掌編小説【伝説の】♯毎週ショートショートnote
お題「建設の頓珍漢」
【伝説の】(410文字)
ふと、暇つぶしに別荘でも作ろうかと思った。
来訪した営業マンが差し出した名刺には『コブタ建設の頓珍漢』と書かれている。
「はじめまして。私は営業のトンと申します」
彼は甲高い声で説明を始めた。
「弊社では、素材別に三タイプの住宅をご紹介しております。最も割安なのが藁、次に木、一番人気はレンガです」
「鉄筋はないの?」
私は少しからかってみた。
「私共は、お客さまに自然素材の安心感をご提供しております」
慇懃に返された。
「御社の売りは『伝説の安心感』だものね」
「さようでございます。ですからレンガが一番人気です」
トンさんは自慢気に鼻の穴を膨らませた。
「弊社のレンガ造りの家は、数百年前からどんな強風にもビクともしませんので」
しかし私は大富豪なので、三タイプ全て発注した。
トンさんは笑顔で、兄達も喜びますと言った。
現場には伝説の三兄弟が来て、トンチンカンと音を立てながら楽しそうに家を建てている。
完成したら伝説の狼も来るのかもしれない。
おわり
(2023/4/18 作)
『たらはかに』様の4/16~4/22のイベントに参加させていただきました☆
今回は裏お題ですが、書いているうちに偶然、表お題も入りました。
やったー。
こういうのを、せれんでぃぴてぃというのかしら…(*´ω`*) 知らんけど。
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