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彼は自転車で坂を駆け上がっていた。同じ高校の生徒たちが談笑し下っていく横を、荒い呼吸の立ち漕ぎで逆走していく。背を照らす夕日はまだ健在だが、空は濃い色へ移ろっている。 絶対。なんとしてでも間に合わせる。 彼は回転数を上げた。 少し前。 「おまえさぁ、今日って言ってなかったか?」 大袈裟なほど呆れた顔をされて、彼は顔ごと目を逸らした。錆びたブリキのようなガタつき具合に友達は小さく溜め息。 「そりゃタイミングがあるから無理強いするのもどうかと思うけど、ただでさえズルズ
『個性に合わせた教育。その子の才能を伸ばしましょう』 それで私はバスケをやるようになりまして、この夏、私よりも遥かに才能のある方々を前に無様に散ってしまいました。小学一年から高校三年までの十二年間を費やしてこの結果なんだから将来性はないしょう。おしまい。 ということで、私は現在、何もやる気が起こらない状態なのです。バスケが好きという気持ちは変わらないけど、「あなたにはバスケの才能があるの」と言われてバスケに特化した英才教育を受けて、そしてその唯一のものが見事なまでに粉