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【内部通報制度】内部規程に規定すべき重要メッセージ5選

企業は「収益を上げる」という大きな責務を負っています。

しかしながら、コンプライアンスに取り組むことで「犠牲」になった収益は、そもそも「不法な収益」「不当な収益」であり、本来得るべきものではありません。

この「不法な収益」「不当な収益」を得ていると、必ず遅かれ早かれ「しっぺ返し」の時が来てしまいます。

「不法な収益」「不当な収益」を得ていたことで、組織の存続を脅かしかねない大きな代償を負ってしまった事案が後を絶ちません。

ある企業の不正会計事件の際、経営幹部が従業員に対し、パワーハラスメントともいえる無理な目標を課す行為が「チャレンジ」と呼ばれて話題に…
財テク投資の失敗による巨額損失を、経営トップが介在した「飛ばし」行為によって、20年間にわたって隠し続けた…

企業が、事業活動を通じて役職員や消費者、取引先、株主・投資家、債権者、地域社会のステークホルダーから信頼され、コンプライアンス経営を実践する基盤の一つが「内部通報制度」といえます。

この内部通報制度のルールを規定する内部規程には、全役職員が唱和できる「メッセージ」を規定し、そして、全役職員が「メッセージ」を共有して、「理想の組織・職場」のゴールに向けて「ベクトル(進むべく方向)」を合わせていくことが重要です。

そこで、今回は、
●内部規程に規定すべき重要メッセージ5選
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。

■「指針」「指針の趣旨」からの要請

「指針※」「指針の趣旨」においては、「内部規程の策定及び運用に関する措置」として、次の考えが示されています。

指針において求められる事項について、内部規程において定め、また、当該規程の定めに従って運用する。
事業者において、指針に沿った内部公益通報対応体制の整備等を確実に行うに当たっては、指針の内容を当該事業者において守るべきルールとして明確にし、担当者が交代することによって対応が変わることや、対応がルールに沿ったものか否かが不明確となる事態等が生じないようにすることが重要であり、その観点からはルールを規程として明確に定めることが必要となる。

(※)指針
公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)

■内部規程に規定すべきメッセージ【その1】

●内部通報制度の役割・意義

「内部通報制度を積極的に活用したリスク管理等を通じて、法令等違反行為の早期発見と是正を図り、もってコンプライアンス経営を実践する。」

組織の中に、次の発想を持つ者が一人でもいることは非常に危険です。
・うわさ話だから、気にすることはない。
・自分が行動することで、余計な仕事が増える。
・そのうち誰かが対処してくれるだろう。

この危険な発想を排除することが必要であり、そのためには、マネジメントの担い手に求められる重要な資質があります。

それは、「インテグリティ」です。
「インテグリティ」とは、「高潔さ、誠実さ、真摯さ」と言われるものです。

●マネジメントの担い手のインテグリティを尊重した言動
(例)
・「うわさ話が本当だとすれば、組織にとって重大な問題だ」と認識する。
・「ここで、自分が行動することが、自分の本来の仕事だ」と認識する。
・「今、ここで自分が対処しなければ」と行動する。

マネジメントの担い手の言動により、
●インテグリティの概念
が具体化されます。

このマネジメントの担い手の背中を
●メンバーが見て学ぶ

すると
●メンバーの心理的安全性
が生まれます。

マネジメントの担い手のインテグリティを尊重した言動により、メンバーの心理的安全性を向上させ、内部通報制度の役割・意義を理解させていきましょう。

■内部規程に規定すべきメッセージ【その2】

●内部通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の向上に資する「正当な職務行為」であること

例えば、「毎日顔を合わせている同僚の不正行為を、同僚に内緒で会社に報告する」

従来から内部通報制度には、「密告」「チクリ」「仲間を売る」といったネガティブな印象が拭えません。

しかしながら、同僚の不正行為を見逃し、その後も不正行為が継続することによって、結果、会社が存続できなくなる事態に発展するかもしれません。

役職員や消費者、取引先、株主・投資家、債権者、地域社会といったステークホルダーを守ることと、同僚を守ること、この2つを天秤にかけると、答えは「同僚の不正行為を会社に報告する」という選択になるでしょう。

マネジメントの担い手が、「内部通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の向上に資する正当な職務行為である」というメッセージを継続して発信することが重要です。

■内部規程に規定すべきメッセージ【その3】

●内部規程や法の要件を満たす適切な通報を行った者に対する不利益な取扱いは決して許されないこと

次の2つのメッセージを継続して発信することが重要です。

1.不利益な取扱いが行われた場合には、当該不利益な取扱いを受けた役職員に対して、適切な救済および回復のための措置を講じる

2.不利益な取扱いが行われた場合には、当該不利益な取扱いを行った役職員に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して適切な処分等を科す

■内部規程に規定すべきメッセージ【その4】

●通報に関する秘密保持を徹底するべきこと

次の2つのメッセージを継続して発信することが重要です。

1.「内部通報受付業務従事者」「調査業務従事者」「是正措置業務従事者」は、改正公益通報者保護法により、「内部通報者を特定させる事項を漏らしてはならない」という守秘義務を負う。

2.内部通報者や調査協力者を探索する行為が行われた場合には、当該行為を行った役職員には、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、適切な処分等を科す

■内部規程に規定すべきメッセージ【その5】

●利益追求と企業倫理が衝突した場合には企業倫理を優先するべきこと

企業は「収益を上げる」という大きな責務を負っています。

しかしながら、コンプライアンスに取り組むことで「犠牲」になった収益は、そもそも「不法な収益」「不当な収益」であり、本来得るべきものではありません。

この「不法な収益」「不当な収益」を得ていると、必ず遅かれ早かれ「しっぺ返し」の時が来てしまいます。

企業は、役職員や消費者、取引先、株主・投資家、債権者、地域社会のステークホルダーとの信頼関係の上に成り立っています。

これを無視した事業活動は、企業の発展・存亡をも左右し得るというメッセージ継続して発信することが重要です。

それでは、今回のまとめです。

今回は「内部規程に規定すべき重要メッセージ5選」について、解説しました。
1.内部通報制度の役割・意義
2.内部通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の向上に資する「正当な職務行為」であること
3.内部規程や法の要件を満たす適切な通報を行った者に対する不利益な取扱いは決して許されないこと
4.通報に関する秘密保持を徹底するべきこと
5.利益追求と企業倫理が衝突した場合には企業倫理を優先するべきこと

ぜひ、今回の記事を参考にして
全役職員が唱和できる「メッセージ」を内部規程に規定し、そして、全役職員が「メッセージ」を共有して、「理想の組織・職場」のゴールに向けて「ベクトル(進むべく方向)」を合わせ、良いことも悪いことも共有・シェアできる組織・職場を作っていきましょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)

【追伸】

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【追伸2】

この記事の内容は、YouTubeでも紹介しています。


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