青春のフォト★グラフ 002／映像脚本
店の前に、木本龍雄(２８)と原武裕美(２７)が立っている。
そこへ、美代子と佳代子がやって来る。
と、龍雄が二人に気づく。
龍雄「あれ、カヨコ？ 久しぶりじゃん」
裕美「えー、カヨコだぁ」
佳代子「どうも」
美代子「カヨコ、ちょっと荒れてるから気をつけてね」
佳代子「え、ミヨコ、止めてよ！」
美代子「いいから、いいから」
と、美代子が龍雄と裕美に目配せし、佳代子の背中を押しながら、店に入って行
く。
○カラオケ店・部屋・内
広めの部屋に、四人がソーシャルディスタンスを取り、座っている。
それぞれの前に置かれたグラスを持つ。
龍雄「じゃあ、久しぶりに逢えたカヨコに、せ～の」
四人「（グラスを持ち上げ）カンパ～イ！ （飲む）」
裕美「（グラスを置き、リモコンを持ち）よ～し、最初はカヨコが歌ってくれよ」
佳代子「え、いいの？」
龍雄「もちろん！」
美代子「吐き出しちゃいなよ！」
裕美「そんなに何か溜め込んでるのか!?」
佳代子「まぁ～ねぇ～」
龍雄「うわ、ヤバッ」
裕美「何を歌う？」
佳代子「じゃあ、オリジナル曲を歌います」
美代子「よッ、シンガーソングライター！」
美代子「まだ売れてないけどね」
龍雄「YouTube、観てるよ」
佳代子「え、フォローしてくれてるの？」
龍雄「もちろん！」
裕美「オレも観てるよ！」
美代子「私もね！」
佳代子「ありがとう！ うれしい！ まだカラオケには入ってないから、自分の音源を
使うね」
と言って、バッグからスマホを出し、音源を探す。
佳代子「二番目に再生回数の多い曲を替え歌にして歌わせてもらいます」
龍雄「なんで一番じゃダメなんですか？」
裕美「どっかの政治家の真似の替えを言うな！」
龍雄「二番じゃなきゃダメなんですか？」
裕美「もういいって！」
佳代子「あった。では、聴いてください。（スタートボタンを押す）」
音楽１『青春のフォト★グラフ』イン。
佳代子がマイクを持って立ち上がり、歌う。
♪
そのフォトグラフは 楽しかった あの頃の
キャピキャピの 青春してた あの頃の
その一瞬を撮したもので
私の大事な思い出なの
それをネットで公開するなんて!?
不特定多数の人に見せるなんて!?
なんで？ どうして？ 信じられない！
だって あの頃の私…ちょいブスだったから…
あぁ…そんな私を晒し者にするなんて!?
ひどい！ ひどいよ！ ひどすぎるよね!?
そうよ あの頃の私…ちょいブスだったから…
あぁ…そんな私を晒し者にするなんて!?
あのキャピキャピの 青春のフォト★グラフ
佳代子がスマホのストップボタンを押すーー音楽アウト。
三人が拍手をする。
龍雄「実話なのか？」
佳代子「実はね」
裕美「おいおい」
美代子「いいじゃん、カヨコ！ どんどん吐き出しちゃいなよ」
佳代子「もう大丈夫。ありがとう」
裕美「じゃあ、替え歌じゃない、カヨコのオリジナル曲を聴かせてくれよ」
龍雄「お、いいね。聴きたい、聴きたい」
佳代子「ありがとう。（スマホを見ながら）じゃあ、これにしようかな」
美代子「それって、一番目に再生回数が多い曲？」
佳代子「ザンネ～ン、出来立てホヤホヤの新曲だから、まだYouTubeにアップしてない
の」
龍雄「ていうことは、俺たちが初めて聴くのかな？」
佳代子「ゴメン、もう友達四人に聴いてもらってるよ」
三人「ザンネ～ン！」
佳代子がスマホのスタートボタンを押す。
音楽２『カオスフェノメノン～混沌現象』イン。
佳代子がマイクを持って立ち上がり、歌う。
♪
と或る日の夜 不思議なことが起きたの
久しぶりに その写真を見ていたら
懐かしくて 段々引き込まれて
○五人の少女の写真
その中の一人が、現在の佳代子に変わり、五人が動き出す。
♪
気がつくと その写真の中に 今の私がいて
みんなと笑い合っていたの 楽しんでいたの
これは 夢だと思って
ホッペをつねってみたけど
夢じゃなかったの なにコレ？
カオスフェノメノン 混沌現象
○カラオケ店・部屋・内
現在の姿の佳代子が歌い、他の四人の少女が盛り上げている。
♪
別の日の夜 また起きた 不思議なこと
すでに私 その写真の中にいて
しかも今の 私の姿のまま
でもみんな 話しかけてくれて 何も変わらなくて
あの頃のままで楽しくて 笑いっぱなしで
そこへ、美代子、龍雄、裕美も現在の姿で現れ、一層盛り上がる。
♪
現実のはずないって
ホッペを叩いてみたけど
あの時代のまま そのまま…
カオスフェノメノン 混沌現象
だけど 夢だと思って
ホッペをつねってみたけど
夢じゃなかったの なにコレ？
カオスフェノメノン 混沌現象
カオスフェノメノン
カオスフェノメノン
カオスフェノメノン
カオスフェノメノン…
（終）