哀捨て iN THE DARK 007/映像脚本+詞(コトバ)
○暗闇の中
當、陽、育、渚が浮かび上がる。
當「じゃあ、今度はオレがやってみますよ!」
陽「先に私にやらせて」
當「いや、オレがやる!」
陽「そう、わかった。じゃあ、ガンバってね」
當「え、クレナイヒカリは、そんなやさしい言葉も言えるんだ!?」
陽「早く、この闇から脱け出したいだけよ!」
當「ムカツク!」
陽「ウゼーよ!」
當「だから、マネするなよ! まぁ、いいや。オレが、この闇を融かしてや
るよ!」
渚「お願いね!」
育「ガンバって下さい!」
○砂浜のきれいな海岸
當と清(24)が波打ち際を歩いて来る。
當「(声)オレは、愛のない男なのかもしれない。恋をするたびに、愛が芽
生え、育み始めると、ちょっとしたことにキレて、別れてしまうんだ」
○少し離れた砂浜
陽、育、渚が並んで座っている。
陽「アタルって、そんなにモテるのかなぁ!?」
育「うらやましいなぁ…」
渚「シー!」
○波打ち際
當と清が立ち止まり、向かい合う。
當「(声)今日も、大好きだった恋人に別れを告げてしまって、すぐに後悔
したんだけど、もう戻れなくて、気がついたら闇に覆われていたんだ。そ
の一瞬を我慢しさえすればいいのに、それは充分すぎるほどわかっている
のに、同じことばかり繰り返してしまうんだ…」
音楽8『すてきな恋の終わり方』イン。
♪
真夜中 砂浜に座り 抱き合っていた
何もせず二人 抱き合っていた
朝が来た…
それが合図だった
君は背中を向けて 去って行った
それを見送る僕を 振り返らず
手を振って消えた
こんな恋の終わりも いいもんだね
寂しさよりも 清々しさを感じていた
サヨナラ君 最後まですてきだったよ
○サイレント映像
海岸の夜→朝→昼。
波打ち際で、當と清が戯れている。
○少し離れた砂浜
育、陽、渚が座っている。
育、大きく首を左右に振る。
陽「ハグ、どうしたの?」
育「なんとなく、ウソっぽくないですか?」
渚「私も、ちょっと違う気がしてたのよ」
陽「そういえば、そうですよねぇ」
歌が始まる。
♪
別れは君が言い出した 昨夜遅く
キッパリ あっさり サヨナラ告げた
その訳は…
旅に出ると言った
僕との廻(めぐ)り逢いも 旅の途中
青い海のある町 足を止めて
すぐ恋に落ちた
こんなすてきな君と
逢えたことを 忘れはしない
ホントはついて行きたいけど
サヨナラ君 潔く お別れするよ
○波打ち際
清、背中を向け、去って行く。
當、それを目で追い、反対側に歩き始める。
♪
それから僕も立ち上がり 歩き始めた
ゆっくりと今日へ 歩き始めた
これからの…
時を生きるために
君との昨日までは もう想い出
僕も振り返らない
君のことは この胸にしまう
こんなすてきな恋が
出来たことを 感謝してるよ
カッコよすぎる気もするけど
ありがとう君 いつまでも元気でいてよ
こんな恋の終わりも いいもんだね
寂しさよりも 清々しさを感じていた
サヨナラ君 最後まですてきだったよ
ありがとう Bye Bye
(當)「(声を変え)うそつき!」
○カメラが
當にズームして行く。
當「誰だ、今言ったのは? クレナイヒカリか?」
(陽)「私じゃないよ!」
(渚)「私でもないわよ!」
(育)「僕でもないですよ!」
當「じゃあ、誰が…」
○カメラが引いて行く
陽、育、渚が歩いて来る。
陽「あ、カタルシスじゃない?」
渚「そうね!」
育「でも、カタルシスは、僕たち自身の声ですよね? ということは…」
渚「私たち誰かの声ってこと?」
陽「じゃあ、アタル自身の声なんじゃないの?」
當「えッ!?」
陽「真実を語ってないんでしょ?」
當「そ、そんなことないよ…。(皆に背を向ける)」
(陽)「ムラサキアタルは、シャイで不器用なために、その想いを上手く相
手に伝えられず、出逢いと別れを繰り返していた」
(育)「今日もまた、恋人と別れて来たばかりだ。何故、本気で人を愛せな
いのだろう? アタルは、自分に聞いてみた」
(渚)「人を愛することが怖いのか? 自分に自信が持てないのか? その
どちらもが、当てはまっている気がした。そんな自分が情けなかった。消
してしまいたいと思った」