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「OOPTOY」第3話:ルルエル
二年前。
「あの子は助けちゃダメだ!」
マルンは必死でカートを羽交い絞めにした。国境の平原を一人の女の子が歩いていく。その先にいるのは百人を超える鉄砲部隊である。
それがあるのは城壁の向こう側。カートは門扉の前で暴れていた。
「離せマルン! あの子を見捨てろって言うのか!」
「彼女は何百人も殺めてる! それが彼女の望まなかったことでも、彼女は今、その罪を償おうとしてる!」
「だから
「OOPTOY」第2話:箱庭
二十平米ほどの部屋。
両開きの窓を繋ぐアームが自ずと外れ、風に押されるように内側に開いた。そこへ大きな鳥が飛び込んできた。
「トゥルッポ! トゥルッポ! へいへいモーニングバードの参上だぜ! まだベッドでおねんねしてるのはどこのどいつだい?」
鳥は家具や床をぴょんぴょん跳ね回り叫び回り暴れ狂い、最終的に「ふぉおおおお」と奇声を撒き散らしながらドアに突進し、頭を盛大に打ち付けたことで気絶
「OOPTOY」第1話:渡されたもの
あらすじ
カートは孤児院に入り、十歳にして孤児が増え続ける現状を問題視していた。ある日孤児院にサーカス団がきた。世界中を旅する彼らに孤児を減らす方法を訊いたところ『全能』のオープトイへ挑戦することを提案された。友達が一緒に旅に出ると言ってくれた。
十年後、『全能』を手に入れたカートは半ば引きこもっていた。その日ユルマリという友人が「会ってほしい人がいる」とカートを連れだした。少女が追われてい
【願いの園】第二章 06(1)
ちょうどサスペンスドラマで犯人が追い詰められるような崖に降り立った。いや、隠岐の摩天崖のように鋭く突き出て切り立っていると言った方がいいのかな。とにかく、先端にいる。下が巨大な湖になっていて、数百メートルはある。落ちたら死ぬ高さだ。
森の境界線は崖から随分と離れていて、仮にムカデの登場に狼狽してしまっても落ち着きを取り戻せるだけの余裕はありそうだ。
「きっつ」
と悪態をついて吉岡さんは勢いよ
【願いの園】第二章 02
「こんばんは、藤田さん」
気づくと目の前に兎梅ちゃんが座っていた。学生服らしき姿で、歓迎とも迷惑とも取れない平坦な声と表情だ。その背後にはシックな内装――管理棟のラウンジと確認でき、奥にはガラスの壁があって、遠景に草原と雲海が見える。挨拶に対して真っ昼間の明るさだった。
ちゃんと『願いの園』に呼んでもらえたようだ。
昨日と逆で、入って左側の席にいるのだけど、これは単純に来客用と呼び出し用で分
【願いの園】第二章 01
アラームがけたたましく鳴っている。
寝惚け眼には見慣れた天井。朝だった。
なんだか凄く疲れる夢を見た気がする。凄くだるい。二度寝したい。早く夏休みになればいいのに。怠け者な私とは対照的に枕元ではスマホが一生懸命仕事しており、うーんとうめきながらガシッと掴んでアラームを止めた。入れ替わるように蝉の声が聞こえてきて、起きなきゃなぁと。ふわあ、とあくびしながら部屋を出る。
午前七時前であり、汗をかく
【願いの園】第二章 00
端的に言って、私は彼女が嫌いだった。
まず協調性がない。
決して空気を読まない訳じゃないけど、「これだけやったら十分でしょ?」と言わんばかりに最低限しかやらない。合唱祭とか体育祭とかみんなで頑張ろうってときにも冷めた顔して適当に流して。本気でやってる人だっているのに平気で踏みにじる態度が本当にムカつく。
とはいえ、これは仕方ないと理解してる。嫌がる人に無理させるのも違うし、向き不向きだってあ