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それでも世界は 輝いている

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それでも世界は 輝いている 34話

「ああ、やりやがったな……」

 ジンオウが額を押さえて溜息をつく。由羽は居並ぶメンツを見渡し、ふんっと不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「美和、あんたの荷物、置いていくから。必要な物はあっちで買うわ」
 誰もが由羽を見て盛大に顔を引きつらせるが、その足下でのたうち回っている美和を心配する人物はいない。乙姫でさえ、肩をすくめて由羽の肩を叩く。
「由羽、よろしくお願いします」
「分かってるって。乙姫は、三

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それでも世界は 輝いている 33話

 早朝の神宿山には、うっすらと朝靄が掛かっている。

 湿り気を帯びた清浄な空気を由羽は胸一杯に吸い込んだ。しばらく、この地には帰れない。もしかすると、これが最後になるかもしれない。由羽は何度も呼吸をして、慣れ親しんだ明鏡の空気で体を清めた。

 社の前には乙姫とジンオウ、それから各部門のトップである晃司、玉江、壮一、そして、由羽の妹で鈴守である美和がいた。

「由羽、渡したプレートとブックは持っ

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それでも世界は 輝いている 32話

「由羽、どうしましたか?」

「どうもしないわ。それで、私とジンオウを連れてきたって事は、未来視を見せるんでしょう?」

「はい」

 神室は様々な光で満たされていた。本来、ここには光源がなく静謐な闇が満ちた空間だった。だが、乙姫の御剱、三千世界に反応し、壁や床に埋め込まれたチップが反応して光を発する。神室は、乙姫が見る未来視を空間に映し出す部屋なのだ。

 基本、未来視の力は扱い方によっては世界

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それでも世界は 輝いている 31話

 御剱だった。この部屋にある武器、全てが御剱であり、繰者の決まっていない物ばかりだった。年に一度行われる御剱見聞では、この部屋に少年少女を招き入れ、自らに適合する武器を見つけてもらうのだ。御剱は高位の精霊が宿っており、精霊に気に入られなければ、どんなに力があったとしても武器を手にすることはできない。精霊に選ばれた人物は、何も言われずとも、自らの手にする武器が分かるのだ。

 乙姫は御剱の中を歩き、

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それでも世界は 輝いている 30話

「重要なのは、傀儡が動いているという点です」

「あの裏切り者ども、いつか決着を付けなきゃね」

 玉江が憎々しそうに吐き捨てる。

 千年前の魔神戦争の折、いくつかの御剱と魔神機を持って明鏡から離反した者達がいた。それが、傀儡と呼ばれる集団だ。彼らは、未来視により決まる世界を良しとしない一団だった。繁栄も滅びも、平和も戦争も、全て人の自由意思によって決められるべき、もしそれで人類が滅亡することに

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それでも世界は 輝いている 29話

 明鏡の中でも、特に特別な区域、神宿山(かみすくやま)は神域とされていた。神様の宿る山といっても、それは旧時代の超越した神ではなく、未来視で世界を導く乙姫が住み、未だ繰者の決まらない御剱がある。地下深くには、いくつもの魔神機が安置されている。

 神域は明鏡の住人でさえ、なかなか足を踏み入れられなかった。入れるのは、各部門の幹部クラス、そして、御剱繰者とその相棒である鈴守、そして、乙姫の護衛や世話

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それでも世界は 輝いている 28話

「乙姫! こら、起きなさい」

 言葉と共に、頭頂部を激しい痛みが襲った。驚いて目を開けると、由羽がこちらを覗き込むように立っていた。彼女の右足が不自然に振り上げられていた。先ほどの痛みは彼女のつま先で蹴られただろう、乙姫が起きなければ、後一発くれようとしていたらしい。

「なあに?」

 いつの間にか寝ていたらしい。乙姫は口を押さえてあくびをした。

「ジンオウが来てるわ」

「そうですか」

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それでも世界は 輝いている 27話

「ほら、良いんだって。行きましょうよ。見つかるとまた五月蠅くどやされるわよ」

「だな。行こうぜ」

 由羽とレアルは先に行こうとするが、ヨウだけは手を差し伸べたままだ。

「さ。一緒に行こうよ」

 返事はできなかった。ただ、乙姫は頷くと、ヨウの傍まで歩いて行った。何故、明鏡で一番偉い自分がこの少年に従うのか、乙姫には不思議だった。普段は、付き人の言うこともまともに聞かないというのに。だが、彼と

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それでも世界は 輝いている 26話

「ヨウ……あなたは、ローゼンティーナで何をしているのですか……?」

 小さな手を太陽に翳す。

 明鏡のトップに君臨する少女、乙姫は物憂げな溜息をついて目を閉じる。

 白袴を着た乙姫は、長い髪を扇状に広げて草むらに横たわっていた。爽やかな風が夏草の香りを運んでくる。

 世界は動こうとしている。

 今は小さな波紋のような現象だが、それはやがて大きなうねりとなって世界を飲み込むだろう。

 御

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それでも世界は 輝いている 25話

「帰ってきたのね? ね、ヨウは? 一緒なんでしょう?」

 由羽は素足のまま縁側から飛び降り、ジンオウに駆け寄る。

「ヨウの奴か? あいつは……」

 ジンオウは無精ひげを弄りながら、青空を見上げた。

「ん~、今頃、ローゼンティーナだろうな。もしかすると、この時期なら、下手をすれば光輪祭に出ているんじゃないか?」

「ハァ?」

 由羽は甲高い声を出す。

「ちょっと! ジンオウ! ローゼンテ

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それでも世界は 輝いている 24話

 ローゼンティーナから遙か東、太平洋のど真ん中に明鏡と呼ばれる孤島があった。円形に近い、面積二〇〇〇㎢の小さな島だったが、過去数千年、人類の運命を左右してきた島だ。

 明鏡は『未来視の巫女』を頂点として、司法、立法、行政、軍事の四部門に別れている。中でも軍事は御剱や魔神機など、下手をすればガイアそのものを滅ぼしてしまう危険な物を扱う部門であり、そこのトップは未来視の巫女が着いていた。

「姫様!

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それでも世界は 輝いている 23話

「でも、お二人の意思を確認しないで良いの?」

「レイチェル先輩、俺の意思も確認して欲しいのですけどね」

「ハァ?」

 アリティアが不機嫌そうな声を発し、見上げる。シジマはアリティアの視線を受けると、「なんでもありません、はい」と小さく言って、すぐに視線を明後日の方へ向けた。

 これは、良いチャンスだった。もし、エストリエのメンバーをバックに付けられれば、これからの行動も幅が広がる。

「あ

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それでも世界は 輝いている 22話

「はぁ~、もう、仕方ないわね。光輪祭のメンバーは五人か……」

 顎に手を当てたアリティアは、何かを思いついたかのように指を差し点呼を始めた。

「1、2、3……」

 一人目は、眼鏡の少女、二人目はシジマ、三人目はヨウで、最後の指はヨウの後ろに隠れるようにいるサイに向けられた。

「そこの小さいの」

 呼ばれ、背中にいるサイが「ひっ」と小さな悲鳴を上げた。

「聞こえないの? チビ、あんたよ、

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それでも世界は 輝いている 21話

『……よくやった。次、サイクロフォン!』

 溜息交じりにメイは良い、ヨウは緊張した面持ちのサイと交代した。

「がんばれよ」

 ヨウの言葉に、サイは人形のようにコクコクと頷いた。

 明らかに緊張している。彼は、実践には向かないと言っていたが、どうやらその通りのようだ。サイの放つ光弾は標的に掠る事さえできず、バッテリーをからにしてしまった。

 悄然と項垂れるサイに、心ない者達は笑うが、ヨウは

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