内部通報受付後に留意すべき3つの点
内部通報受付窓口に内部通報をした者は、内部通報受付窓口からの情報提供がなければ、次のとおり様々な不安を抱えることになります。
・自分が内部通報した書面や電子メール等は、内部通報受付窓口に届いているのだろうか?
・自分が内部通報したことで、不利益な取扱いを受けてしまうのではないか?
・内部通報した通報対象事実を調査してくれるのだろうか?
・調査は、どの程度まで進んでいるのだろう?
・内部通報した通報対象事実を是正してくれる(くれた)のだろうか?
・どのような再発防止策を講じてくれる(くれた)のだろうか?
さらに、内部通報しても問題が解決されないのであれば、行政機関やマスコミ等に公益通報すべきか、それとも調査の進捗を待つべきか、判断することが困難になります。
そこで、今回は、
●内部通報受付後に留意すべき3つの点
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。
■「指針」からの要請
「指針※」においては、内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置として、次の考えが示されています。
書面により内部公益通報を受けた場合において、当該内部公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正に必要な措置をとったときはその旨を、当該内部公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において、当該内部公益通報を行った者に対し、速やかに通知する。
(※)指針
公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)
■内部通報受付後に留意すべき点【その1】
「内部通報を受け付けた場合、内部通報受付窓口の業務従事者(以下「内部受付業務従事者」という。)から内部通報者に対し、内部通報を受け付けた旨を速やかに通知する」
次の点を「内部通報制度規程」に規定し、規定に沿って運用することが必要です。
1.内部受付業務従事者は、内部通報者が通知を望まない場合、匿名による通報であるため内部通報者への通知が困難である場合等を除いて、内部通報者に対して、内部通報を受け付けた旨を速やかに通知する。
2.内部受付業務従事者は、通報対象事実を調査すべきか否かについて、「必要性」と「相当性」の観点から検討する。
3.内部受付業務従事者は、前記2.の結果、通報対象事実を調査すべきと判断した場合で、通報対象事実に関する十分な調査を行うために必要と判断した場合には、必要な役職員または外部機関(以下「調査業務従事者」という。)を指定する。
4.内部受付業務従事者は、前記3.の調査業務従事者を指定し、当該調査業務従事者に対して内部通報者が誰であるかを伝達する必要がある場合は、内部通報者に対し丁寧に説明し承諾を得る。
5.内部受付業務従事者は、内部通報者に対し、次のリスクを丁寧に説明して、当該リスクがあることの承諾を得る。
【リスク1】特定リスク
(内部通報者が誰であるかを特定されてしまうかもしれないリスク)
【リスク2】不利益リスク
(内部通報者が被通報者や調査協力者等から、解雇や降格等の不利益な取扱いを受けることがあるかもしれないリスク)
6.調査業務従事者を指定する場合には、内部受付業務従事者は、指定された者から「守秘義務を負うこと、守秘義務に違反しないこと」を約束する「誓約書」の提出を受ける。
【改正公益通報者保護法上の留意点】
書面により内部公益通報をした日から20日を経過しても、事業者から通報対象事実について調査を行う旨の通知がない場合等には、報道機関等への公益通報を行った者は、解雇その他不利益な取扱いからの保護の対象となる(法第3条第3号ホ)。
■内部通報受付後に留意すべき点【その2】
「内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)から内部通報者に対し、通報対象事実に関する調査の進捗状況および調査結果について、適宜通知する」
次の点を「内部通報制度規程」に規定し、規定に沿って運用することが必要です。
1.内部通報者が通知を望まない場合、匿名による通報であるため内部通報者への通知が困難である場合等を除いて、内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)から内部通報者に対し、通報対象事実に関する調査の進捗状況および調査結果について、被通報者および調査協力者の秘密、信用、名誉、プライバシー等に配慮しつつ、適宜通知する。
2.内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)から内部通報者に対し、不利益な取扱いを受けていないかどうか適宜確認する。
■内部通報受付後に留意すべき点【その3】
「通報対象事実に関する調査の結果、必要と判断した場合には、是正措置等を講じる。」
「講じた是正措置等の内容を内部通報者に対し通知する」
次の点を「内部通報制度規程」に規定し、規定に沿って運用することが必要です。
1.内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)は、通報対象事実に関する調査の結果、必要と判断した場合には、是正措置等の内容を検討する。
2.内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)は、講じる是正措置等の内容により必要と判断した場合には、必要な役職員または外部機関(以下「是正措置業務従事者」という。)を指定する。
3.内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)は、前記2.の是正措置業務従事者を指定し、当該是正措置業務従事者に対して内部通報者が誰であるかを伝達する必要がある場合は、内部通報者に対し丁寧に説明し承諾を得る。
4.内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)は、是正措置業務従事者を指定し、内部通報者が誰であるかを伝達する場合には、指定された者から、「守秘義務を負うこと、守秘義務に違反しないこと」を約束する「誓約書」の提出を受ける。
5.内部受付業務従事者(もしくは調査業務従事者)は、内部通報者が通知を望まない場合、匿名による通報であるため内部通報者への通知が困難である場合等を除いて、内部通報者に対して、講じた是正措置等の内容を速やかに通知する。
6.是正措置業務従事者は、是正措置等を講じた後、法令等違反行為が再発していないか、是正措置等が十分に機能しているかを確認するとともに、必要に応じて、新たな是正措置等を講じる。
以上のとおり、内部通報者に配慮したきめ細やかな対応を行い、内部通報者に対してより充実した情報提供を行うことが必要となります。
内部通報に対するハードルを下げる工夫を積み重ね、内部通報制度に対する役職員の信頼を向上させていきましょう。
福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
【追伸】
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【追伸2】
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