の當と、紅色の服の陽。
當「コクられるって、なんだ?」
陽「告白されたってことよ。そんなことも知らないなんて、アタルこそ、ナ
ギサさんより年上なんじゃないの?」
當「知ってるよ! ちょっと忘れただけだよ!」
陽「どーだかね~」
當「ムカツク女ね!」
陽「マネしないでよ!」
育「(声)あの~」
當「あ、悪い、悪い」
陽「ごめんね。続けて」
育「(声)はい」
○と或る体育館のステージ
ギターを抱えた育がいる。
育「だから、なかなか逢えない寂しさはわかるけど、他の男に告白されたか
らって、すぐに寝返らなくたっていいじゃないか! その寂しさは、僕だ
って同じなのに!? 何故、もっと話してくれなかったんだよ! スマホが
あるのに!? メールだって、LINEだっていいのに!」
○暗闇の中に
紫色の服の當、紅色の服の陽、桜色の渚。
當「あれ、誰に話し掛けてるんだ?」
渚「フラレた相手によ!」
陽「バカね、黙って聞いてなさいよ!」
當「ムカツク!」
陽&渚「シー!!」
當「はい…」
○と或る体育館のステージ
ギターを抱えた育がいる。
育「初めての恋じゃないし、別れも何度か経験したことがあるのに、なぜ僕
の心は、こんなにもダメージを受けているんだろう? 自分でも不思議な
くらいブルーに染められて、そして、僕はどんどん色を失くして行き、気
がついたら闇に覆われていたんだ。だから、この闇から脱け出すにはどう
すればいいかなんて、僕には全然わからない」
音楽3『君と僕と愛と夢』イン。
樹実、扉を開けて入って来て、一つ置かれた椅子に座る。
育、歌う。
♪
愛おしい君がいる
そんな君といつも一緒にいられたなら
どんなに楽しい日々だろう
叶えたい夢がある
それは僕がいつか必ず実現する
とってもすてきな夢だから
だから、僕は夢に向かっている
そして、君と向かい合っている
どちらも大切な かけがえのないもの
どちらもなくてはならないもの
愛おしい君が聞く
ねぇ私と夢とどっちが大事なの?
比べられるはずもないのに…
叶えたい夢を追う
君は寂しいと僕の胸にすがりつく
キツク抱きしめるしかない僕
君がいなくちゃ 僕は生きて行けない
夢を捨てたら 生きてる意味がない
どちらも大切で かけがえのないもの
どちらもなくてはいけないもの
僕はどうすればいい?
どうにも出来ない! もどかしい!
樹実、立ち上がり、育に手を振り、去って行く。
君が、背中を向けた
引き戻そうとしても届かない
どんどん君の背中が小さくなり
そして、消えた…
育、その場に立ち尽くす。
(渚)「アオキハグクムは、音楽に熱中しすぎて、恋人から『あなたのこと
は大好きだけど、もっと一緒にいてくれる人がいい。私、寂しいのはイ
ヤ!』と言われ、フラレてしまった」
(當)「まさか彼女から、そんな言葉を聞かされるとは思ってもいなかっ
た。逢えない寂しさは、ハグクムも同じだった。『メジャーになりた
い!』というその夢を、彼女も理解してくれていると思っていた」
(陽)「しかし彼女は、別の男からの告白を、悩みながらも受け入れてしま
ったのだ。初めての経験に、ハグクムの心は激しく動揺し、どうすればい
いのかわからなくなってしまった」