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薬学用語の再定義① 服薬指導

薬剤師が日常的に使用している薬学用語の中に、違和感を感じる言葉がいくつか存在する。

そこで、それらを再定義し、
より良い言葉に置き換えていくことで、
薬剤師ライフが充実したものになるかも?

第1回目は「服薬指導」

薬剤師が当たり前のように使っているこの言葉。
私は、あまり好きではない。
指導という表現がパターナリズム的(簡単に言うと上から目線)であり、
現代医療に即していないと感じるのである。

※パターナリズムとは
患者に選択肢を選ぶ能力がないという想定で、その機会を与えず、医師などの専門家が意思決定する。専門家主導の父権主義的な方法で、父親が小さな子供のためによかれと思って子供の好み・意向をあまり聞かずに意思決定することから来ている。

①「服薬指導」とは?

まず、服薬指導の定義を確認する。
実は、『薬剤師法』の中には、服薬指導という文言はない。

薬剤師法第25条の2
「薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売または授与の目的で調剤したときは、患者または現にその看護に当たっているものに対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」

この中の「薬学的知見に基づく指導」が「服薬指導」という言葉となって使われているようである。

②「服薬指導」という言葉の意味

服薬とは、

「薬をのむこと」 

広辞苑より

である。

したがって、服薬指導は、
「薬をのむことを指導する」
という意味となる。

やはり「服薬指導」が「薬学的知見に基づく指導」の的確な表現とは到底思えない。

③服薬と薬剤師

医師が処方された薬を飲むかどうかを決めるのは、患者自身である。
薬剤師が飲むよう促すものではない。

薬剤師がすべきことは、
患者が薬の効果と副作用を正しく理解し、
納得して服薬できるよう支援する
ことである。

④「服薬指導」ではなく、「服薬支援」

日常的に薬剤師が行っている「服薬指導」という業務は、
「服薬支援」こそが正しい表現ではないだろうか?

「服薬支援」をするために、

  • 薬学的知見に基づく評価

  • 薬学的知見に基づく説明(時として指導)

を行うのである。

まとめ

「服薬支援」という意識を持つことで、
薬剤師はパターナリズムから脱却し、
シェアードディシジョンメイキング(共有意思決定)を支援する医療者になれる。

「服薬支援」が実践できれば、
薬剤師ライフはよりキラキラしたものになるはずである。

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