【南会津の旅2019】瑠璃色の天井絵に彩られた薬師堂を中心に〜前沢曲家集落②(福島県南会津町)
2019年秋、南会津の前沢曲家集落への旅②は、家並みと集落の一角に佇む前沢薬師の瑠璃殿を中心に紹介します。その名称通り、瑠璃色の天井絵が見事です。
資料館中心に紹介した前回記事はコチラ↓
「おいでよ!南会津」サイト↓
前沢集落を一望できる展望台へのアクセスなどがまとめられています。
茅葺屋根の家並み
瑠璃殿ご紹介のその前に。またまた家並みの写真を(;^_^
前沢集落に見られる「曲家」とは、L字型の形をした茅葺屋根の民家のこと。屋外に突き出したL字型の部分は土間で、かつては馬屋として使われていたそう。
地域によっても異なると思いますが、モータリーゼーションが進む昭和50年代まで荷物の運搬や農耕には、おもに馬や牛が使われており、農家の敷地内には馬や牛の小屋が設けられていました。
その馬屋がなぜ屋内にあるのか。それは南会津の気候と関係します。南会津は全国屈指の豪雪地帯。冬には一晩で1メートル以上の積雪があることも珍しくありません。農家の人びとは、馬の世話をするため、雪かきをして外に出なければなりませんでした。
そこで、屋内に馬屋を設けたのだそうです。それがL字型に曲がって見えたため、「曲家」と呼ばれるようになりました。
前沢曲家集落の曲家の見どころの一つは、茅葺屋根と漆喰の外壁の統一感。前沢曲家集落は、明治40年の大火により、多くの建物を失いました。その後、現在残る曲家がいっせいに再建されたました。
その際に活躍したのが、周辺の大工だったそう。この大工さんが何人いたのかは不明ですが、同じ時期に同じ人(たちかも?)によって建てられたことが統一感につながっているようです。
ちなみに、Wikipediaによると、曲家には「中門造系曲家」と「南部系曲家」があり、前沢曲家集落は「中門造系曲家」に分類されるそう。違いは、「中門口」と呼ばれる曲り部(突出部)の先端に入口があるかどうかのようです。
下の写真は共同の洗い場。集落背後の山からの湧水が水路となって、古い道に沿って西から東へ流れ、立岩川に合流。その水路沿いに7ヵ所の水場があり、生活に利用されているそう(今もなのかは不明ですが、野菜や農具を洗うのに便利そう)。
茅葺屋根、白い漆喰、腰壁と、統一感を感じる家並み。
①でも紹介しましたが、オニユリが咲いていました。
瑠璃色の天井絵が彩る前沢薬師堂
ここからは集落の一角に佇む薬師殿をご紹介。
解説板には、「由緒は不明ながら、享保6年(1721)の火災で焼失し、再建された」とあります。当時は周辺中もっとも美麗な建築物で、「近郷第一の御堂」と評判が高かったそう。
しかし、当時の建物は明治40年(1907)の集落内の大火により類焼。その後再建されたのが、現在の御堂なのだとか。
公式サイトによると、その際、集落の鎮守様である鹿島神社も焼失。こちらもお堂ともに再建されたようです。
再建時に火元とされた住民により天井に瑠璃色を基調とした絵画が描かれ、建物の入口にも瑠璃色の塗装跡が残っているそう。もしかしたら、かつては御堂が瑠璃色に輝いていたのかもしれません。
昔は近くに寺もあり、能舞台もあったといわれているとか。もしかしたら、檜枝岐歌舞伎のように住民たちが自分で舞を舞って楽しんでいたのかも?(旅芸人が来た可能性もありますが)
この写真の中央より下に描かれた「馬に乗る人」のあたりが、今も残る瑠璃色の塗装かな?
私は、この御堂の木鼻が好きです(;^_^
今回「木鼻」を調べていて、彫刻されている生き物が、人びとの悪夢を食べてくれる獏(ばく)だと知りました。ずっと、龍か獅子だと思っていました!(だけど、龍のところもあるような気がします)。ちなみに「木鼻」とは、「木の端」を意味しているそう。また一つ、有意義な知識が増えた_φ( ̄ー ̄ )
こちらの木鼻もかわいらしい。獅子っぽいです。
歳月を経た建物と鮮やかな千羽鶴、緑の対比が美しい。
龍や四季の花などを描いた瑠璃色の天井絵。小勝享さんが奉納した案内板によると、描いたのは「小勝廷次」という方。姓から考えると、享さんのご先祖様?
馬の守護神「馬力神(ばりきしん)」を祀る石碑。同様の石碑は、おもに栃木県や宮城県で見られるそう。全国的に見られる「馬頭観音」や「馬頭観世音」の石碑と同様、人の暮らしになくてはならなかった馬を供養するための石碑のようです。
「馬力神」の記述は、コチラのページを参考にしました↓
瑠璃殿を訪ねて、また集落内をぶらり。以前も見た「無人販売処」に出会いました。今回は「美味しい完熟トマト」が並んでいました。
ツヤツヤのトマト、100円!(安い!)
最後に。館岩川と秋空。
この記事を書くにあたり、サクッといろんなサイト様を検索して、訪問前にもっと色々調べておくんだった!と後悔。見どころ満載だー! いつも行き当たりばったりだからなあ…(それはそれで楽しいけれど)
日本の原風景が残る南会津。また訪ねてみたいと思います。
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