【内部通報制度】問題行為を是正する際に留意すべき3つの事項
実効性の高い内部通報制度を構築し運用するためには、次の3つの業務を適切に行う必要があります。
1.内部通報受付業務(内部通報を適切に受付する。)
2.調査業務(内部通報内容の調査を行う。)
3.是正措置業務(調査の結果、問題行為が明らかになった場合には、是正に必要な措置をとる。)
内部通報内容の調査を行い、調査の結果、問題行為が明らかになった場合には、「3.是正措置業務」を行う是正措置業務従事者には、是正に必要な措置をとることが求められます。
そこで、今回は、
●問題行為を是正する際に留意すべき3つの事項
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。
■「指針」「指針の解説」からの要請
「指針」(※1)および「指針の解説」(※2)においては、次の考えが示されています。
内部公益通報受付窓口において内部公益通報を受け付け、正当な理由がある場合を除いて、必要な調査を実施する。そして、当該調査の結果、通報対象事実に係る法令違反行為が明らかになった場合には、速やかに是正に必要な措置をとる。また、是正に必要な措置をとった後、当該措置が適切に機能しているかを確認し、適切に機能していない場合には、改めて是正に必要な措置をとる。
是正に必要な措置が適切に機能しているかを確認する方法として、例えば、是正措置から一定期間経過後に能動的に改善状況に関する調査を行う、特定の個人が被害を受けている事案においては問題があれば再度申し出るよう公益通報者に伝える等が考えられる。
(※1)指針
公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)
(※2)指針の解説
公益通報者保護法に基づく指針(令和3年8月20日内閣府告示第118号)の解説
■問題行為を是正する際の留意事項①
●問題行為の「真の原因」を解明する
問題行為の真の原因を解明する際には、日本取引所自主規制法人が公表する次の「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」が参考になります。
① 不祥事の根本的な原因の解明
不祥事の原因究明に当たっては、必要十分な調査範囲を設定の上、表面的な現象や因果関係の列挙にとどまることなく、その背景等を明らかにしつつ事実認定を確実に行い、根本的な原因を解明するよう努める。
そのために、必要十分な調査が尽くされるよう、最適な調査体制を構築するとともに、社内体制についても適切な調査環境の整備に努める。その際、独立役員を含め適格な者が率先して自浄作用の発揮に努める。
以上を踏まえ、次の6つのステップに沿って、「How」「Why」を繰り返し投げかけてみることで、「真の原因」を解明しましょう。
1.どのような問題行為が行われたのか?(How)
2.【問題行為の要因】なぜ、問題行為が行われたのか?(Why)
3.【問題行為者の要因】なぜ、問題行為者は問題を起こしたのか?(Why)
4.【上司や所属部署の要因】当該問題行為は、上司や所属部署に要因がなかったのかどうか?(Why)
5.【組織構造上の要因】上司や所属部署の要因には、組織構造上の要因がなかったのかどうか?(Why)
6.「真の原因」を解明
■問題行為を是正する際の留意事項②
●問題行為の「真の原因」を踏まえた再発防止策を策定し実施する
再発防止策を策定し実施する際には、日本取引所自主規制法人が公表する次の「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」が参考になります。
③ 実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行
再発防止策は、根本的な原因に即した実効性の高い方策とし、迅速かつ着実に実行する。
この際、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、その目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証する。
【事例】
A上司は、目標未達のB部下に対して、パワーハラスメント行為を行った。
【原因解明と是正措置:その1】
パワーハラスメント行為を行ったA上司には、「コンプライアンス意識が欠如」していたことを原因として、A上司を厳重注意した。
【原因解明と是正措置:その2】
「本部の行き過ぎたノルマ至上主義」がA上司をパワーハラスメント行為に至らせてしまったことを原因として、本部に目標設定の在り方を改めさせるとともに、A上司を厳重注意した。
以上のとおり、問題行為の「真の原因」が解明できていないと、実効性の高い再発防止策を策定することができず、今後においても繰り返し同様の問題行為がひき起こされてしまうかもしれません。
■問題行為を是正する際の留意事項③
●是正措置および再発防止策が機能しているか否かを確認する
問題行為の是正後に、再度類似の行為が行われるおそれもあります。
したがって、是正措置および再発防止策が機能しているか否かを確認することが必要になります。
そこで、是正措置および再発防止策が機能しているか否かを確認する方法として、次の事項を「内部通報制度規程」に盛り込み、規定に沿った運用を行っていきましょう。
①特定の個人が被害を受けている事案においては、問題があれば再度申し出るよう内部通報者に伝えておく。
②是正措置から一定期間経過後に能動的に改善状況に関する調査を行う。
③必要に応じて、新たな是正措置を講じるとともに、再発防止策を策定し実施する。
福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
【追伸】
【改正公益通報者保護法に対応】
モデル規程をベースに内部通報制度の構築をスタート!
WCMS認証の取得で企業ブランド向上!
【追伸2】
この記事の内容は、YouTubeでも紹介しています。