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彼は自転車で坂を駆け上がっていた。同じ高校の生徒たちが談笑し下っていく横を、荒い呼吸の立ち漕ぎで逆走していく。背を照らす夕日はまだ健在だが、空は濃い色へ移ろっている。 絶対。なんとしてでも間に合わせる。 彼は回転数を上げた。 少し前。 「おまえさぁ、今日って言ってなかったか?」 大袈裟なほど呆れた顔をされて、彼は顔ごと目を逸らした。錆びたブリキのようなガタつき具合に友達は小さく溜め息。 「そりゃタイミングがあるから無理強いするのもどうかと思うけど、ただでさえズルズ