ナカの姫~五分姫Ⅲ~
あー・・・全身ボロボロね。こりゃ。
全く。また『お願い事』のために自己犠牲、か。ここの所、そんなことばっか。
リジェの起きてる時の事情はワタシだって解っているわ。だって、ワタシの方がリジェよりも何倍も位が上ですもの。
そう思いながら、体を起こしてうーん、と伸びをした。
軋んで痛い体を動かして服をまくってやると、体中が鞭打ちの痣まみれだった。
「わーわーひっどーい・・・いい気味。んーでも日常生活に支障出るわね。治るかな?」
他人事のように呟いて、まったりと服を着なおして、大きなベッドにドカッと腰掛けた。
リジェ、というのは愛称。
ワタシが眠ってるときに活動している、温度のあるこの体の持ち主のこと。
簡単に言うと、前回動揺しながら五分のコを出そうとしてたコ。
何?このワタシがこの光景を見られていることに、気づいていないとでも思った?
あ、ちなみに、あの五分のコにも愛称があってね、ネグっていうの。
二人でネグリジェ。睡魔におそわれっぱなしの二人にお似合いでしょ?
前々回の終わりに「かぁいい」がうつってたのはワタシ。あ、私の名前?う~ん・・・じゃ、一切関係ないノノカで。
リジェの体が眠るようになったのは、ワタシがリジェの体にもぐりこんで、一日眠りについたら、丸一日起きないように体を作り変えたから。
同じ原理でネグには、オカミサマが住み着いてる。
ワタシがネグに交渉して、ワタシの力でネグを監禁したのに、いつの間にかあれやこれやの主導権奪いやがって・・・。
そんでもって、リジェの時は強制的にポニーテールにくくりつけられてた髪は、ワタシになると、解かれて今はリジェご自慢のサラサラストレートがワタシの意のままってワケ。
それからオカミサマ 笑よりも偉い私だから、当然、許可なしに外にも出られるわ。
リジェと違ってね!!
・・・ま、こんなにワタシになった時に支障が出てるんだから、いい加減自由に部屋の行き来くらいさせてもいいと思うんだけど。
オカミが毎度毎度飽きもせずに『部屋を出入りした代償』として、リジェに拷問するから、自分がされると軟弱なリジェは拷問途中で意識が途切れ、そんで仕方なく、オカミの阿呆が部屋に戻すじゃん。
で、ワタシに切り替わったときに痛みが走って、しんどいのなんの。
はー・・・・正直、リジェには体共有してるのもあって恨みしかないし、全然タイプじゃない。けどまあ、少しくらい手を緩めてやってもいいと思うのよ。自分じゃ動く気ないけど。
そりゃあ、ワタシが動いたら一発よ!なにせ、リジェよりもオカミサマよりも偉いからね!
「あータイクツ!」
ネグを見てるときは幸せで、時間が経つのを忘れちゃうけど、今はネグはおっさん・・あーオカミサマが入ってるし、動き可愛くないし、せめて乗り移らずにネグが寝てたら、一日寝てるネグを見ているだけで楽しいのに。
まあ、今はおっさんが次起きたネグが困るように部屋の配置変えて遊んでるし、起きたネグがどう動くか予想するのはそこそこ暇つぶしになりそうだけど、想像しつつコイツ見てる一日はさぞつまんないだろうなあ。
うん、しゃーない。
「今日は早めにリジェに体を返してあげよ。あの子、最近がんばってるし」
なにやら、ここの所ほぼ毎日オカミサマに拷問されるのを覚悟した上で、書斎に入り浸ってるし。まあ、書斎まで届かない日もあるけど。
書斎で意識が途絶えると、強制的にオカミサマが部屋に戻すから、翌日書斎に行くにはまた拷問を受けなくちゃならない――全く、おっさんは絶対、それを口実にいじめたいだけだわな。リジェが不憫。ほんの少しばかりね。数センチ!
タイプじゃないし、好きになれないけど、長い間、一緒の体を使ってるし流石に愛着もわいてくる。
正直、ど真ん中ストレートでタイプのネグは、可愛すぎてあの子の体を乗っ取るキニもならない。反応見たいし。ま、おっさんが使ってるのは気に食わないけど。
まー・・この理屈が通るんなら、オカミはリジェがタイプなのか。だからいじめたい、と。趣味悪!
あ゛ー・・・・好みってメンドクサイ。
リジェ、自分自身が感じる違和感と、羨ましさの狭間で、出してあげようって必死こいてる。
タイプじゃない・・・恨みもある・・・けど・・・うふふふ、そういうムジュンしてるトコ、好きよ。
おかしいわね。こんな気持ちになるなんて。
でも、もうこの体も飽きたわね。リジェも思い出しそうだし。そろそろかしら。
じゃあ、しゃーないわね。前言撤回して、手伝ってやることにしましょ。
さて。
ワタシを見てるアナタ?
ワタシはもう寝るから、リジェによろしく言っといて・・・ん?無理かしら?
じゃ、いいわあ・・・ふわぁ・・・おやすみなさーい。