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2015年8月の記事一覧
それでも世界は 輝いている 27話
「ほら、良いんだって。行きましょうよ。見つかるとまた五月蠅くどやされるわよ」
「だな。行こうぜ」
由羽とレアルは先に行こうとするが、ヨウだけは手を差し伸べたままだ。
「さ。一緒に行こうよ」
返事はできなかった。ただ、乙姫は頷くと、ヨウの傍まで歩いて行った。何故、明鏡で一番偉い自分がこの少年に従うのか、乙姫には不思議だった。普段は、付き人の言うこともまともに聞かないというのに。だが、彼と
それでも世界は 輝いている 26話
「ヨウ……あなたは、ローゼンティーナで何をしているのですか……?」
小さな手を太陽に翳す。
明鏡のトップに君臨する少女、乙姫は物憂げな溜息をついて目を閉じる。
白袴を着た乙姫は、長い髪を扇状に広げて草むらに横たわっていた。爽やかな風が夏草の香りを運んでくる。
世界は動こうとしている。
今は小さな波紋のような現象だが、それはやがて大きなうねりとなって世界を飲み込むだろう。
御
それでも世界は 輝いている 25話
「帰ってきたのね? ね、ヨウは? 一緒なんでしょう?」
由羽は素足のまま縁側から飛び降り、ジンオウに駆け寄る。
「ヨウの奴か? あいつは……」
ジンオウは無精ひげを弄りながら、青空を見上げた。
「ん~、今頃、ローゼンティーナだろうな。もしかすると、この時期なら、下手をすれば光輪祭に出ているんじゃないか?」
「ハァ?」
由羽は甲高い声を出す。
「ちょっと! ジンオウ! ローゼンテ
それでも世界は 輝いている 24話
ローゼンティーナから遙か東、太平洋のど真ん中に明鏡と呼ばれる孤島があった。円形に近い、面積二〇〇〇㎢の小さな島だったが、過去数千年、人類の運命を左右してきた島だ。
明鏡は『未来視の巫女』を頂点として、司法、立法、行政、軍事の四部門に別れている。中でも軍事は御剱や魔神機など、下手をすればガイアそのものを滅ぼしてしまう危険な物を扱う部門であり、そこのトップは未来視の巫女が着いていた。
「姫様!
それでも世界は 輝いている 23話
「でも、お二人の意思を確認しないで良いの?」
「レイチェル先輩、俺の意思も確認して欲しいのですけどね」
「ハァ?」
アリティアが不機嫌そうな声を発し、見上げる。シジマはアリティアの視線を受けると、「なんでもありません、はい」と小さく言って、すぐに視線を明後日の方へ向けた。
これは、良いチャンスだった。もし、エストリエのメンバーをバックに付けられれば、これからの行動も幅が広がる。
「あ
それでも世界は 輝いている 22話
「はぁ~、もう、仕方ないわね。光輪祭のメンバーは五人か……」
顎に手を当てたアリティアは、何かを思いついたかのように指を差し点呼を始めた。
「1、2、3……」
一人目は、眼鏡の少女、二人目はシジマ、三人目はヨウで、最後の指はヨウの後ろに隠れるようにいるサイに向けられた。
「そこの小さいの」
呼ばれ、背中にいるサイが「ひっ」と小さな悲鳴を上げた。
「聞こえないの? チビ、あんたよ、
それでも世界は 輝いている 21話
『……よくやった。次、サイクロフォン!』
溜息交じりにメイは良い、ヨウは緊張した面持ちのサイと交代した。
「がんばれよ」
ヨウの言葉に、サイは人形のようにコクコクと頷いた。
明らかに緊張している。彼は、実践には向かないと言っていたが、どうやらその通りのようだ。サイの放つ光弾は標的に掠る事さえできず、バッテリーをからにしてしまった。
悄然と項垂れるサイに、心ない者達は笑うが、ヨウは
それでも世界は 輝いている 20話
ローゼンティーナの授業は多岐にわたった。
数学、現代文、歴史、そうした基本的な授業は当然として、機械工学からセフィラー学をこなし、戦闘訓練は毎日のように行われていた。
一週間、ヨウは慣れない集団生活に溶け込もうと、積極的に動いた。まず、サイが友人達に紹介してくれた。ブラックウッド・ロッジの寮生である彼らは、快くヨウを迎えてくれた。彼らもまた、ヨウとゼノンの戦いを見ていたのだ。
「あの時
それでも世界は 輝いている 19話
少し前、ローゼンティーナの地下で魔神機が発見された。その知らせは、遠くダアトにいたヨウとジンオウの元まで届いた。
破壊された魔神機。核爆弾の直撃でさえ耐えうる装甲を誇る。その破壊された魔神機が世界各地で見つかっている。
「魔神戦争の折、明鏡も二つに分裂しました」
ヨウはホログラム越しにエドアルドを見る。ちょうど、ヨウが考えていた事の答えを、エドアルドは口にしようとしていた。
「諸説あ
それでも世界は 輝いている 18話
「では、ヨウ君。席に戻って。せっかくだから、その辺りの話をしようか」
ヨウは項垂れる。もう一度、デスクに置かれたエレメントボールを見る。電源を切られた今は、静かに佇んでいるだけだ。
好奇の目を向けられ、クスクスと笑われながらヨウはサイの隣へ戻った。サイは気まずそうに微笑みながら、「気にしちゃ駄目だよ」と励ましてくれた。その事が、余計ヨウを傷つけた。
ソフィアだけが目的で此処に入学したの
それでも世界は 輝いている 17話
思った以上に、授業は淡々としていた。当然と言えば当然だが、ヨウはもっとおもしろ事を想像していた。
教壇に立つ教師もいれば、データ通信だけで授業を行う教師もいた。途中から参加した授業だったが、思いの外理解できた。ジンオウから色々と教わってはいたが、彼がまともなことを教えていたことに、ヨウは驚きを覚えた。
「師匠は、戦闘技術以外にも俺に教えていたんだな」
教え方が適当だと思っていたが、ジン
それでも世界は 輝いている 16話
「ゴメン、あまり、こういうことには慣れていないんだ。小さい頃、師匠のところに行ってから、ずっと師匠と二人きりで生活してきたから。同年代の友人というか、そういうのがいなくってさ」
「そうだったのか……」
サイがさらにしょぼんと肩を落とす。どうやら、触れてはいけないことに触れてしまったと思ったようだ。
「サイ、別に気にするようなことじゃないよ。シジマも、気を悪くしたなら謝る。だけど、俺は全然迷
それでも世界は 輝いている 15話
「あのさ……、ヨウは副代表と仲が良いみたいだけど……」
「ん? 俺とアリエール達の関係?」
サイは頷く。
「そうだな、別に隠すような関係じゃ無いけど、俺の師匠とアリエール達は仲が良くて、昔から俺とも付き合いがあったんだよ。その伝手で、此処に入学したって訳」
「そうなんだ。でも、凄いね。学園長の伝手だなんて、普通はみんな厳しい試験をパスして、やっと入れるのに」
「………悪いな。変なこと言
それでも世界は 輝いている 14話
「二期生まで、相部屋よ」
「はい」
ヨウは頷く。
シノはもう一度ディスプレイに手をかざすと、呼び鈴が鳴らされた。「はい」と、中から声が聞こえ、すぐに扉が開いた。
「こんばんわ、サイクロフォン。突然だけど、話はマリアから聞いているわね。今日から、彼と相部屋になってちょうだい」
「………はい」
サイはシノの顔を見て頷くと、伏し目がちな瞳をこちらに向けた。
「俺はヨウ・スメラギ。よろ