見出し画像

哀捨て iN THE DARK 005/映像脚本+詞(コトバ)

○暗闇の中に
   當、陽、育、渚が現れる。
育「え〜と、次、誰が行きますか?」
當「(小声で)さっきのショウワァは男だったから、ハグってことだよな
 ~」
渚「何をごちゃごちゃ言ってるの?」
當「い、いえ、何も」
渚「次は、私にやらせて」
陽「年の順なら私ですよ」
渚「年、年って、人を年寄り扱いしないで!」
陽「そんなつもりじゃないですよ」
當「そうですよ。始めに年の順って決めたから」
陽「え、決めたっけ?」
當「シー!」
渚「別に怒ってないわよ。とにかく、次は私にやらせてもらうわよ」
陽「わかりました」
當「お願いします」
育「桜色の光で、この闇を融かして下さい」

○喫茶店・内
   店内の音ナシ、渚の声のみ。
   二、三組の客がいる。
   渚、入り口から入って来て席に座る。
渚「私、あなたが好きだった。いいえ、今でも大好き! でも、その気持ち
 を伝えることは出来なかった。あなたは、私が働いている店の近くで喫茶
 店をやっていて、いつも私はランチを食べに行っていたの。あなたを初め
 て見たときから、すてきな人だなって思ってた。でも、恥ずかしくて、ラ
 ンチを頼む以外には何も話しかけられないでいたの。ある日、あなたに
 ―」
   マスターが、渚の席にオーダーを持って来る。
渚「『いつも来て頂いてありがとうございます。お近くなんですか?』って
 聞かれても、『はい』としか答えられなくて…。でも、次の日から私が行
 くと―」

○別の日の喫茶店・内・昼
   ほぼ満席。
   後ろ姿の當、陽、育が並んで座っている。
   渚が入口から入って来る。
   マスターが気づき、空いてる席に手招く。
渚「『いらっしゃいませ。ランチでよろしいですか?』って声をかけてくれ
 るようになったの。私、それだけでうれしくて、お休みの日もランチを食
 べに行ったの」
當「(振り向き)わざわざ電車に乗って行ったのかな?」
陽「(振り向き)まさか! 家も近かったんじゃないの?」
渚「いいえ。電車で一時間かけて行ったのよ」
當「マジですか!?」
陽「すご~い!」
育「(振り向き)ダメですよ、話しかけちゃ」
當「話しかけたんじゃなくて、素朴な疑問が声になっちゃったんだよ」
陽「すみません。続けて下さい」
   當、陽、育、元に戻る。
渚「情けないと思うでしょ? 見ているだけで、何も話せないなんて、一歩
 間違えればストーカーよね。だから、勇気を振り絞って聞いたの。『(マ
 スターに顔を向け)おいくつですか?』って。そうしたら、私より三つも
 年下だったの!?」
陽「(後ろ向きのまま)うわぁ、いいなぁ!」
當「クレナイヒカリは、年下が好きなのか?」
陽「別に、そんなこともないけど」
當「なんだよ、どっちなんだよ!?」
育「シー! 声が大きいですよ!」
當「悪い、悪い」
陽「ば~か! 年下に怒られてんの!」
當「うるさい!」
育「二人とも、シー!!」
當「あ、スマン」
陽「ごめ~ん」
   音楽6『想い募るばかり』イン。
   渚、立ち上がり、歌う。
   當、陽、育、振り向き、渚を見る。

恋しくて 愛しくて
こんなにも焦がれていたのに
その気持ちを伝えることが出来なかったの
ああ…悔やんでも悔やみきれずに
泣いて 泣いて 泣いて
自らを闇に覆わせてしまった私
言わずに後悔するより
その一言を言えばよかった…
けれど、言えなかった想いが募る

當「ナギサさんは、何でそんなに自分に自信がないんだろう?」
陽「そうよねぇ…」
育「僕も、自分に絶対の自信はないですけどね」
當「そう言われれば俺だって…」
陽「私だって…」
   渚、歌う。

恋しさに 愛しさに
こんなにも焦がされるなんて
この気持ちを伝えられずにいたからなのね
ああ…不甲斐ない そんな自分を
責めて 責めて 責めて
自ずから闇を創り出してしまった私
言えなかった その言葉を
心の中で繰り返しても
決して伝わらない 伝えられない
それはわかっているはずなのに
ああ…それなのに
今でもまだ私 あの人のこと…

當「サクライナギサは、ついに告白することが出来なかった。勇気がないの
 か、自分に自信がないのか、おそらく、そのどちらでもあるのだろう」
陽「好きなのに、大好きなのに、言うに言われぬ想いの痛みに耐え切れず、
 その喫茶店に行くのを止めた」
育「そして、さすらい、さまよい、この闇に覆われてしまったのだ」
   渚、歌う。

恋しくて 愛しくて
こんなにも焦がれているのに
この気持ちを伝えることがもう出来ないの
ああ…悔やんでも悔やみきれない
想い募るばかり
自らを闇に染めさせてしまった私
言えずに後悔している
その一言を噛み締めてしる…
決して伝わらないと わかっていても
ああ…悔やんでも悔やみきれずに
泣いて 泣いて 泣いて
自らを闇に覆わせてしまった私
言わずに後悔するより
その一言を言えばよかった…
けれど、言えなかった想いが募る
   店内が暗くなって行く。

○暗闇の中
   四人が浮かび上がる。
當「ナギサさん、もっと自信を持ってもいいんじゃないのかな」
陽「そうですよ。ねぇ、ハグ」
育「はい。僕もそう思います」
渚「顔も見たこともないくせに!」
當「恋愛は、顔じゃないですよ」
陽「あら、そうなの? アタルって、面食いかと思ってた」
當「ふん、オレのこと何も知らないくせに」
渚「そうよ!」
陽「あれ、私が悪者ですか?」
育「そんなことより、上を見て下さい! 桜色の光がうっすらと…」
   青色の光の隣に、桜色の光が灯る。
渚「桜華(謳歌)の光よ!」
陽「あ、カッコイイ!」
渚「でしょ! でも、まだ真っ暗で何も見えないわねぇ」
   SE:ものすごい風の音。
   音楽4『捨てiN THE DARK③』イン。
   四人、風に吹き飛ばされる。
育「うわぁ~、また飛ばされてる!」

哀捨て iN THE DARK
風に飛ばされ 闇の中
哀捨て FANTASy
闇からの脱出
Woh… Woh… Woh…

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集