像
一枚ずつ剥がれて着地した木の葉のうえにかさなる
獣におられて枯れた枝のうえに積まれた
刈草のなかに起こされた
火と煙というものの
横に老人は腰をかがめていた
頬を紅潮させ
目を充血させて
世界の中のいくつかの像がけむりとなって
世界のなかに融けてゆくのをみている
剥がれてしまった言葉は
折られた言葉は
燃えるだろうか
いくつかの名辞
陽に照らされて乾いてしまったいくつかの動詞は
燃えることができるだろうか
その根源的な酸化反応は
この手に黒い煤と火傷を残せるだろうか
あしもとの泥は紅く染まるるだろうか
その炎は
産道から掘り出した砂礫から金属を融かしだすことができるだろうか
その金属はあなたの朝を湯気で満たせるだろうか
その金属はあなたの象牙を保護できるだろうか
そのけむりに涙をながすことができるだろうか
そのけむりは世界そのものに融けてゆけるだろうか
その火と煙の立ちのぼる炉辺にわたしはすわっている
そこを立ち去ることはできない
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