![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/111263821/rectangle_large_type_2_a7e3599df4b04fe733731be02731f03f.png?width=1200)
140字小説【遠】三本立て
※『夏の星々』にツィッターで参加させていただいた作品を転載します。
(*´ω`*)ツィッターでは行間は詰めてますが、読みやすいように開けました。
課題の文字「遠」を使った日本語の140字の小説です。
その一
ある夏の日、幼い私は母に手を引かれ海へ行った。
海は家からそう遠くない所にあった。
母は季節の果物をおやつ代わりに携える人で、その日は桃だった。
甘いあまい桃。
「これを食べたらいこうか」
と母は言った。
「どこへ?」「遠いところ」。
でも私たちは行かなかった。
桃を見ると思い出す、遠く甘い夏。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その二
「あれはなに?」
私が遠くを指さすと彼は答える。
「君が見なくていいもの」
「ふうん」。「じゃあ、それはなに?」
私がもっと近いところを指さすと彼は答える。
「君が見なくていいもの」
「ふうん」。「じゃ、あなたはだれ?」
私が彼を指さすと彼は答えた。
「君が見ていいものさ」。ふうん、つまらない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その三
『落とし文』。
それは、手渡しでは想いを伝えにくい相手に気づいてもらうため、近くに落として拾わせる置き手紙のことである。
私は書いた手紙を、意中の彼の通り道にぽとんと落とした。
彼は気づいたが、足先でちょんちょんとつつくと、すぐに飽きて遠くへ歩き去っていった。
猫に落とし文は効かない…。
…『落とし文』という言葉は、ミモザさんの作品で出逢って、一緒に楽しませていただきました☆☆☆
ミモザさん、ありがとうございま〜す!
いいなと思ったら応援しよう!
![ikue.m](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/85938613/profile_b36c697d6d0f1e520b2b14a37efec6cb.jpg?width=600&crop=1:1,smart)