「裏」タケミナカタ神話「裏」③天津甕星と日本神話の暗号
▼はじめに
タケミナカタ(建御名方命)神話の裏側を考察していくこのシリーズ。
今回の記事では伊勢津彦神(イセツヒコ)と同様に度々タケミナカタと同一視される天津甕星(アマツミカボシ)について考察していきます。
また、その流れで日本神話の意義について個人的な想いをお伝えさせていただきます。
※下記の記事は「表」になります。「表」を見なくてもわかるように「裏」を書いていくつもりですが私個人としては見ていただくことをお勧めします。
▼天津甕星(あまつみかぼし)の概要
天津甕星は日本神話では珍しい「星」を神格化した神様で別名に「天香香背男(あめのかがせお)」ともあります。
日本書紀に登場する神様です。
天孫降臨に際して自分たちに従わぬ神々を武力で平定していった武御雷(たけみかづち)と布津主(ふつぬし)ですが、一柱だけどうしても倒すことができなかったのが天津甕星です。
最終的に建葉槌命(たけはづちのみこと)という織物の神が派遣されて天津甕星を懐柔したといいます。
タケミナカタと同一視される理由は以下の構図のためです。
・日本書紀 タケミナカタの記述は一切なし。最後まで従わない天津甕星が武御雷・布津主と戦う。
・古事記 天津甕星の記述は一切なし。最後まで従わないタケミナカタが武御雷・布津主と戦う。
▼出雲の国譲りは神武東征
少し脱線します。
第一回で記紀および関連書物・伝承は暗号とお伝えさせていただきました。
今回で一部分だけそれを解読してみましょう。
まず、出雲の国譲り神話と神武東征が対応しています。
・饒速日命は天稚彦命に対応
・天照から天稚彦に与えられた天羽羽矢(あめのははや)と歩靫(かちゆき)。これを饒速日が天孫の証として所持していたこと。
・両者共に弔い期間が書かれること(そもそも書かれることが珍しい)。
(饒速日 7日7夜 天稚彦 8日8夜)
・両者共に速飄別命(はやつむじわけのみこと)が偵察しており、天孫系に死の報告を行う。
・長脛彦はタケミナカタに対応
・両者共に最後まで抵抗する。
・タケミナカタは敗北し諏訪まで逃亡する。実は長脛彦も東北まで逃れたという伝承がある。
諏訪地方の伝承に登場する足長様、手長様に関しても長脛彦を連想させる名前である。
私は建御名方は物部守屋であると言い続けていますが、物部守屋の一族も諏訪に逃れたグループと東北に逃れたグループがいます。
・両者ともに「富」の一族である(長脛彦は古事記において登美毘古の表記があり、タケミナカタも御名方富命神の別表記がある)。
・事代主は高倉下(たかくらじ)に対応
高倉下は大和陣営の人物だが神武東征に際して夢のお告げで武御雷から布都御魂(武御雷が国を平定したときに使った剣とのこと)を授かり神武天皇に献上した。託宣の一面を持っている。
事代主に関しても「一言主」という別名があり、託宣の神格を持っているように思える。そう考えれば国譲りに際して一切の抵抗をしなかったことも武御雷という神の託宣に沿ってのことであったと考えることができる。
・味鋤高彦根は宇摩志麻遅命(うましまぢのみこと)に対応
・先代旧事本紀においてウマシマジは味間見命(うましまみのみこと)の表記。「味」の共通点。
・同じく先代旧事本紀においてウマシマジは長脛彦を殺害し神武一向に寝返る。天稚彦が饒速日としたとき、味鋤高彦根と姿が瓜二つであったのも親子関係であったため当然と言える。天稚彦が亡くなっていることは神武東征の際、既に饒速日は亡くなっているということであり、味鋤高彦根が稚彦の葬式をめちゃくちゃにしたのは、饒速日死亡直後の混乱する大和に神武一向を引き入れてめちゃくちゃにしとことの暗示。
・この後に味鋤高彦根は事代主をはじめ多くの神々の背乗りをする。
だから妹の下照姫が「名前を明かす詩」を述べることはタブーであった。
▼饒速日に関して
饒速日の弔い期間が7日7夜であると述べました。
七夕を連想させませんか?
何を隠そう日本神話で数少ない「星神」の一柱が饒速日にあたります。
大阪府河野市星田の「星田神社」。この神社の御祭は磐船神社の分霊を祀っているそうです。この磐船神社の御祭神が饒速日になります(「それは江戸時代の出来事だろう?」 問題ありません。記紀の暗号は江戸時代や明治時代も作成期間に含みます)。
また、戸矢学氏の著書で興味深い考察をされています。
要約すると、饒速日には様々な称号がついているが記紀および先代旧事本紀で共通する名称は「速日」であること。この、「速日」こそ饒速日の「核」となる部分ではないか。
そして、天から磐船で降りてきたことも併せて考えたとき、「隕石」を象徴する存在であったのではないかとするのです。
古代の人々からして隕石はとても神秘的でそれでいて恐怖の対象でもあったのではないでしょうか。
だとしたら星神が悪神とされたのも納得がいきます。
これは古代にあった怨霊信仰が関係しています。
非常に重要な概念なのでいずれ詳しく説明しますが、何か非業の死を遂げた(と、世間や支配者層から思われている)人物が怨霊となって自然災害や疫病を起こすため、丁重に祀ることで鎮まっていただく、という信仰形態です。
饒速日に関しては祟りに隕石が結びつけられたのかもしれません。
また、隕石は鉄の素材にもなるわけです。このことは天目一箇神(元々伊勢にいた忌部が祀っていた鍛冶神。母方が忌部系の物部守屋は天目一箇作の剣を所持していた)に繋がってくると思っています。
▼天背男
天背男命(あめのせおのみこと)という神様がいます。
天津甕星の別名、天香香背男と名前が似ています。
天背男 アメノセオ
天香香背男 アメノカガセオ
天背男には「カガ」がありません。
「かが」を平田篤胤は「輝く」の意味だとしました。そうだとすれば「輝きを奪われてしまっている」、ということになりますね。
天背男は先代旧事本紀で饒速日の降臨に同伴した神で、尾張大国霊神社(裸祭りで有名)の系図でよると尾張氏の祖神とされています。
饒速日ー高倉下ー天村雲(あめのむらくも)ー・・・(尾張氏に繋がっていく)
上記の系図が尾張氏に繋がることから同じく尾張氏の祖とされる天背男もこの流れの中に組み込まれることが推察できます。
そして饒速日は星神であり、天津甕星こと天香香背男も星神である。
天背男と天香香背男の神名の類似。
また、高倉下の別名を天香久山(あめのかぐやま)といい、やはりどこか天香香背男との類似性を感じさせる。
このことから、
天津甕星(天香香背男)=天背男=高倉下(天香久山)
このように今のところ考えています。
また、斎部宿祢本系帳による系図では、
神魂命ー角凝魂命ー伊佐布魂命ー天底立命ー天背男ー天日鷲ー天羽雷雄
となります。
このとき連想させることがいくつかありますがひとまず天羽雷雄(あめはづちお)に関してですが、天津甕星を懐柔した建葉槌命の別名です。つまり、親族が説得したから和解した、ということになります。
そして、前回考察したことですが神武東征に際して、神武側に寝返った忌部と抵抗したり東へ逃れた忌部がいたと考察しましたが、ここで繋がってくるのです。
天底立=饒速日、天背男=高倉下、天日鷲=天村雲として、高倉下時代に分かれた忌部一族が数世代後に再び結ばれたことになります。
▼別れた二つの忌部
山背久我直が祀る久我神社。
山背久我直の祖は鴨建角身(かもたけつのみ)。熊野大社にて八咫烏(神武天皇を道案内した)と称される神です。先代旧事本紀では祖を天神立(あめのかみたて)、天世乎(あめのせお)としています。上記の斎部宿祢本系手帳の天底立ー天背男を連想させます。
つまり、神武側についた忌部が鴨、という認識でよいでしょう。
地祇系と天神系等考慮する点は多いですが鴨と忌部は元々同族と考えられます。
▼神名の背乗り
記紀では被害者と加害者の入れ替え、乱が失敗したことになっているが実際は成功している、神名の背乗り、系譜仮冒、こういった疑惑が多く見られます。
そして、大体それは味鋤高彦根=ウマシマジに帰結していきます。
そして、その始まりと考えられるのがここまでで述べた忌部が二つに分かれたことからなのです。
また、高倉下を天津甕星としたとき、一方は武甕雷から託宣と剣を授かり、一方は武甕雷と争っているため矛盾していると思われるかもしれません。このことも後に詳しく説明しますが、味鋤高彦根=ウマシマジが高倉下の不在時に勝手に高倉下の名を名乗って剣を神武天皇に献上したと考えています。
実際の高倉下は神武天皇に寝返っていないと思っているのです。
今後の「裏」タケミナカタ神話「裏」ではこのことをベースに進めていくことになります。
▼日本神話の意義
このシリーズの最初に日本神話は日本の神話ではないことをお伝えしました。そして、今残っている日本神話は暗号であるともお伝えしました。
私はこの暗号にみなさん一人一人が向き合って、一人一人の答えを見つけだしてほしいと願っています。
なぜなら、日本神話は日本人にとって「最強の覚醒ツール」だからです。
暗号の解を求めて様々な地に赴くことになります。
その中には登山や川を渡ること、海を渡ることもあります。
天気からの洗礼を受け、土砂降りの雨に打たれることもあります。
その中で本当の意味での自然の厳しさと美しさの一端に触れることになるのです。
適当な装備ではいけないことに次第に気づき現代人が忘れかけている自然との向き合い方を思い出していきます。
様々な文献や考察、意見に触れることになります。
完全に矛盾しているようにみえる意見同士を比較検討することになります。その中でたった一つの点がみつかったことで実は矛盾していなかったことに気がつきます。
一つの考え方に固執するのではなく、結びつける何かを探そうとする姿勢を身につけます。
これは「和」の心と同義です。
過去の人々の暮らしを知るために様々な地で郷土料理に舌鼓をうったり、暮らしの体験教室等をすることもあるでしょう。
その中でいろんな人と関わることになります。
自分の世界がちっぽけだったことに気がつけるでしょう。
また、博物館で展示の説明を非常に注意深く読んでいくことになります。それらの中で教科書とは違う内容をいくつも見つけられるはずです。
つまり、今自分が常識や現実だと思っていることを疑うことになります。
これは非常に大切なことです。
「夢のおつげ」や「降りてくる」、といった体験をすることになります。
これは本気で日本神話に向き合っている方にはよくある現象です。
私の場合、星と星を繋ぐ線が見えるようになりました。
他にも不思議なことは色々とあるのですが、重要なのはそこではなく「そういうことがこの世界では存在する」ということを実感することです。
それが世界の深さ、高さ、広さを知ることです。
現代人は社会を回すためにそういった機能を剥奪されていますから。
それが良いことなのか悪いことなのか私にはわかりませんが、少なくとも「そういうことがあり得る」、という価値観の私が見ている世界はけっこう楽しいものですよ。
▼最後に
私のお伝えしたいことがほんの少しでも伝わると嬉しいです。
「~大学の~教授がこう言っている」
だとか
「~神の第~第目~が伝承を公開した」
とか
「youtyubeで登録者数何十万人の~がこう言っている」
だとか。
せっかく「最強の覚醒ツール」の一端に触れているのに非常にもったいないです。
日本中を、世界中を舞台とした暗号を紐解いてその先にある「あなただけの解」を導き出してください。
あなたの、あなただけの邪馬台国を見つけてほしいのです。
あなただけの古事記を再構築してほしいのです。
あなただけの押しの神様の物語を見つけ出してほしいのです。
真実なんてどうでもいいのです。
前半の私の書いている内容も(もちろん共感してくれれば嬉しいですが)参考程度にしてほしいのです。
何度か言ってきたことですが、提示されたものをそのまま受け取って、そのまま口にするだけならAIの方が優秀なんです。
真実はAIが導き出してくれます。
だけど、あなただけのものはあなたしか見つけ出せないのです。
日本神話という先人が残してきた偉大なツールはそれを助けてくれます。
神社が、
お寺が、
日本の自然や文化が
あなたを覚醒させてくれます。
それを信じてみてほしいのです。
画像はこちらからお借りしました。
素敵な絵をたくさん描かれているのでぜひご覧になってください!
このシリーズは下記から。